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[大学]ChIPシークエンス解析により見出した転写因子複合体が多発性骨髄腫の薬剤耐性獲得に働く機序を解明
研究情報
概要
多発性骨髄腫は、高齢者に好発する形質細胞が腫瘍化した造血器腫瘍です。今後、超高齢化社会の到来に伴う医療ニーズの増大が懸念されています。治療成績は、プロテアソーム阻害剤や免疫調節薬、抗体薬等の分子標的薬によって大きく改善されました。しかしながら、これらのキードラッグに耐性を示す再発・難治症例は、有効な治療薬の乏しいアンメットニーズとなっています。
分子病態治療研究センター幹細胞制御研究部の長田直希助教・菊池次郎准教授、古川雄祐教授(現・客員教授)らは、大分大学や東京大学医科学研究所、秋田大学との共同研究により、免疫調節薬を含むキードラッグに対する新たな耐性獲得機序を解明し、その克服に有効な治療法を見出しました。
長田助教らは、次世代シークエンサを用いたChIPシークエンス解析を駆使した網羅的解析の結果、AP-1ファミリーに属する転写因子c-FosがIkarosと複合体を形成して転写を活性化すると共に、免疫調節薬レナリドミド耐性獲得に働く機序を明らかにしました。
また、AP-1ファミリーに対する低分子阻害剤とレナリドミドの併用は、in vitro及びマウス骨髄腫モデルにおいて、耐性克服と抗腫瘍効果の増強に働きました。AP-1阻害剤は骨髄腫以外の疾患で臨床試験が進行中であり、今後、多発性骨髄腫に対しても臨床展開が期待されます。
本研究は、多発性骨髄腫の予後の改善に結びつく重要な知見であり、再発・難治性多発性骨髄腫患者への福音となります。
この研究成果は「Clinical and Translational Medicine」誌(2022年Impact Factor 10.6)のオンライン版に2023年8月15日付で公開されました。
論文名
雑誌名:Clinical and Translational Medicine, 13: e1364, 2023.
論文タイトル:c-FOS is an integral component of the IKZF1 transactivator complex and mediates lenalidomide resistance in multiple myeloma.
著者:Osada N, Kikuchi J, Iha H, Yasui H, Ikeda S, Takahashi N, Furukawa Y.