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[医学部]大腸がんの原因遺伝子 KLF5 を標的とし、がん細胞をより選択的に障害する新しい抗がん剤の開発

研究情報

 転写因子KLF5は腸上皮幹細胞からの腫瘍形成に必須の因子で、大腸癌の発症に深い関係があります。このことから、KLF5は大腸癌治療における有望な標的分子と考えられてきました。しかしKLF5は3次元立体構造を解明できない天然変性蛋白であり、立体構造に基づく分子標的薬の創薬は不可能とされてきました。

 自治医科大学永井良三学長と仲矢丈雄准教授(病理学講座人体病理学部門)らの研究チームは、東京大学、理化学研究所、Prism Biolab社等の研究者とともに、新しい方法でKLF5を標的とする低分子化合物を開発し、KLF5抑制作用と抗腫瘍効果を確認しました。

 今回の研究では、KLF5が他の蛋白と相互作用した時に、KLF5蛋白のなかでαヘリックス構造をとる領域をコンピュータで推測し、その部分の構造を模倣した低分子化合物を合成しました。この化合物はKLF5蛋白と他の蛋白との相互作用を抑制する可能性があると考えられます。

 興味深いことに、開発化合物は正常細胞を傷害せずに、癌細胞をより選択的に抑制しました。また、KLF5蛋白だけでなく、大腸癌細胞の増殖に重要なWntシグナルも抑制しました。さらに本化合物を、皮下に癌細胞移植したマウスに投与したところ、明らかな副作用を認めることなく、腫瘍の増生が抑制されました。

 がんを起こす原因因子の多くは、KLF5のように構造が決まらない蛋白であることが多く、これらの蛋白に対する分子標的薬の開発は進んでいません。今回の化合物の詳細な作用機序はまだ十分に解明されていませんが、天然変性蛋白のアミノ酸配列から重要な標的部分を予測し、その部分の構造を模倣した低分子化合物を合成する方法は、がんの新しい分子創薬法として期待されます。

 本研究成果は、2022年3月28日付で、米国の科学雑誌ACS Medicinal Chemistry Letters にオンライン掲載されました。

論文名
Development of Low-Molecular-Weight Compounds Targeting the Cancer-Associated KLF5 Transcription Factor Takeo Nakaya, Kenichi Aizawa, Yuki Taguchi, Kentaro Tsuji, Sachi Sekine, Kazuhiro Murakami, Masaji Kasai, Hirofumi Nakano, Yasumitsu Kondoh, Shingo Dan, Atsushi Yoshimori, Hiroyuki Kouji, Dai Takehara, Toru Suzuki, Hiroyuki Osada, Masayuki Murata, Akira Tanaka, and Ryozo Nagai* ACS Medicinal Chemistry Letters (2022)

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