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[医学部] ナノボディを利用して赤色蛍光タンパク質依存的に機能するCreリコンビナーゼを開発

研究情報

概要

近年、神経科学分野では行動を制御する神経機構の解明について大きな進捗がみられますが、その多くは特定の神経細胞に限定した活動記録・活動操作を利用しています。こうした細胞特異的な遺伝子発現制御を実現するため、loxP配列と呼ばれるDNA配列を特異的に認識するDNA組換え酵素Creリコンビナーゼが広く用いられています。

自治医科大学生理学講座神経脳生理学部門の犬束歩助教と尾仲達史教授を中心とした研究チームは、名古屋大学の溝口博之准教授、大阪大学の金子涼輔准教授、岡山大学の坂本浩隆准教授との共同研究により、赤色蛍光タンパク質依存的に組み換え酵素活性を発揮するCreリコンビナーゼ (Cre-DOR: Cre recombinase dependent on RFP) の開発に成功しました。Cre-DORはRFP特異的に結合するナノボディを利用したSplit-Creの再会合により、その組み換え酵素活性を発揮します。また、Cre-DORを用いたRFP発現細胞特異的な順行性トレーシングにより、ラットの扁桃体内側核後背部に存在するガストリン放出ペプチド受容体発現ニューロンが、分界上床核に投射していることが明らかになりました。本研究成果により、赤色蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変動物における遺伝子発現制御の選択肢が大きく広がることが期待されます。

本研究成果は、2022年9月16日に科学雑誌「Communications Biology」にて公開されました。

発表論文に関する情報

雑誌名:Communications Biology
論文タイトル:Nanobody-based RFP-dependent Cre recombinase for selective anterograde tracing in RFP-expressing transgenic animals
著者:Ayumu Inutsuka, Sho Maejima, Hiroyuki Mizoguchi, Ryosuke Kaneko, Rei Nomura, Keiko Takanami, Hirotaka Sakamoto and Tatsushi Onaka
DOI: 10.1038/s42003-022-03944-2

リンク先: https://www.nature.com/articles/s42003-022-03944-2

その他

本研究は赤色蛍光タンパク質を標的とした遺伝子改変技術の開発でしたが、今後の発展としては内在性のタンパク質を標的とすることが考えられます。以上の内容は公益財団法人栃木県産業振興センターの「世界一を目指す研究開発助成事業」に採択され、現在開発中です。

リンク先: http://www.tochigi-iin.or.jp/index/3/4.html