医学部 School of news

ニュース&トピックス

News & Topics

[大学]制御サブユニットによるイオンチャネル巨大複合体の調節機構を解明

研究情報

 神経細胞や筋細胞の電気活動に必須の役割を果たすイオンチャネル(注1)は、多様な制御サブユニットから電位依存性やゲートの開閉のキネティクス(注2)などの調節を受けて、複合体としてその生理的機能を獲得します。しかしながら、イオンチャネルの調節機構については、イオン選択性や電位依存性の機構と比べて、未解明の問題が数多く残されています。

 今回、本学医学部生理学講座統合生理学部門の中條浩一教授および糟谷豪助教は、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の濡木理教授および木瀬孔明特任助教らとの共同研究のもと、神経細胞における活動電位の逆伝搬の抑制に関与する電位依存性カリウムイオンチャネルKv4.2と制御サブユニットKChIP1およびDPP6Sとの複合体構造をクライオ電子顕微鏡(注3)で決定することに成功しました。さらに、立体構造情報をもとに電気生理学的解析を行うことによって、KChIP1はKv4.2のゲートと相互作用することで、またDPP6SはKv4.2の電位センサーと相互作用することで、それぞれKv4.2の活性化、不活性化のキネティクスを調節することを初めて明らかにしました。本研究成果は、脳機能疾患や心疾患の原因となるイオンチャネル複合体の機能理解の促進や、イオンチャネル複合体を標的とした治療薬の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2021年9月22日付けで英科学誌Natureにオンライン公開されました。

用語解説

(注1)イオンチャネル

細胞の生体膜は脂質二重膜から構成させているため、イオンをほとんど透過しない。イオンチャネルは生体膜にある膜貫通タンパク質であり、イオンを透過させる機能を持つ。1種類のイオンだけを選択的に透過させるチャネルもあれば、イオン選択性の低いチャネルもある。膜電位変化やリガンド依存的に活性化する。

(注2)キネティクス

ある状態から異なる状態へと移行する速度のこと。例えば、電位依存性イオンチャネルは膜電位に応じて静止状態、活性化状態、不活性化状態を取り、それらの状態間の移行速度こと。

(注3)クライオ電子顕微鏡

液体窒素(-196℃)冷却下でタンパク質などの生体分子に対して電子線を照射して像を拡大し、試料を観察するための装置。電子線の持つ波長は可視光線よりも短いため、光学顕微鏡では見ることが難しい原子レベルの大きさの試料を観測することが可能となる。タンパク質の立体構造を高分解能で決定する手法として、検出器などにおいて目覚ましい技術革新を遂げており、2017年に、その開発に貢献した海外の研究者三名にノーベル化学賞が贈られた 。

詳しくは下記のリンクをご覧ください。