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[医学部]家族性大動脈瘤・解離の発症素因を特定―オミクスとデータ駆動型研究〈基礎〉―

研究情報

概要

 マルチオミクスとは、生体分子を網羅的に解析する研究法(オミクス)を複数組み合わせる解析手法です。この手法は近年注目されているデータ駆動型研究(注)を行う上で重要な技術と言えます。本研究法により、従来の仮説駆動型研究では見つけられなかった変化を捉えることが可能になります。

 臨床薬理学の冨田翔大客員研究員(群馬大学医学部3年生)、相澤健一准教授らの研究チームは遺伝子発現解析(トランスクリプトミクス)と代謝物解析(メタボロミクス)を組み合わせたマルチオミクスによるデータ駆動型研究法を駆使し、血管平滑筋特異的ミオシン遺伝子(Myh11)の変異がどのように大動脈瘤・解離を起こしやすくするのか、すなわち発症の素因を明らかにしました。今回の研究により、大動脈の収縮に必要なカルシウムイオンの取り込みに異常が起きていることが見出されました。

 本研究は家族性大動脈瘤・解離の家系におけるゲノミクスからトランスクリプトミクス、メタボロミクスというマルチオミクス解析の一連の流れを世界に先駆けて実証しました(図)。

 マルチオミクス解析を駆使したデータ駆動型研究は家族性大動脈瘤・解離以外の様々な疾患の原因究明に応用可能です。研究チームは、他科との共同研究により腎障害や脳症等の病因究明にも取り組んでいます。

(注)データ駆動型研究(Data-Driven Research)は、データを中心にして行われる研究手法やアプローチを示します。従来の仮説検証型研究とは異なり、データからパターンや関係性を見つけ出し、その結果に基づいて新たな仮説や洞察を発見します。

図. ゲノムミクスを用いて遺伝子変異を特定し、マウスモデルを確立しました。さらに、トランスクリプトミクスにより膜輸送タンパクの発現低下を明らかにし、メタボロミクスによりADPリボースの合成が抑制されていることを特定しました。

論文名、著者名など

論文タイトル: Multi-Omics of Familial Thoracic Aortic Aneurysm and Dissection: Calcium Transport Impairment Predisposes Aortas to Dissection

著者: Shota Tomida, Tamaki Ishima, Daigo Sawaki, Yasushi Imai, Ryozo Nagai and Kenichi Aizawa* (*責任著者)

掲載誌:International Journal of Molecular Sciences (Impact factor 5.6)
https://www.mdpi.com/1422-0067/24/20/15213