医学部 School of Medicine

医学部

School of Medicine

病態生化学部門

Medical Biochemistry

講座名

医学部

生化学講座 病態生化学部門

医学研究科

修士課程 医科学 先端医科学 構造機能生命科学
博士課程 人間生物学系 生体分子医学 細胞生化学

講座・部門紹介

病態生化学とは生命現象を維持するために必要な生体反応を理解し、病気が起こるメカニズムを理解する分野です。個体に生じる複雑な症状・病態を分析し、それを統合する力を身につけることで、目の前の患者さんに最適な治療が提供できると考えています。私達の講座では、医学部教育として、主に1年生と2年生の生化学と病態生化学を担当しています。講義と実習を通じて、生命現象の破綻による疾患の発症機序を基礎医学の面から身に付け、基礎医学から臨床医学への架け橋を担うことを目標としています。大学院教育では、血液学、免疫、アレルギー疾患の病態を解明するための研究活動を中心に、研究者の育成に取り組んでいます。講座内の研究活動では、様々なバックグラウンドをもつスタッフが、学内外の研究者と共に進めています。研究室は、常にオープンな雰囲気を心がけており、本領域に意欲のある学生や研究者の参加を歓迎しています。

スタッフ

教授 大森 司
教授(兼)小宮根 真弓
准教授 早川 盛禎
准教授 柏倉 裕志
助教 Nemekhbayar Baatartsogt

研究紹介

私達の研究テーマは2本の柱からなります。1つは血液学、特に血栓止血学を中心とした病態解析、新規治療の開発です。もう一つは難治性疾患に対する遺伝子治療・ゲノム編集治療の開発です。興味があれば、是非研究室のオリジナルホームページをご覧ください。

血栓止血の病態解析と新規治療法の開発

 私たちの体では、血管に傷がつくと、まず血小板が集まって傷口を塞ぐ「一次止血」が起こり、続いて凝固因子の働きによりフィブリンが形成され、止血を強固にする「二次止血」へと進行します。この精緻に制御された止血システムにより、日常生活の中で小さな血管損傷が生じても、速やかに出血を防ぐことができています。

 しかし、この止血システムのバランスが崩れると、二つの大きな病態に至ります。 一つは、止血が不十分で出血を繰り返す”出血性疾患”、もう一つは、逆に過剰な止血反応により血管内に血の塊(血栓)ができる”血栓性疾患(血栓症)”です。

 出血性疾患の代表が血友病です。血友病は、第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)の欠損や機能不全により止血が進まず、特に関節内での反復出血を引き起こし、関節機能の低下や生活の質(QOL)の著しい悪化をもたらします。

 一方、血栓症は、動脈や静脈に不要な血栓が形成されることで発症し、脳梗塞、心筋梗塞、肺血栓塞栓症など、命に関わる重大な疾患を引き起こします。血小板の過剰な活性化や凝固系の異常な活性化がその背景にあり、止血システムの微妙なバランスがいかに重要であるかがわかります。

 私たちの研究室では、こうした出血性疾患と血栓性疾患の両側面に着目し、血小板機能、凝固因子の活性調節、内因系・外因系のクロストーク、血管内皮細胞との相互作用など、止血・血栓形成の分子機構を基礎医学の視点から包括的に解析しています。また、これらの理解に基づき、より早期で正確な診断法の開発や次世代治療法の開発を目指しています。

遺伝子治療・ゲノム編集による新しい医療の創出

 私たちの体は、細胞の中にある「遺伝子」という設計図に基づいて作られています。この遺伝子のすべての情報を含むものを「ゲノム」と呼びます。ゲノムに記された情報により、筋肉や臓器が形作られ、私たちの生命活動が絶え間なく支えられています。こうした遺伝子やゲノムの力を直接医療に応用し、疾患の根本的な治療を目指すのが、遺伝子治療とゲノム編集です。

 遺伝子治療は、主にウイルス由来の「ベクター」を利用して、体内に治療用遺伝子を運び、欠損または異常のあるタンパク質の機能を補う方法です。中でもアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた治療法は、比較的安全性が高く、長期間の効果が期待できるため、近年注目されています。血友病に対するAAVベクターを用いた遺伝子治療は、すでに欧米を中心に臨床応用が始まっており、私たちも国産の血友病遺伝子治療薬の開発に向けて積極的に研究を進めています。将来的には、より多くの患者さんに安全かつ有効な治療オプションを届けることを目指しています。

 一方、ゲノム編集技術は、特定の遺伝子を直接書き換えることで、疾患の根本原因にアプローチできる画期的な技術です。代表的なゲノム編集ツールであるCRISPR-Cas9システムにより、狙った遺伝子領域を精密に切断・修復することが可能となり、従来治療が困難だった疾患への新たなアプローチが可能になりました。実際に、欧米では肝臓で異常なトランスサイレチンを産生するトランスサイレチンアミロイドーシスや、異常なヘモグロビンにより赤血球が変形する鎌状赤血球症に対するゲノム編集治療が臨床段階に進んでいます。

 私たちの研究室では、単に遺伝子を破壊するゲノム編集だけでなく、機能的な遺伝子を挿入したり、患者さん自身のもつ遺伝子変異を特異的に修復する、より精密で革新的なゲノム編集技術の開発にも挑戦しています。特に、患者さん一人ひとりの遺伝子異常に応じた、個別化ゲノム編集医療の実現を目標としています。これにより、従来の治療では対応できなかった希少疾患や個別の遺伝子変異にも対応できる、新たな医療の地平を切り拓いていきます。

最近の代表的な論文

  • Togashi, T., et al. ATVB: 44(12): 2616-2627, 2024.
  • Hiramoto, T., et al. Blood Adv: 7: 7017-7027, 2023.
  • Hino, T., et al. Cell: 86; 4920-4935, 2023.
  • Kashiwakura, et al. Mol Ther Methods Clin Dev: 30; 502-514, 2023.
  • Hiramoto, T., et al. Commun Med3: 56, 2023.

教育担当分野

  • 生化学講義・実習
  • 病態生化学講義
  • 血液学系統講義、総括講義
  • セミナー

関連組織

  • 大学院医学研究科 博士課程 人間生物系 生体分子医学細胞生化学
  • 大学位医学研究科 修士課程 医科学 先端医科学 構造機能生命科学
  • 遺伝子治療研究センター

連絡先

生化学講座 病態生化学部門
Tel 0285-58-7324(ダイヤルイン)
Fax 0285-44-2158
biochem2@jichi.ac.jp

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