医学部
School of Medicine
修学の流れと卒業後の勤務
1年次
医学生としての自覚や素養を育み、今後の活動の原点となる学びを展開。
入学後まもなく医科教養(入門、講義、演習)が始まり、医学生として取るべき学習態度や生活態度を身につけます。総合教育必修科目では理科系・文化系・地域医療系科目にて医師に必要な素養を養い、総合教育選択科目では少人数形式の学習で大学における学習法、学びの態度、人間関係の構築を体得します。2学期からは解剖学などで基礎医学の諸科目がスタートしますが、解剖学を1年次という早い段階から学ぶのは本学のカリキュラムの特徴のひとつです。
カリキュラム
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1年次のPICK UP
早期体験実習
自治医科大学附属病院で患者さんに付き添う実習を体験します。患者さんをはじめ、医療従事者、医療機関の活動、そして附属病院を知り、そのうえで医療の原点である患者さんの視点で現場を見ることで何が求められているのかを考えます。
地域医療学概論
卒業生を教室に招いてリレー形式で地域医療について語ってもらう講義です。コミュニケーションや人間の行動パターンを理解することの重要性を学ぶと同時に、教科書ではわからない地域医療の実際について体験談を交えて理解します。
2年次
基礎科学から基礎医学へと学習が深化し後半からは基礎臨床系統講義もスタート。
臨床医学学習の土台となる基礎医学の諸科目を履修し、生理学、生化学および薬理学を中心に人体の機能とその調節について深く理解します。さらに細菌学、ウイルス学、医動物学では生体に対して外界から侵襲する生物との関わりを学習します。後半には地域医療学各論1を学習し、地域医療や家庭医療の基礎、対人援助の知識を身につけ、3学期の地域福祉実習で専門職と一緒に働きながら実践します。また、2学期後半からは各診療科に関する基礎臨床系統講義も始まります。
カリキュラム
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2年次のPICK UP
地域福祉実習
地域における福祉・介護を含む多職種間の連携の必要性、対人援助や介護の考えを理解するため特別養護老人ホームや通所介護事業所、地域包括支援センターなどで実習を行います。実習後は全体で学んだことを共有し、さらに理解を深めます。
選択セミナー(全学年対象)
医学部では医師国家試験を受けるために必要なカリキュラムが6年間にわたって組まれる中、「医学をより深堀したい」という学生の学習意欲に応えられるよう、選択セミナーを開講しています。基礎医学や臨床医学、一般教養など数多くのセミナーが受講可能です。
3年次
症状から疾病を考えるPBLを実践しより医療現場に即した知識を習得する。
カリキュラムは基礎臨床系統講義が中心となり、臨床的観点から基礎医学の学習をさらに深めつつ、各臓器の疾患について症候、診断および治療を理解します。また、総合診断学では、症候学、臨床推論、テュートリアルなど多様な学習法で総合的な診断能力を高めるとともに自発的に学習する習慣を身につけます。系統講義は6年間のうちこの時期に行われ、4年次にはじまるBSL(Bed Side Learning)を進めるために必要となる事項を深く理解していきます。
カリキュラム
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3年次のPICK UP
診断学実習1
BSLで患者さんと接する前に、治療や診察に求められる基本的な手順や、血圧測定、診療録の書き方、医療面接技法などを学びます。手技の習得に終わることなく、それぞれの意味合いや患者さんと接する心構えなどを身につけます。
CBT/OSCE
BSLに進む前に、必要な医学知識を有しているかどうか判定するCBT(シービーティー:コンピューターを用いる客観試験)とOSCE(オスキー:客観的臨床能力試験)と呼ばれる試験を受験します。3年間で学んだ分野を総復習し、4年次からのBSLに臨みます。
4年次
数多くの診療科を経験するBSLを開始。診療行為を通して病気を深く理解する。
自治医科大学のカリキュラムは、臨床教育に重きを置く点を特徴としています。その象徴が長期にわたり数多くの診療科を経験するBSL(Bed Side Learning)です。4年次はおもに内科系の16科をまわります。本学のBSLは臨床現場に立ち合うだけの経験にとどまらず、患者さんへの診療行為を通して病気を深く理解する指導に力を入れています。このような病棟での学習は、担当した症例の診断や治療の理解にとどまることなく、病態の深い理解のためにさまざまな症候や検査成績の異常を深く吟味することが求められます。
カリキュラム
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4年次のPICK UP
臨床実習生(医学)認定証授与式
臨床実習生(医学)はCBT/OSCEに合格し、臨床実習(BSL)に必要な知識・技能・態度を身につけていることが認められた医学生です。5月から始まるBSLに向けて、医師を目指す医学生としての自覚や心構え、医療に携わる人間としての責任感や使命感を再認識します。
診断学実習3
卒業後は誰の手も借りず医療を実践していく能力が求められます。聴診や救急蘇生をはじめ、縫合や視診、触診など、専用のシミュレーターを用いて訓練します。基本的な技術の習得を低リスクで期待でき、さまざまな実習で活用されています。
5年次
5年次も引き続きBSLについて臨床を深め、総合医療教育の総まとめを地域で経験。
5年次のBSLでは14科をまわります。2学期には総合医療に関する教育の総括と卒業後の地域医療実践の準備を兼ねてCBCL(CommunityBasedClinicalClerkship)を実施。特色ある地域医療の実践に触れ、地域医療への動機を明確にします。3学期から6年次の1学期にかけて選択必修BSLとして、これまでの実習のうち特に興味を持ち、より深く理解したい診療科を自ら選択し臨床実習を行います。学生はそれぞれの患者さんを受け持ち、実際の医療を主体的かつ責任をもって体験し、自立心を養います。
カリキュラム
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5年次のPICK UP
地域保健実習
「保健所の業務を実地で知る」「保健所医師の役割を知る」「家庭訪問などを通じて患者さんの生活や社会経済環境を知る」「種々の関係機関による地域保健活動の全体像を知る」という4点を目的に、実際に保健所に出向いて実習します。
地域医療臨床実習(CBCL)
将来の職場となる出身都道府県の地域に2週間滞在し、複数の実習施設で地域医療を体験します。自身のロールモデルとなる先輩と行動を共にしながら実際の活動を見聞きすることで、自らのキャリア設計を具体化していきます。
6年次
6年間の学びを総括し、医師国家試験に挑む。
1学期に選択必修BSLとして自らの希望する診療科で臨床実習の総まとめを行います。さらに都道府県拠点病院実習として、卒業後に勤務する臨床研修病院にて実習を行います。この期間は、教員の指導や監督のもとに許される範囲で学生が主体的に診療活動に参加します。これに続いて臨床系科目の総括講義が行われます。5年次までに優秀な成績を収めた学生は、この総括講義と卒業試験が免除され、FCSD制度として約半年間の自主的な臨床実習期間が与えられるのも自治医科大学の大きな特徴です。
カリキュラム
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TOPICS
フリーコース・スチューデントドクター(FCSD)制度
5年次終了時において既に医師国家試験合格レベルの知識を有し、かつ志の高い優秀な学生に対して能力を最大限に研鑽する機会を与える制度です。
制度の概要
6年次の4月から11月まで(5月を除く)において授業の出席および卒業試験が免除されます。希望する研修や実習プログラムを自主的に作成し、責任学内指導教員の指導のもとに受講します。
研修先は学内の臨床、基礎講座をはじめ、国内の卒業生の勤務先(へき地診療所、中核病院)や海外の病院等が対象となります。
当該研修に係る学資資金については、大学が補助しています。
勉強室
6年生専用の勉強室で 仲間とともに国家試験の合格を目指す
学生寮内には、6年生が国家試験の勉強をするための専用の部屋が設置されています。5~6名の学生に1室が割り当てられ、6年生は毎日の授業が終わるとこの部屋に集まります。ともに勉強することで弱点を克服しつつ、常に励まし合い厳しい試験勉強を乗り越えていきます。
入学から地域医療従事期間明けまで
学生たちのモチベーションアップそして、より充実したBSLを実現するために
卒業時に「総合医」に求められる広範かつ高度な臨床医学の基礎的能力を修得するため、自治医科大学は6年間一貫教育のカリキュラムを組んでいます。本学が考える「全人的資質を備えた総合医」の育成は、国家試験の合格と卒業をもって終了するものではありません。
卒業後は、出身都道府県の公務員(医師)となり地域医療に貢献しますが、さらに地域のリーダーとして包括的医療を牽引する能力を養成すべく、医療人として向上するための意欲に応える多彩なサポートを継続的に行っています。卒業生の活躍は臨床現場に限らず、大学の研究室で教育・先端研究を続けたり、行政機関で医療行政の企画・立案に従事したりと多様です。
入学から地域医療従事期間明けまでの流れ
入学 | 2025年度の入学定員は100名。多くの志願者の中から、都道府県ごとに2~3名ずつ(栃木県は地域3名を含む、5名または6名)の学生が選抜されます。入学試験は第1次試験を各都道府県で実施し、1次合格者に対する2次試験を自治医科大学で実施します。 |
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6年間 一貫教育 |
1~3年生 基礎知識の修得 4~6年生 BSLによる臨床技術の向上 |
※以下の流れは基本パターンであり、都道府県ごとに異なります。
医師国家試験・卒業後
1年 | 2年間 臨床研修 |
○地域のニーズに応える全人的・包括的医療の実践 ○プライマリ・ケアを中心に幅広い総合医としての診療能力を身に付ける |
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2年 | ||||
3年 | 3年間 へき地等 勤務 |
○地域全体の ○総合医の素養 |
<女性医師支援> 子育て支援制度の 卒業生からの |
<生涯研修> ・短期実習研修 ・研究生 |
4年 | ||||
5年 | ||||
6年 | 2年間 後期研修 |
○高度な医学知識・ 臨床技術の修得 |
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7年 | ||||
8年 | 再び 地域医療に 従事 |
○最新の医学知識・ 医療技術を 地域住民に還元 |
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9年 |
地域医療従事期間明け・返還免除
- 出身都道府県で医師として勤務
- 国・都道府県で行政医として勤務
- 大学・病院で研究しながら医師として勤務
- 留学し、最先端の医学知識・技術を修得
卒業生の現状
自治医科大学卒業生は、北は北海道の利尻島から、東は東京都小笠原諸島、南は沖縄県八重山諸島に至るまで全国各地のへき地、離島等を含む第一線の診療所、病院および保健所等に勤務し、それぞれの任地において、患者のみならず家族、地域をも対象として、健康の保持増進、疾病の予防から治療、リハビリテーションに至るまで一貫した全人的、包括的医療の実践に意欲的に取り組んでいるほか、臨床研修、後期研修等に就き、地域医療の確保と向上ならびに医学、医療の研鑽に努めています。
地域のニーズに応えながら、気概と熱意を持って地域医療に従事する卒業生への社会的評価は極めて高いものがあり、建学の精神は着実に実を結びつつあるということがいえます。
健康は、幸せな生活を送る基本です。へき地や離島にあっても国民は等しく最新の医療の恩恵を受けられるようにならなければなりません。その意味からも卒業生に対する期待、卒業生の果たす役割は今後とも大きなものがあります。
卒業後の勤務形態
自治医科大学卒業生は、卒業後直ちに出身都道府県に戻り、在学中に自治医科大学修学資金の貸与を受けた期間の2分の3に相当する期間(一般的には9年間)、知事の指示に基づいて、出身都道府県内の病院、診療所や保健所等に勤務することになります。
地域医療の充実、質的向上を図るためには、医師としての資質の向上を図ることが重要であるため、卒業後5年目以降の適当な時期に2年間、臨床研修指定病院や自治医科大学附属病院および附属さいたま医療センター等において後期研修を受けることを推進しています。後期研修は、多様化、複雑化する疾病や保健、福祉等の問題に適切に対応しうる高度な医学知識、臨床的実力を身につけることを目的としています。後期研修終了後は、再び第一線の医療に従事し、修得した知識・技術を住民に還元することによって、地域医療の質的向上に寄与します。なお、知事の指示に基づく9年間の勤務期間のうち、原則として4~5年間はへき地等に勤務することになっています。
生涯学習
医師が、時代に即応した医療を適切に地域住民に提供していくためには生涯学習は不可欠です。特に、へき地等の医療機関に勤務する医師にとっては、幅広い疾病に対応するため常に自ら研鑽する努力が必要です。
そこで、自治医科大学はへき地等の第一線医療に従事する卒業生に対して求められる臨床能力の向上を図るため、先に述べた臨床研修、後期研修の他、次のとおり総合的、計画的、継続的な生涯学習の機会を用意しています。
- へき地等において必要と判断される医療技術(内視鏡、超音波等)を集中的に修得するための短期実習研修
- へき地等に勤務しながら教員の指導、助言が受けられる研究生としての受入れ
- へき地等から直接アクセスできるパソコン通信を利用した文献検索および文献複写サービス等の提供