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[医学部]凍る水と凍らない水;タンパク質の機能に関わる動きを制御する水分子の同定に成功
研究情報
1.研究概要
タンパク質は生命活動の根幹をなす生体物質であり、その形や機能の異常は様々な疾患の原因となります。タンパク質は我々の体の中で水に溶けた状態で存在しており、ミクロレベルで水分子と共に動いています。この動きがタンパク質の機能に重要であると考えられています。特に、タンパク質表面近傍に存在する水分子、いわゆる水和水が重要な役割を果たしていると言われてきました。しかしながら、具体的にどういった種類の水和水がタンパク質の動きに重要であるかについて、詳しいことはわかっていませんでした。
今回、医学部生理学講座生物物理学部門(柴山修哉教授主宰)に所属する山本直樹助教は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が運営、管理する実験施設、J-PARC(茨城県東海村)を利用してこの問題に取り組みました(写真1)。中性子線を用いることで、水和水の構造やタンパク質の動きを調べることができます。その結果、凍らない水和水はタンパク質の動きを活性化するために重要であるが、凍る水和水は基本的にタンパク質の動きとは関係ないという結論を得ました。凍らない水和水はタンパク質表面と強く相互作用していてタンパク質の“潤滑剤”のような働きをしていますが、凍る水和水はタンパク質との相互作用が弱く、独立して動いていると考えられます。このように具体的にどの水和水がタンパク質の動きに関与しているかを明らかにしたのは本研究が初めてであり、今後さらなる研究の発展が期待されます。
この研究成果は3月4日付けで米国化学会の学会誌であるThe Journal of Phyiscal Chemitry Lettersに掲載され、Supplementaray coverにも選出されました(写真2)。
2.掲載論文
掲載論文:
The Journal of Physical Chemistry Letters
論文題目:
Freezable and Unfreezable Hydration Water: Distinct Contributions to Protein Dynamics Revealed by Neutron Scattering
著者:
山本 直樹(1)、古府 麻衣子(2)、中島 健次(2)、中川 洋(2,3)、柴山 修哉(1)
(1)自治医科大学 医学部 生理学講座 生物物理学部門
(2)国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター
(3)国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター