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[医学研究科]自家造血幹細胞移植後の血小板生着遅延が予後に与える影響、および血小板生着遅延のリスク因子の検討
研究情報
概要
再発難治性の非ホジキンリンパ腫や、若年で重篤な合併症のない多発性骨髄腫では、自家造血幹細胞移植が標準治療となっています。自家移植ではほぼ全例に速やかな好中球生着が得られる一方、血小板生着が得られるまでの期間には個人差があります。血小板生着遅延が予後にどのような影響を与えるのか、また血小板生着遅延を引き起こすリスク因子について、これまで十分にわかっていませんでした。
自治医科大学総合医学第一講座(血液科)大学院生の岡田陽介、分子病態治療研究センター幹細胞制御部教授の仲宗根秀樹を中心とした日本造血・免疫細胞療法学会(JSTCT)合併症ワーキンググループは、JSTCT/JDCHCTが実施する「造血細胞移植と細胞治療の全国調査」によるレジストリデータを用いて大規模症例解析を行い、自家移植後の血小板生着遅延の意義を検討しました。
研究チームは、移植から28日以内に血小板数が5万以上に達した群(通常生着群)と達しなかった群(生着遅延群)の2群に分けて、移植後アウトカムを比較しました。すると生着遅延群は通常生着群と比べて、5年全生存率が低く(56.1% vs 73.3%)、5年無増悪生存率も低い結果でした(45.2% vs 56.7%)。また移植から1年時点での疾患増悪率は高く(24.8% vs 17.2%)、5年累積非再発死亡率も高いという結果が得られました(11.7% vs 4.5%)。
次に、どのような因子が血小板生着遅延に影響するのかを検討しました。移植する細胞の数が血小板生着遅延に強く関連することは知られていましたが、Performance statusやhematopoietic cell transplant-specific comorbidity indexなどといった患者さんの全身状態を示す指標、また移植時の疾患コントロールの状態や多発性骨髄腫では初発時のInternational Staging System stageといった疾患の状態を示す指標も、血小板生着遅延に関連することがわかりました。さらに、これらの因子を組み合わせることで血小板生着遅延のリスク分類を作成し、各リスクにおいて血小板生着遅延を回避するために輸注するのが良いと考えられる移植細胞数を示しました。
移植細胞数の個別最適化により、血小板生着遅延を回避し、自家移植後の予後の改善に寄与するものと期待されます。
この成果は、英文科学雑誌のCytotherapyに掲載されました。
本研究はTakeda Science Foundation(仲宗根秀樹)のサポートを受け実施されました。
発表雑誌
雑誌名:Cytotherapy
論文タイトル:Adverse impact of delay of platelet recovery after autologous hematopoietic cell transplantation for aggressive non-Hodgkin lymphoma and multiple myeloma
著者:Yosuke Okada, Fumihiko Kimura, Naoki Kurita, Hiroyuki Takahashi, Yutaka Shimazu, Shohei Mizuno, Naoyuki Uchida, Keisuke Kataoka, Nobuhiro Hiramoto, Shuichi Ota, Shinichi Kako, Nobuhiro Tsukada, Yoshinobu Kanda, Shingo Kurahashi, Noriko Doki, Akinori Nishikawa, Sung-Won Kim, Akira Hangaishi, Junya Kanda, Takahiro Fukuda, Yoshiko Atsuta, Eisei Kondo, Koji Kawamura, and Hideki Nakasone
DOI番号:10.1016/j.jcyt.2023.05.015.
論文掲載先
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1465324923009611