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[医学部]BCL-2阻害剤venetoclaxの効果増強のメカニズムを発見

研究情報

1.研究概要

アポトーシス抑制分子BCL-2は様々な細胞に発現し、DNA損傷を始めとする種々のアポトーシス誘導シグナルから細胞を守っております。癌細胞においてBCL-2はしばしば強発現しており、生存に重要な役割を果たしていることから、良い治療標的と考えられます。VenetoclaxはAbbVie社によって開発されたfirst-in-classのBCL-2阻害薬で、急性骨髄性白血病や慢性リンパ性白血病ですでに臨床応用され、とくに高齢患者において顕著な効果を挙げております。

Venetoclaxの有効性はBCL-2発現レベルと相関することが知られております。そこで本研究において幹細胞制御研究部の長田直希助教・菊池次郎准教授らは、低分子化合物ライブラリーをスクリーニングし、mTOR阻害剤が多発性骨髄腫細胞のBCL-2発現を上昇させ、venetoclax感受性を亢進させることを見出しました。

さらにBCL-2発現上昇のメカニズムとして、多発性骨髄腫細胞においてmTOR活性を阻害するとAKT kinaseが活性化され、その下流でヒストンH3K27メチル化酵素EZH2が阻害されることでBCL2プロモーターが脱抑制されることを明らかにしました。

Venetoclaxは多発性骨髄腫への臨床応用が期待されておりますが、毒性などの関係で併用のパートナー選択が課題となっております。本研究は併用薬の候補としてmTOR阻害剤を示したもので、マウス骨髄腫モデルを用いて有効性と安全性も検証しており、臨床展開が期待されます。

この成果は1920年に創刊された血液学領域で最も伝統あるイタリア血液学会機関誌「HAEMATOLOGICA」(2020年Impact Factor 9.941)のオンライン版に2021年7月15日付 で公開されました。

2.掲載論文

Osada N, Kikuchi J, Koyama D, Kuroda Y, Yasui H, Leverson JD, Furukawa Y. mTOR inhibitors sensitize multiple myeloma cells to venetoclax via IKZF3-and Blimp-1-mediated BCL-2 up-regulation.
Haematologica 2021 Jul 15. doi: 10.3324/haematol.2021.278506 PMID: 34261294.

3.論文掲載先