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[医学部]Ras変異体が誘導する新規細胞遊走シグナルRas/IL-33/MerTK経路の解明

研究情報

RAS遺伝子の変異は多くのがんで見出されています。Rasタンパク質は増殖を促進するERK経路など複数のシグナルの起点となりますが、それらのシグナルを標的とした阻害剤ではRasシグナルを完全には抑制できないことから、未知のRasシグナルの同定が期待されています。

今回、自治医科大学生化学講座構造生化学部門 太田聡講師、多胡憲治講師、松儀実広教授、柳澤健教授は同大学消化器一般移植外科 堀江久永教授、同大学分子病態研究部 口丸高弘講師(現データサイエンスセンター)および多胡めぐみ教授(慶應大学薬学部衛生化学講座)らとの共同研究のもと、がん化型Ras変異体がIL-33依存的に受容体型チロシンキナーゼMerTKの発現し、またチロシンリン酸化を誘導することで細胞遊走を亢進させることを突き止めました。細胞遊走の亢進は、がん悪性化の重要なステップであり、MerTKはRasとがん悪性化を結ぶ中核的な分子と考えられます。

本研究の成果は、がんの悪性化におけるRasシグナルの機能の解明や、新規RasシグナルであるRas/IL-33/MerTK経路を標的としたがん治療薬の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2021年11月6日付けで科学雑誌FEBS Journal(https://doi.org/10.1111/febs.16271)に掲載されました。

論文名

The role of MerTK in promoting cell migration is enhanced by the oncogenic Ras/IL-33 signaling axis.