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[医学部]マウスにおける第VIII因子産生細胞の同定

研究情報

自治医科大学生化学講座病態生化学部門、自治医科大学附属病院病理診断部、山梨大学の研究グループは、遺伝子改変マウスを用いて生体内で血液凝固第VIII因子を産生する細胞の特性を明らかにしました。本研究成果は、これまで議論があった第VIII因子産生細胞の特性を再定義したものであり、その研究成果が英文専門誌であるScientific Reports誌に掲載されました。

血液凝固因子の多くは肝細胞で産生されるため、肝機能が低下すると血液中の濃度が低下して出血傾向になります。一方、第VIII因子は肝移植が必要になる程度の重度な障害でもむしろ血液中の濃度が上昇し、肝細胞以外が産生細胞と考えられてきました。しかし、その臓器や細胞については肝内皮細胞やリンパ管内皮細胞、骨髄間葉系幹細胞など様々な報告があり、議論が割れていました。

本研究では第VIII因子の産生臓器や細胞の特性を明らかにするために、内在性の第VIII因子遺伝子を欠損するとEGFPを発現するノックインマウスを樹立しました。このマウスを用いると第VIII因子産生細胞をEGFPで検出できます。EGFPが発現する第VIII因子産生細胞は肝臓の一部のCD31highCD146highLyve1+類洞内皮細胞のみで、肝中心静脈や他の臓器内皮細胞には認めませんでした。類洞内皮細胞とリンパ管内皮細胞は類似した性質を有しますが、第VIII因子陽性細胞は血小板に発現するCLEC-2が陽性で、リンパ管内皮細胞に発現するポドプラニンが陰性であることを明らかにしました。また、第VIII因子発現は胎仔肝発生後期から高まることも明らかにしました。

第VIII因子の遺伝的異常は血友病Aとよばれ、先天性出血性疾患として最も多い疾患です。現在、血友病Aに対する遺伝子治療の開発は進んでいますが、肝細胞が産生部位である第IX因子よりも安定した結果が得られていません。今回の成果は、今後の血友病Aに対する第VIII因子産生細胞を標的とした遺伝子治療やゲノム編集の新たなストラテジーに結びつく成果になると期待しています。