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[医学部]ベンダムスチンを用いた成人T細胞白血病に対する新たな治療戦略の開発
研究情報
概要
現成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)のT細胞への感染によって発症します。HTLV-1キャリアは世界中に推定500万〜2000万人おり、患者は亜熱帯アフリカ、カリブ海諸国、中東、南米に加え、日本では西南日本に多く観察されます。
ATLには、サイクロフォスファミド等のDNAアルキル化剤を含む多剤併用化学療法に骨髄移植を組み合わせた治療が、治癒の期待できる唯一の治療法とされています。しかしながら、移植非適応例や初発治療後の再発/難治性ATLはアンメットニーズとなっており、その予後は極めて不良なため、新規治療法が求められています。一方、悪性リンパ腫に対する臨床試験において、同じDNAアルキル化剤であるベンダムスチン(BDM)には、単剤でサイクロフォスファミドを含む4剤併用と同等の治療効果が得られる上に、脱毛や末梢神経障害など副作用も軽微なことが報告されています。しかしながら、ATLに対する有効性は未検討でした。
自治医科大学・分子病態治療研究センター・領域融合治療研究部の長田直希助教・菊池次郎准教授・仲宗根秀樹教授・古川雄祐客員教授らは、宮崎大学・森下和広客員教授らとの共同研究により、BDMがATLの有効な治療薬になる可能性を明らかにしました。
本研究では、ATL細胞株を用いてBDMの抗腫瘍効果を in vitro及びマウスモデルを用いたin vivoで明らかにしました。さらに、最近、再発/難治性ATLに対して認可されたヒストン脱アセチル化酵素阻害剤やEZH1/2阻害剤との相加作用も明らかにしました。BDMを用いた新たな治療法が、ATL患者の予後だけでなくQOL改善にも有効となる可能性が示唆されます。今後、ATLに対する適用拡大が期待されます。
この研究成果は米国科学雑誌「PLOS ONE」に2024年9月30日付で公開されました。
論文名と掲載先
Naoki Osada, Jiro Kikuchi, Yosuke Okada, Sae Matsuoka, Kazuhiro Morishita, HidekiNakasone, and Yusuke Furukawa.
Cytotoxicity of bendamustine, alone and in combination with novel agents, toward adult T-cell leukemia cells.
PLOS ONE, doi: 10.1371/journal.pone.0309533