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[医学部] 遺伝性痙性対麻痺原因遺伝子SPASTの細胞内局在制御機構を解明
研究情報
1. 研究概要
遺伝性痙性対麻痺(SPG)は、緩徐進行性の両下肢の痙性対麻痺を主徴とし、病理学的には錐体路の変性を主病変とする、異なる原因遺伝子から構成される疾患群です。その中で、SPG4は本邦も含め世界で最も頻度の高いSPGです。SPG4の原因遺伝子はAAA蛋白ファミリーに属するSPASTで、そのコードするspastinは、細胞質分裂、紡錘体の解体と核膜の融合、小胞体の形状、軸索伸長等に寄与しています。
今回、自治医科大学内科学講座神経内科学部門の迫江公己博士、松浦徹教授および熊本大学発生医学研究所ゲノム神経学分野の塩田倫史准教授の研究グループは、spastin核-細胞質間のシャトルを制御するSPAST細胞質局在配列(NES)、および核内局在に関連するリン酸化部位を同定しました。更に、このNESは選択的スプライシングによって制御されるエクソン4の一部を含み、spastinアイソフォーム特異的な局在制御および微小管切断活性に関与することを明らかにしました。Spastinはアイソフォーム特異的に他のHSPタンパクと相互作用することが報告されており、本研究はSPG4だけではなく、これまでに80を超える原因遺伝子が同定されているSPG病態解明に新しい知見を提供するものと期待されます。
本研究成果は「Biochimica et Biophysica Acta – Molecular Cell Research」誌に2021年1月号に掲載されます。本研究の一部は日本医療研究開発機構(AMED)によってサポートされました。
2. 掲載論文
雑誌名: Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular Cell Research
論文タイトル: A newly identified NES sequence present in spastin regulates its subcellular localization and microtubule severing activity
著者: Kumi Sakoe, Norifumi Shioda, Tohru Matsuura