ニュース&トピックス
News & Topics
[医学部] 心筋梗塞の病態悪化とミトコンドリア機能に関する研究成果がiScience誌に掲載されました
研究情報
概要
自治医科大学の徳山剛士 博士研究員と学習院大学の柳茂 教授のグループは、東京薬科大学、群馬大学、九州大学、自然科学研究機構生理学研究所、信州大学、防衛大学校、北翔大学との共同研究で、ミトコンドリアに存在する酵素ミトコンドリアユビキチンリガーゼMITOLの減少によるミトコンドリアの形態異常が、心臓老化による心不全や心筋梗塞による心筋壊死を引き起こすことを示唆し、MITOLがこれらの病気の治療標的になる可能性を示しました。
心不全は未だ予後不良の病気であり、心筋梗塞は心筋が壊死して死に至ることも多い、恐ろしい病気です。それゆえ効果的な治療法の開発が待ち望まれています。心不全や心筋梗塞の病態において、ミトコンドリアの機能低下が原因の一つとして注目されていますが、その実態は不明です。柳らの研究グループは、ミトコンドリアユビキチンリガーゼMITOLを同定し、MITOLがミトコンドリアの形態と機能を調節する中心的な酵素であることを報告してきました。特に、MITOLはミトコンドリア分裂因子であるDrp1を抑制してミトコンドリアの分裂を防いでいることがわかっていましたが、生体内での意義は不明でした。本研究の成果から、MITOLはDrp1を制御することにより心臓老化や虚血ストレスから心筋細胞を保護しており、MITOLの減少が心臓老化による心不全や心筋梗塞による心機能障害に深く関与していることが考えられます。今後、心不全や心筋梗塞に対してMITOLを標的とした治療法の開発が期待されます。
本研究成果は、2022年6月10日(米国夏時間)にiScience誌のオンライン版に掲載されました。
図:本研究成果の概要図
論文名、著者名など
論文名:Protective roles of MITOL against myocardial senescence and ischemic injury partly via Drp1 regulation
著者名:Takeshi Tokuyama, Hideki Uosaki, Ayumu Sugiura, Gen Nishitai, Keisuke Takeda, Shun Nagashima ,Isshin Shiiba ,Naoki Ito ,Taku Amo ,Satoshi Mohri, Akiyuki Nishimura, Motohiro Nishida, Ayumu Konno, Hirokazu Hirai, Satoshi Ishido, Takahiro Yoshizawa, Takayuki Shindo, Shingo Takada, Shintaro Kinugawa, Ryoko Inatome, and Shigeru Yanagi
参考
学習院大学ホームページ