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[医学部]生物学的製剤にて寛解した関節リウマチ患者の再燃予測バイオマーカーを新たに発見

研究情報

人口の0.5〜1%が罹患する関節リウマチでは、近年、生物学的製剤が効果のある治療薬として使用されており、劇的に寛解率が増加しました。しかしながら、生物学的製剤は長期使用しなければならず、副作用としての感染症リスクや、高額な医療費が課題でした。

今回、自治医科大学内科学講座アレルギー膠原病学部門 永谷勝也(現同部門非常勤講師)、簑田清次(現自治医科大学客員教授)、生化学講座機能生化学部門 坂下英司、遠藤仁司の研究グループは、生物学的製剤にて寛解を得た関節リウマチ患者の血清サンプルを継時的に追跡し、網羅的サイトカイン解析の結果から、探索的多変量解析を用いて、寛解状態の血清から将来の再燃を予測するマルチバイオマーカーを同定しました。本バイオマーカーの発見により、寛解状態にある関節リウマチ患者の生物学的製剤の使用を安全に中止することが可能であると思われます。

生物学的製剤にて1年以上寛解に達した関節リウマチ患者40名を、休薬後、2年間の長期にわたり継時的に経過観察したところ、65%の患者が再燃したが、35%の患者は寛解を維持していることが明らかになりました。本コホートの休薬時の患者血清を用いて、73種類のサイトカインを網羅的に測定して探索的多変量ROC解析を実施したところ、IL-34を含む5因子から構成される再燃予測指数RPI(感度88%:95%信頼区間68.8〜97.5%、特異度85.7%:95%信頼区間57.2〜98.2%、診断精度87.2%:95%信頼区間72.6〜95.7%)を算出することができました。

この成果は、今後更なるバリデーションが必要であるものの、長年の課題であった、関節リウマチ患者における生物学的製剤の長期使用からの離脱の指標に利用可能であると考えられます。さらに、関節リウマチの再燃の生物学的機序を明らかにできる可能性も示しており、今後の発展が期待されます。

この成果は英科学雑誌のScientific Reportsに掲載されました。

掲載論文

A novel multi-biomarker combination predicting relapse from long-term remission after discontinuation of biological drugs in rheumatoid arthritis

著者

Katsuya Nagatani(永谷 勝也), Eiji Sakashita(坂下 英司), Hitoshi Endo(遠藤 仁司), Seiji Minota(簑田 清次)

掲載雑誌: Scientific Reports DOI: 10.1038/s41598-021-00357-9