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[医学部] 慢性腎臓病の合併症の早期発見に有用な血中バイオマーカーの発見
研究情報
本学卒業生の山元勝悟医師(37期)、小山大輔医師(30期)は、本学・抗加齢医学研究部の黒尾誠教授、幹細胞制御研究部の古川雄祐教授の協力のもとに、慢性腎臓病の合併症の早期発見に有用な血中バイオマーカーを発見しました。
線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor; FGF) の中でもFGF19, 21,23の3つの分子は、Klothoファミリーを共受容体とし、内分泌因子として働くことが知られており、エンドクラインFGFと呼ばれています。Klotho-FGF内分泌系は老化および糖代謝、脂質代謝、骨代謝を含む種々の生体内代謝において重要な役割を果たしており、老化関連疾患と大きな関わりがあることが明らかになりつつあります。
山元医師、小山医師らは、宮下病院に通院する高齢患者の血中エンドクラインFGF濃度を自ら測定し、臨床検査値・病歴・合併症・服薬状況等との比較解析を行いました。多変量解析の結果、FGF19は血中ALT値、心血管障害の既往、活性型ビタミンD製剤内服と、FGF21はeGFR、血中TG値、高血圧症の有無と、またFGF23はeGFR、血中1,25-ジヒドロキシビタミンD3値、骨吸収マーカーTRACP5bと独立した相関があることが明らかになりました。さらに、特に慢性腎臓病患者においてFGF21は脂質異常症、FGF23は腎性貧血、骨病変などの合併症を反映して上昇している可能性が示唆されました。慢性腎臓病患者においては脳血管障害や骨病変がQOL、予後を規定する重要な合併症であり、血中エンドクラインFGFの測定はこれらの早期発見に寄与する可能性があります。
本研究は、簡便に測定できる血中エンドクラインFGFが、老化関連疾患とくに慢性腎臓病の合併症に対するバイオマーカーとして臨床に応用できる可能性を示し、また、本学が重点的に取り組んでいる地域医療で実践可能な抗加齢医学研究としての重要な先行研究と位置づけられ、有意義なものです。
本研究成果は日本内科学会の機関誌であるInternal Medicine誌の令和2年2月1日号に掲載されます。
また本研究は、文部科学省ブランディング事業、福島県病院局研究助成のもとに行われました。