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[医学部] 強酸刺激によって誘導されるIL-1βプロセシングの新規メカニズムを発見

研究情報

1. 研究概要

強力な炎症性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)は、IL-1β前駆体が成熟型IL-1βへとプロセシングされることで炎症を惹起します。代表的なIL-1β変換酵素はcaspase-1で、その活性はインフラマソームにより制御されています。

今回、自治医科大学内科学部門呼吸器内科学講座・水品佳子助教、分子病態治療研究センター 炎症・免疫研究部・唐澤直義助教、高橋将文教授、薬理学講座臨床薬理学部門・相澤健一准教授らの研究チームは、マクロファージを強酸刺激することで誘導される、インフラマソーム非依存的なIL-1βプロセシングの新規メカニズムを明らかにしました。

2. 研究成果

胃酸の誤嚥によって生じる誤嚥性肺臓炎では、急性肺傷害を発症しますが、そのメカニズムは不明な点が多く、有効な治療方法も確立していません。そこで無菌性炎症の惹起経路として注目されているNLRP3インフラマソーム(NLRP3とアダプター分子ASC、caspase-1から構成される細胞内分子複合体)の誤嚥性肺臓炎における役割を解明する目的で、マウス誤嚥性肺臓炎モデルを用いて解析を行いました。

塩酸気管内投与によるマウス誤嚥性肺臓炎モデルでは、マウスは急性肺傷害を発症します。その炎症反応は野生型マウスと比較してIL-1β欠損マウスで有意に軽減しましたが、NLRP3欠損マウスでは有意差を認めず、NLRP3インフラマソーム非依存性に産生されるIL-1βの重要性が示唆されました。

胃酸を誤嚥した場合、肺胞内に常在するマクロファージが強酸に暴露されることから、in vitroでマクロファージを強酸刺激したところ、caspase-1によるプロセシングとは異なる分子量の成熟型IL-1βを検出しました。検出した成熟型IL-1βのLC-MS/MS分析により、強酸刺激によるIL-1β産生は、これまで知られていない新規部位(D109)でプロセシングを受けて産生されること(分子量18.2-kDa)が明らかになりました。

これはインフラマソーム非依存的なIL-1βプロセシングの新規メカニズムであり、本研究成果は、誤嚥性肺臓炎や急性肺傷害の新規治療法開発への応用が期待されます。

3. 掲載論文

本研究は2019年5月20日発刊の「The Journal of Immunology」に掲載されました。
http://www.jimmunol.org/content/early/2019/05/17/jimmunol.1900168.long

題名:Inflammasome-Independent and Atypical Processing of IL-1β Contributes to Acid Aspiration-Induced Acute Lung Injury.

著者:Mizushina Y, Karasawa T, Aizawa K, Kimura H, Watanabe S, Kamata R, Komada T, Mato N, Kasahara T, Koyama S, Bando M, Hagiwara K, Takahashi M.