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[医学部]国際高血圧学会からの提言―新規血圧測定機器の可能性と検証の必要性―について

研究情報

概要

現在、血圧測定装置の多くは上腕カフ型のオシロメトリック法を用いたもので、安静下や限られた状況下での測定により、診断や評価が行われています。しかし近年の技術革新に伴い、新しいセンサーやAIなどを駆使した、次世代型の血圧測定方法や装置の開発が進みつつあります。そこで、国際高血圧学会(International Society of Hypertension)の専門家委員会において、血圧測定に関する革新的な技術開発の現状を調査分析し、課題などを整理して、自治医科大学循環器内科 苅尾七臣教授が主導して学会としての提言論文にまとめました。この論文は学会の機関誌であるJournal of Hypertension誌に掲載されました(2024年9月9日オンライン公開)。

委員会は世界11か国の専門家で構成され、最新技術に基づく血圧計及び高血圧におけるイノベーションの正確性、評価検証、臨床的有用性に関するエビデンスを検討しました。論文では、新規の血圧測定装置、例えばカフレス(カフを用いない)手首型やスマートフォンを用いたセンサーなどは、将来的には高血圧の診断及び管理において重要な役割を果たす可能性があることが示されています。使用性の高いウェアラブルデバイスで、より継続的に、多くの状況下で血圧測定されることで、患者さんごとの血圧特性を正確に把握し、より適切な治療につなげられる可能性が高まります。医療者とデータを共有できるアプリや、AIなど他のデジタル技術の活用は、臨床現場で活かされたり、より精緻な血圧研究に発展したりすることが期待されます。
一方、カフを用いた血圧測定装置の精度検証には確立された基準が設けられていますが、現状の基準はカフレスの血圧測定装置には適していません。一部のカフレス血圧計では当該国の規制当局から認可を受けた製品もありますが、測定精度にはまだ課題があります。したがって、学会としては当面、正確さが求められる高血圧の診断や評価に、これらの新しい技術による血圧測定装置の使用は推奨しないこと、また今後、産学が連携して、より厳密な検証方法、規格の設定などの検討が必要であることを提言しています。

本論文の内容は、世界高血圧連盟(World Hypertension League)、欧州高血圧学会(European Society of Hypertension)、アジア太平洋高血圧学会(Asian Pacific Society of Hypertension)、及び中南米高血圧学会(Latin American Society of Hypertension)により承認され、共同の提言論文としています。

論文名、著者名など

論文タイトル: Innovations in blood pressure measurement and reporting technology: International Society of Hypertension position paper endorsed by the World Hypertension League, European Society of Hypertension, Asian Pacific Society of Hypertension, and Latin American Society of Hypertension

著者:Kazuomi Kario, Bryan Williams, Naoko Tomitani, Richard J McManus, Aletta E Schutte, Alberto Avolio, Daichi Shimbo, Ji-Guang Wang, Nadia A Khan, Dean S Picone,j, Isabella Tan, Peter H Charlton, Michihiro Satoh, Keneilwe Nkgola Mmopi, Jose P Lopez-Lopez, Tomas L Bothe, Elisabetta Bianchini, Buna Bhandari, Jesus Lopez-Revera, Fadi J Charchar, Maciej Tomaszewski, and George Stergiou

掲載誌:Journal of Hypertension (Impact factor 4.776)

国際高血圧学会(プレスリリース):