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[医学研究科]抗CD20抗体に対する抵抗性の新たなメカニズムを発見
研究情報
1.研究概要
CD20はB細胞性リンパ腫の表面に安定して発現する分子で、造血幹細胞やB前駆細胞には発現しないことから理想的な治療標的です。現在、抗CD20抗体はB細胞性非ホジキンリンパ腫の治療に不可欠の薬剤ですが、CD20の発現低下による抵抗性が問題となっております。CD20発現低下のメカニズムを明らかにすることは、B細胞性リンパ腫の治療成績のさらなる改善に重要と考えられます。
今回、幹細胞制御研究部・助教(研究当時、現在は非常勤講師)の黒田芳明氏らは、骨髄間質細胞との相互作用によってB細胞性リンパ腫でオートファジーが誘導され、CD20を分解することで抗CD20抗体に対する抵抗性を獲得していることを見出しました。
黒田助教はリンパ節ではCD20を強く発現しているのに対し、骨髄に浸潤したリンパ腫細胞ではCD20を発現していないB細胞性リンパ腫の1例を経験しました。当該患者を抗CD20抗体で治療したところ、リンパ節病変は速やかに改善したのに対し、骨髄のリンパ腫細胞は減少せず、再発の原因となりました。リンパ節と骨髄の病理標本で選択的オートファジーに関与する分子p62を染めてみると、骨髄に浸潤したリンパ腫細胞で発現が低下していることから、骨髄細胞との相互作用によってオートファジーが誘導されている可能性を考えました。そこでB細胞性リンパ腫細胞株と不死化した骨髄間質細胞の培養系を用い、共培養によってリンパ腫細胞にオートファジーが誘導され、CD20がp62によってリソソームに運ばれて分解されることを証明しました。
オートファジーはさまざまなストレスに対する細胞の防御反応であり、がん細胞においては治療抵抗性の原因となることが知られております。したがってオートファジーの抑制によって治療効果が向上すると考えられます。本研究でもリソソーム活性阻害剤クロロキンによってCD20の分解が抑制されることが示されており、また間質細胞との相互作用を抑えることで抗CD20抗体抵抗性が解除される可能性もあり、実臨床への応用が期待されます。
この成果は血液学領域で2番目に高い引用率(2020年impact factor 11.528)の雑誌「LEUKEMIA」の5月号に掲載されました。
2.掲載論文
Kuroda Y, Yashima-Abo A, Koyama D, Kikuchi J, Mori S, Ito S, Furukawa Y. Bone marrow stromal cell-mediated degradation of CD20 leads to primary rituximab resistance in mantle cell lymphoma. Leukemia 35(5): 1506-1510, 2021. doi:10.1038/s41375-020-01035-x. PubMed ID: 32929128.