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[医学部]AADC欠損症の遺伝子治療における効果発現機構の一端を解明

研究情報

1.発表概要

芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(aromatic l-amino acid decarboxylase, AADC)欠損症は、先天的なAADC遺伝子の変異により、ドパミンを介した被殻の神経機能が障害される遺伝性の希少疾患です。この疾患の治療法として、本学ではヒトAADC遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを被殻に注入する遺伝子治療を開発してきました。この遺伝子治療によって、被殻内のドパミン産生、認知機能および運動機能の改善、ジストニアの消失が認められました。これまで国内外でこの遺伝子治療の効果が報告されてきましたが、効果発現の詳細な機構は未解明でした。

今回、大貫良幸(脳神経外科)、村松慎一(神経遺伝子治療部門)、山形崇倫(小児科)らの研究グループは、遺伝子治療を実施した国内外の8例の患者(重症型7名、中間型1名)に対して、6-[18F]fluoro-l-m-tyrosine (FMT)をトレーサーとした高解像度ポジトロン断層法(PET)と拡散テンソル画像(DTI)を用いて、AADC欠損症の遺伝子治療の脳内機構を解析しました。その結果、遺伝子導入された被殻領域は、運動の遂行を担う一次運動野だけでなく、運動の計画を担う前頭前野とも結合していることが明らかになりました。さらに、遺伝子導入された被殻において、前頭前野と結合する領域が運動機能の回復と相関関係があることを示しました。AADC遺伝子治療の効果発現機構の一端が解明されたことで、今後、運動機能障害を呈する疾患の治療法の開発へつながることが期待されます。

本研究成果は、2021年4月14日に英国科学雑誌「Brain Communications」のオンライン版で公開されました。本研究は日本医療研究開発機構(AMED)によってサポートされました。

2.掲載論文

掲載論文:
Brain Communications

論文題目:
Dopaminergic restoration of prefrontal cortico-putaminal network in gene therapy for aromatic l-amino acid decarboxylase deficiency

著者:
大貫良幸(1)、小野さやか(2)、中嶋剛(1)、小島華林(3)、多賀直行(4)、池田尚広(3)、桑島真理(3)、黒川愛恵(3)、加藤光広(5)、川合謙介(1)、小坂仁(3)、佐藤俊彦(6)、村松慎一(7)(8)、山形崇倫(3)

(1)自治医科大学 脳神経外科学講座
(2)済生会栗橋病院 神経内科
(3)自治医科大学 小児科学講座
(4)自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座
(5)昭和大学 医学部 小児科学講座(前 山形大学 医学部 小児科学講座)
(6)宇都宮セントラルクリニック 放射線科
(7)自治医科大学 オープンイノベーションセンター 神経遺伝子治療部門
(8)東京大学 医科学研究所 遺伝子・細胞治療センター

3.論文掲載先