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[大学]アトピー性皮膚炎において好塩基球インフラマソームが炎症惹起のトリガーとして働くことを発見

研究情報

 アトピー性皮膚炎は強いかゆみおよび湿疹性病変を特徴とする皮膚炎であり、患者皮膚には好塩基球の浸潤がしばしば観察されます。これまで他の自然免疫細胞におけるNLRP3インフラマソームの役割は広く研究されてきましたが、好塩基球における意義は不明でした。

 今回、自治医科大学 分子病態治療研究センター 炎症・免疫研究部の郡司義尊研究員、髙橋將文教授、心血管遺伝学研究部 松村貴由教授、生化学講座 大森司教授らは、東京科学大学 総合研究員 烏山一特任教授、三宅健介准教授、千葉大学 薬学研究科 丸山貴司客員准教授らとともに、アレルギー応答で重要なサイトカインであるIL-33が好塩基球においてNLRP3インフラマソームの活性化を介してIL-1β産生を誘導し、アトピー性皮膚炎における炎症を惹起することを新たに発見しました。

 研究グループは、骨髄由来好塩基球を用いた実験で、IL-33刺激がNF-κBおよびp38 MAPK経路を介してIL-1βおよびNLRP3の発現を誘導することを発見しました。さらに、IL-33でプライミングされた好塩基球はnigericinや細胞外ATPなどの二次刺激によって成熟型IL-1βを分泌することを明らかにしました。この反応はNLRP3、ASC、カスパーゼ-1およびガスダーミンDを必要とするNLRP3インフラマソームを介していることがわかりました。加えて、オキサゾロン誘導アトピー性皮膚炎マウスモデルにおいて、好塩基球がIL-1βを産生すること、また好塩基球の除去、NLRP3またはIL-1β欠損、および好塩基球特異的NLRP3欠損が皮膚の腫脹や好中球浸潤を有意に抑制することを示しました。これらの結果から、好塩基球インフラマソームがアトピー性皮膚炎における炎症のトリガーとして機能することが示されました。本研究は、アトピー性皮膚炎の新たな分子機構を明らかにするとともに、IL-33や好塩基球インフラマソームが治療標的となることを示唆しています。

 本成果は英国科学誌 Cell Death Discovery に2025年7月27日付でオンライン掲載されました。
 (DOI: 10.1038/s41420-025-02630-6


図.アトピー性皮膚炎における好塩基球NLRP3インフラマソームのメカニズム

論文情報

論文名:IL-33-primed NLRP3 inflammasome in basophils drives IL-1βproduction and initiates atopic dermatitis inflammation
著者:Yoshitaka Gunji, Takayoshi Matsumura, Tadayoshi Karasawa, Takanori Komada, Chintogtokh Baatarjav, Satoko Komori, Hidetoshi Aizawa, Yoshiko Mizushina, Hidetoshi Tsuda, Kensuke Miyake, Takashi Maruyama, Tsukasa Ohmori,
Hajime Karasuyama and Masafumi Takahashi
DOI: 10.1038/s41420-025-02630-6