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[大学]臍帯血移植における非再発死亡リスクスコアを開発

研究情報

概要

 同種造血幹細胞移植において最も優先されるドナーはHLA一致同胞ですが、HLA一致同胞が得られない場合や早期の移植が必要な場合、臍帯血を用いて移植することができます。臍帯血移植(umbilical cord blood transplantation; UCBT)の実施件数は日本が世界最大であり、その移植成績は徐々に改善されてきています。しかし非再発死亡(non-relapse mortality; NRM)率は未だに高く、課題として残されています。
 造血幹細胞移植におけるNRMのリスク評価として、現在は Hematopoietic cell transplantation-specific comorbidity index (HCT-CI)が用いられていますが、骨髄移植や末梢血幹細胞移植を念頭に作成されたスコアであり、臍帯血移植でのNRMリスクを評価するには最適ではない可能性が考えられていました。
 自治医科大学総合医学第一講座(血液科) 大学院生の岡田陽介、分子病態治療研究センター 領域融合治療研究部 教授の仲宗根秀樹を中心とした日本造血・免疫細胞療法学会ドナー・ソースワーキンググループは「造血細胞移植と細胞治療の全国調査」によるレジストリデータを用いて大規模症例解析を行い、臍帯血移植に特化したNRMリスクスコアの開発を行いました。

 研究チームは、2008年から2017年に臍帯血移植を実施した症例を対象としてNRMのリスク因子を同定し、赤池情報量規準を用いてモデルフィッティングを評価しました。さらにハザード比をもとに各因子にスコアを付けました。その結果、以下の因子・点数からなるUCBT-specific NRM Risk Assessment (CoBRA) スコアが作成されました: 年齢55歳以上 (2点)、HCT-CI 3点以上 (2点)、男性 (1点)、タクロリムス+メトトレキサート以外のgraft-versus-host disease (GVHD)予防法 (1点)、Performance status 2-4 (1点)、HLAアリル型の不適合数 2以上 (1点), refined disease risk index 高リスク (1点)、骨髄破壊的前処置 (1点)、臍帯血中のCD34陽性細胞 0.82 x 105/kg未満 (1点)。
次に2018年から2020年に臍帯血移植を実施した症例を対象として、スコアの有用性を評価しました。0-4点: 低リスク群、5-7点: 中間リスク群、8点以上: 高リスク群とすると、移植から2年時点でのNRMはそれぞれ14.9%、25.5%、47.1%でした。全生存率に関しても、それぞれ74.2%、52.7%、26.3%と層別化が可能でした。

 CoBRAスコアを用いた評価により、臍帯血移植でのNRMリスクを客観的に把握できるようになります。CoBRAスコアが高い場合、前処置強度やGVHD予防法を変更するなどの工夫により、NRM低下に寄与するものと期待されます。

 この成果は、米国科学雑誌のBlood Advancesに掲載されました。

発表雑誌

雑誌名:Blood Advances

論文タイトル:Development of an umbilical cord blood transplantation-specific non-relapse mortality risk assessment score.

著者:Okada Y, Usui Y, Hayashi H, Nishikubo M, Toubai T, Uchida N, Tanaka M, Onizuka M, Takahashi S, Doki N, Uehara Y, Maruyama Y, Ishiwata K, Kawakita T, Sawa M, Eto T, Ishimaru F, Kato K, Fukuda T, Atsuta Y, Kanda J, Yakushijin K, Nakasone H.

DOI番号:10.1182/bloodadvances.2023011837

論文掲載先