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[医学研究科]高タンパク食による肝臓の尿素回路の誘導メカニズムを発見
研究情報
概要
肝臓でアンモニアから尿素を生成する尿素サイクル(オルニチン回路)がハンス・クレブスらによって発見されたのは1932年で、同じくクレブスによるTCAサイクルの発見(1937年) より前ですが、これまでその制御機構はあまり知られていませんでした。
尿素サイクルはCPS1(carbamoyl-phosphate synthetase 1)、OTC(ornithine transcarbamylase)、ASS1(argininosuccinate synthetase)、ASL(argininosuccinate lyase)、ARG1(arginase 1)、の5つの酵素によって構成され、これら5つの酵素はいずれも高タンパク食負荷によって発現が誘導されることは1960年代から知られていましたが、このうち、転写調節機構が知られていたのはOTCだけでした。OTCについては転写因子KLF15による調節機構が2012年に報告されていました。
内科学講座内分泌代謝学部門のサミア・カルクートゥリー(特別研究学生)、矢作直也教授らは、今回、尿素サイクルの5つの酵素のうちの1つ、ASS1の転写制御因子として転写因子FoxO1/3aを同定しました。同研究グループでは以前に、KLF15の上流の転写制御因子として、FoxO1/3aを同定したことから(iScience. 2021)、尿素サイクルの各酵素の発現調節へのFoxO1/3aの関与を調べたところ、FoxO1/3aがKLF15を介さず直接にASS1遺伝子のエンハンサーに結合して発現を制御していることを見出しました。
具体的には、野生型およびKLF15ノックアウトマウス肝臓においてFoxO1/3aをノックダウンした状態で代謝物のメタボローム解析を行ったところ、アルギニンが減少してオルニチンが増加することが見出され、そこからASS1の発現調節メカニズムを解明することに成功しました。
本研究成果はBiochemical and Biophysical Research Communicationsのオンライン版に2024年8月27日付で公開されました。
論文名
雑誌名:FoxO transcription factors regulate urea cycle through Ass1.
Samia Karkoutly, Yoshinori Takeuchi, Zahra Mehrazad Saber, Chen Ye, Duhan Tao, Yuichi Aita, Yuki Murayama, Akito Shikama, Yukari Masuda, Yoshihiko Izumida, Takashi Matsuzaka, Yasushi Kawakami, Hitoshi Shimano, Naoya Yahagi.
DOI : https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2024.150594
掲載先:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006291X24011306
本発表資料のお問い合わせ先
自治医科大学 医学部 内科学講座 内分泌代謝学部門
教授 矢作 直也(やはぎ なおや)
TEL: 0285-58-7355, FAX: 0285-44-8143
E-mail: yahagi.naoya@jichi.ac.jp
https://www.jichi.ac.jp/endc/
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