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[医学部]同種造血幹細胞移植における女性ドナーから男性患者への移植の影響は患者年齢によって異なる
研究情報
同種造血幹細胞移植において、女性ドナーさんから男性患者さんへの移植(FtoM移植)は、慢性移植片対宿主病(GVHD)や非再発死亡のリスク因子であることが以前より知られています。このような悪影響は、Y染色体に由来する男性特異的抗原(HY抗原)に対する免疫応答によって生じると考えられています。
一方で、高齢の患者さんでは慢性GVHDおよび慢性GVHD発症後の非再発死亡のリスクが高いことも報告されています。そのため、女性ドナーさんから男性患者さんへの移植による免疫学的な影響は、高齢患者さんでより強く現れる可能性が考えられました。しかし、これまでFtoM移植の影響が患者年齢によってどのように変化するかについては十分に検討されていませんでした。
自治医科大学総合医学第一講座(血液科) 大学院生の髙野昂佑、分子病態治療研究センター 領域融合治療研究部 教授の仲宗根秀樹を中心とした日本造血・免疫細胞療法学会(JSTCT)ドナー・ソースワーキングおよび合併症ワーキングの研究グループは、JSTCT/JDCHCTが実施する「造血細胞移植と細胞治療の全国調査」のレジストリデータを用いて大規模症例解析を行い、ヒト白血球抗原(HLA)一致ドナーからの同種造血幹細胞移植における性別不一致の影響が患者年齢によってどのように変化するかを検討しました。
研究チームは、全体のコホートを15歳以下、16~39歳、40歳以上の3つのコホートに分類し、女性ドナーさんから男性患者さんへ移植した群(FtoM群)、男性ドナーさんから女性患者さんへ移植した群(MtoF群)、ドナーさんと患者さんの性別が一致していた群(Matched群)の移植成績を比較しました。その結果、患者年齢40歳以上のコホートでは、FtoM群の5年全生存率がMtoF群、Matched群と比較して有意に低下していました(49.5% in the FtoM group, 59.6% in the MtoF group, and 57.1% in the sex-matched group; P < 0.001)。一方で、患者年齢15歳以下および16~39歳のコホートでは、FtoM群、MtoF群、Matched群の5年全生存率に有意差は見られませんでした。多変量解析においても、患者年齢40歳以上のコホートではFtoM移植が全生存のリスク因子として同定されましたが(HR 1.31 [95% CI: 1.19-1.43], P < 0.001、患者年齢15歳以下および16~39歳のコホートでは、FtoM移植は有意なリスク因子として同定されませんでした。患者年齢40歳以上のFtoM群の死因を解析すると、感染症や非感染性肺合併症による死亡が多く認められました。
FtoM移植の生存への悪影響は40歳以上の患者さんでのみ認められたことから、高齢の男性患者さんにおいては、HLAが適合していても女性ドナーさんを選択することには慎重な判断が必要であることが示唆されました。高齢患者さんでのみFtoM移植の悪影響が顕著となる背景について、今後基礎研究による解明も期待されます。
この成果は、American Society for Transplantation and Cellular Therapy(ASTCT)のofficial journalであるTransplantation and Cellular Therapy誌に掲載されました。
論文情報
掲載誌:Transplantation and Cellular Therapy
タイトル:The Impact of Female-To-Male Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation on Survival Outcomes Varies by Recipient Age
著者:Kosuke Takano, Masaharu Tamaki, Yoshitaka Inoue, Shunto Kawamura, Seitaro Terakura, Dai Keino, Shinichi Kako, Shin-ichiro Fujiwara, Noriko Doki, Tetsuya Nishida, Yuta Hasegawa, Noboru Asada, Masashi Sawa, Masatsugu Tanaka, Naoyuki Uchida, Nobuhiro Hiramoto, Hirohisa Nakamae, Koji Kawamura, Takahiro Fukuda, Marie Ohbiki, Yoshiko Atsuta, Yoshinobu Kanda, Kimikazu Yakushijin, Hideki Nakasone
DOI:10.1016/j.jtct.2026.05.036