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[医学部]同種造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス特異的細胞傷害性T細胞の特徴を明らかに
研究情報
自治医科大学医学部総合医学1(血液科)の仲宗根秀樹講師らは、同種造血幹細胞移植後の実際の患者検体を用いて、移植後合併症として非常に重要なサイトメガロウイルスの再活性化に着目し、サイトメガロウイルス特異的細胞傷害性T細胞のクローン解析と遺伝子発現プロファイル解析により、サイトメガロウイルス再活性化パターン毎の特徴を明らかにしました。
- サイトメガロウイルス特異的細胞傷害性T細胞は、移植後のサイトメガロウイルス再活性化パターンに応じて、T細胞受容体の超可変領域のアミノ酸長やアミノ酸モチーフに相違があることが示され、アミノ酸配列に応じて、各T細胞クローンにおけるウイルス抗原との予測結合親和性にも特徴があることが明らかとなりました。サイトメガロウイルス再活性化をきたさなかった症例の中で、さらにウイルス抗原との結合親和性が高いクローンを同定し人工的に増幅、もしくは同一のT細胞受容体を遺伝子導入したT細胞を作成する事で、難治例への細胞免疫療法につながる可能性があります。
- 再活性化パターンによるサイトメガロウイルス特異的細胞傷害性T細胞の遺伝子発現プロファイルの解析より、再活性化を反復した症例における免疫チェックポイント分子の高発現などの知見が得られ、これら細胞表面受容体を標的とした薬剤を開発することで、制御力の強いサイトメガロウイルス特異的細胞傷害性T細胞を効率的に患者体内で増幅させる治療法につながる可能性があります。
- 実臨床で実施される造血幹細胞移植を、抗ウイルス免疫再構築のhuman modelと捉えることで、その他のウイルス感染症研究だけでなく腫瘍免疫などに広くに応用できるトランスレーショナルリサーチに発展する可能性があり、今後の新しい治療法開発につながることが期待されます。
詳細は、https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20211102-01.htmlをご覧ください。
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)(研究開発代表者 仲宗根秀樹)の支援を受け行ったものです。
本研究の成果は、科学雑誌『Communications Biology』(日本時間10月11日18時; DOI : 10.1038/s42003-021-02709-7)に掲載されました。
掲載論文
Features of repertoire diversity and gene expression in human cytotoxic T cells following allogeneic hematopoietic cell transplantation
著者
Hideki Nakasone, Machiko Kusuda, Kiriko Terasako-Saito, Koji Kawamura, Yu Akahoshi, Masakatsu Kawamura, Junko Takeshita, Shunto Kawamura, Nozomu Yoshino, Kazuki Yoshimura, Yukiko Misaki, Ayumi Gomyo, Kazuaki Kameda, Masaharu Tamaki, Aki Tanihara, Shun-ichi Kimura, Shinichi Kako, and Yoshinobu Kanda
雑誌:Communications Biology
DOI:10.1038/s42003-021-02709-7