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[医学部] 日英自閉スペクトラム症児を対象にした顔認知に関する文化差研究がDev.Sci.に掲載されました

研究情報

1. 概要

自閉スペクトラム症は,顔知覚の非定型性を有することが報告されています.これまで,このような自閉スペクトラム症児にみられる顔知覚の非定型性は,顔への非定型な経験によって生じる可能性が指摘されているものの,一貫した見解がないのが現状です.

本研究ではこの問題に挑むため,顔知覚にみられる自人種優位効果(Own-race Advantage: ORA)を利用することにより,環境がどのように自閉スペクトラム症児の顔知覚に影響を与えるかについて検討しました.ORAとは,日常よく見かける自分と同一の人種の顔は見分けやすいが,異なる人種の方の顔は見分けにくい効果です.例えば,日本で生まれ育った日本人であれば,日本人の顔は見分けやすいが,外国の方の顔は見分けにくい経験をお持ちでしょう.

自治医科大学先端医療技術開発センター脳機能研究部門,小児科学,国際医療福祉大学,国際医療福祉リハビリテーションセンター,英国ダラム大学の研究グループは,日英における自閉スペクトラム症児と定型発達児を比較することにより,自閉スペクトラム症児のORAについて調査しました.研究の結果,日英の自閉スペクトラム症児ともにORAがみられました.さらに自閉スペクトラム症児と定型発達児のORAには,文化間で異質性がありました.特に,日本の児童は英国の児童よりも正確に顔を区別でき,日本の定型発達児ではORAを示しませんでした.今回の文化差に関する研究結果では,顔の非定型な経験が自閉スペクトラム症児のORAの減少や欠如につながるというこれまでの見解へ一石を投じるものです.

この研究成果は,2020年1月25日発行の「Developmental Science」にオンライン版に掲載されました.

本研究は,JSPS 科学研究費補助金基盤研究(B)(No. 18H01103, 代表:平井真洋),新学術研究領域(No. 15H01585, 代表:平井真洋),ファイザーヘルスリサーチ振興財団の支援を受けました.

2. 論文タイトルと著者

タイトル:Does culture shape face perception in autism? Cross-cultural evidence of the own-race advantage from the UK and Japan.

著者:Mary Hanley, Deborah M Riby, Michael-John Derges, Anna Douligeri, Zackary Philyaw, Takahiro Ikeda, Yukifumi Monden, Hideo Shimoizumi, Takanori Yamagata, Masahiro Hirai

掲載雑誌:Developmental Science

3.論文掲載先