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[医学部] 多発性骨髄腫の抗体薬エロツズマブの新たな作用機序を発見

研究情報

1.概要

多発性骨髄腫は悪性リンパ腫に次いで2番目に多く発症する造血器腫瘍です。国立がん研究センターによる5年生存率は36.6%と極めて不良なため、最近になって複数の抗体医薬が認可されました。エロツズマブはその一つで、骨髄腫細胞に発現するSLAMF7に結合、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を介して骨髄腫細胞の除去に働くと考えられていました。しかしながら、より高い治療効果を得るため、さらなる作用機序の解明は重要な研究課題です。

今回、自治医科大学・幹細胞制御研究部の菊池次郎准教授、小山大輔講師、古川雄祐教授らは、茨城県立中央病院や大分大学、国立国際医療研究センター、東京女子医科大学、栃木県立がんセンター、東京大学、ブリストルマイヤーズスクイブ社との共同研究によりエロツズマブの新たな作用機序を発見しました。

菊池准教授らは、SLAMF7の細胞外領域が切断された可溶型SLAMF7が多発性骨髄腫患者血清中にのみ検出され、濃度の高い患者では予後が悪い点に着目しました。In vitro及びマウスモデルに可溶型SLAMF7を加えたところ、骨髄腫細胞の増殖能が最大で約2倍に増加しました。可溶型SLAMF7は骨髄腫細胞に発現するSLAMF7に結合して増殖シグナルを伝達していました。そして、エロツズマブは、その増殖能亢進をほぼ完全に阻害しました。これまでエロツズマブの作用はADCCが主体と考えられてきました。しかしながら、本研究の結果、エロツズマブが骨髄腫細胞の増殖阻害に働き、病態の悪化や再発の予防を介して予後を改善するという新たな機序が明らかになりました。従って、エロツズマブは可溶型SLAMF7濃度やSLAMF7発現の高い患者により大きな予後改善効果が期待できます。現在、臨床試験による検証を進めています。

本研究成果は2019年7月29日、血液学領域で高い引用率を有するNature姉妹誌「Leukemia」のオンライン版に掲載されました。

2. 論文名

Kikuchi J, Hori M, Iha H, Toyama-Sorimachi N, Hagiwara S, Kuroda Y, Koyama D, Izumi T, Suzuki A, and Furukawa Y. Soluble SLAMF7 promotes the growth of myeloma cells via homophilic interaction with surface SLAMF7. Leukemia. 2019 Jul 29. doi: 10.1038/s41375-019-09525-6. [Epub ahead of print].

3.リンク先