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[医学部]骨髄腫治療に関する医療経済評価研究の結果がBlood誌に掲載されました

研究情報

 移植適応の未治療骨髄腫患者に対しては3剤併用導入療法の後に自家造血幹細胞移植を行うことが標準治療となっていますが、近年、この導入療法に抗CD38抗体であるダラツムマブを併用することによって予後が改善することが2つの無作為割付比較試験で示されました。一方、ダラツムマブは高額薬であり、移植非適応の骨髄腫患者に初期治療として併用することは医療経済評価な観点では標準治療よりも劣るということが報告されています。そこで、自治医科大学医学部内科学講座(血液学部門)では、前述の2つの無作為割付比較試験のデータを用いて移植適応の未治療骨髄腫患者に対する初期治療でのダラツムマブ併用の医療経済評価研究を行いました。治療開始後10年間の評価を行うマルコフモデルを用いた臨床決断分析の結果、レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの3剤併用療法にさらにダラツムマブを併用する治療はダラツムマブを併用しない治療よりもQOL調整生存年(QALY)が高く(5.43 vs. 5.18)、コストはむしろ低いという結果でした(6447万9793円 vs. 7128万7569円)。また、サリドマイド+ボルテゾミブ+デキサメタゾンの3剤併用療法にさらにダラツムマブを併用する治療はダラツムマブを併用しない治療よりもQALYが高く(5.67 vs. 5.42)、コストは低いという結果でした(4360万310円 vs. 4947万1941円)。米国の医療費に基づく解析でも同様の結果となりました。初期治療にダラツムマブを併用することによって、治療を必要としない期間が延長したことが寄与した結果と考えられます。この研究成果は,2022年5月17日に「Blood」誌にオンライン掲載されました。

論文タイトルと著者
タイトル:
Daratumumab in first-line is cost-effective in transplant-eligible newly diagnosed myeloma patients.
著者:Chihiro Yamamoto, Daisuke Minakata, Yoshinobu Kanda, et al.
掲載雑誌:Blood
論文掲載先
https://ashpublications.org/blood/article/doi/10.1182/blood.2021015220/485281/Daratumumab-in-first-line-is-cost-effective-in