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[医学部]高精度な抗AAV中和抗体測定法の確立

研究情報

自治医科大学生化学講座病態生化学部門、分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部の研究グループは、分泌型ナノルシフェラーゼを用いた高感度・高精度な抗アデノ随伴ウイルス(AAV)抗体測定系を開発しました。本研究成果は静脈投与によるAAV遺伝子治療の候補患者の適正な選択につながる可能性があり、その研究成果が米国遺伝子細胞治療学会のMolecular Therapy – Methods & Clinical Developmentに掲載されました。

AAVベクターを用いた遺伝子治療が様々な難治性疾患に応用され、2020年には、国内でもZOLGENSMA®というAAVベクターを用いた遺伝子治療薬が脊髄性筋萎縮症に対して承認されました。また、他にも血友病や様々な遺伝性疾患に対する開発も進んでいます。AAVベクターを用いた静脈投与による遺伝子治療は、既感染に伴う抗AAV抗体が血中に存在すると治療効果が減弱します。遺伝子治療の候補者を適切に選択するために、患者さんの抗AAV抗体の力価を適切に検査することが重要です。

ウイルスに対する中和抗体はウイルスと患者血清を混ぜ、ウイルスの感染効率を阻害することで検出します。AAVには細胞への感染効率が悪いタイプ(血清型)があります。その場合は、アッセイに多くのウイルスを必要とするため、感度や精度が低くなることが問題でした。本研究ではAAVベクターに搭載するレポーター遺伝子として、ホタルルシフェラーゼの100倍の発光が得られるナノルシフェラーゼを用いました。また、シグナルペプチドを結合させて細胞外にレポーターを分泌させることで上清を用いた評価が可能になりました。これらの工夫に、AAV感染効率の高い細胞を組み合わせて簡便、かつ再現性の高いアッセイ系を構築しました。

今回の成果は、今後の静脈投与によるAAV遺伝子治療の中和抗体スクリーニングに有効な手法となると期待しています。