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講師陣

講師陣

一流の“講師陣”

高度に専門化した医療からも、総合医は期待されています。
地域医療は専門医療の出発点であり、還元先でもあるからです。

寺井千尋【さいたま医療センター 総合医学1 教授、内科系診療部リウマチ膠原病科 科長】

寺井千尋

1978年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、虎の門病院分院で研修後、1986年から東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターに勤務。その後、米国のスクリプス研究所やUCSD、東京女子医科大学を経て、2008年より現職。

【研究内容】
関節リウマチや痛風などのリウマチ性疾患や膠原病の治療を専門とし、啓発活動にも注力

(平成29年4月取材)

医学の進歩を体験し実感した幸運
そして現代に不可欠な病診連携


リウマチはかつて、患者さんの数が多いにもかかわらず治せない疾患でした。医師は、診療室で患者さんの痛みの訴えを聴くばかり。治療の方法がなく、私が医学部を卒業した三十数年前は、研修医の多くが避けて通りたがる病気のひとつだったのです。現在、さいたま医療センターでリウマチを専門とする私も、学生時代からこの難治療疾患に興味を持って取り組んでいたわけではありません。初期研修終了後に所属した腎臓グループで免疫と関連した腎炎を扱う中で、全身諸臓器に症状が起こる膠原病を診るようになり、同様に体のあちこち痛みが起こるリウマチや痛風も診療の対象としたのです。

リウマチ治療にかかる状況が劇的に変化するのは、1990年代以降のこと。分子生物学の進歩を背景に開発された生物学的製剤や、すでにがん治療で使われていた免疫抑制剤がリウマチ治療に効果的であることが明らかになり臨床で普及。より早期の関節リウマチを見つけ出すための診断基準や疾患活動性の有効な評価法が開発され、炎症を完全に抑えるまでは絶えず治療法を見直して寛解を目指す治療戦略が広く浸透したことで、今では早期であれば9割の患者さんを、痛みから解放してあげられるようになりました。「治せない」とされた病気が治せるようになる医学の進歩と、病気による痛みや不幸から人を救える医療の力を体験し実感できたことは、医師として幸運なことだと考えています。

人口当たりの医師数が全国最下位の埼玉県では、リウマチ専門医も不足しています。最新の医療設備を整えた本センターも、すべての患者さんに対応できるキャパシティはなく、周辺地域の病院や開業医などとの連携は不可欠です。地元に根ざした医療機関に、的確な早期発見と退院後のケアを担ってもらうため、地域医療の中核病院として、リウマチに関する正しい知識や最新の医学情報の発信と共有にも力を注いでいます。こうした状況は日本全国で共通しますから、卒業後に出身都道府県で地域医療に当たる学生にも実習や研修を通して、いわゆる病診連携の重要性を実例をもって伝えています。

長田太助【内科学講座 主任教授・腎臓内科学部門 教授、附属病院 腎臓センター内科部門 科長】

長田太助

1992年、東京大学医学部卒業。研修後、2000年、東京大学大学院医学系研究科内科学専攻修了(医学博士)。米国留学、文部科学省高等教育局医学教育課専門官、自治医科大学内科学講座主任教授、附属病院副院長などを経て、現職。

【研究内容】
腎臓・高血圧学。附属病院での臨床と並行し、血管作動物質と慢性腎臓病との関連を研究

(平成29年4月取材)

正確な診断・治療だけがゴールではない
最新の医療に基づく情報発信も医師の使命


腎臓・高血圧学を専門とし、内科学講座腎臓内科学部門で教育研究に取り組みながら、大学附属病院の腎臓センターで患者さんを診療しています。学生時代から臨床医を目指すかたわら、基礎の研究室にも足繁く通い、分子生物学的な基礎研究を身近にしてきました。自治医科大学で取り組んでいる研究は、臨床の疑問に答えることを目的としています。ですから病院での患者さんへの診療、研究者や大学院生との研究、そして医学生への講義や病棟での教育は密接に連携しあっていることになります。

腎臓は、年齢を重ねるにしたがい機能が低下する臓器です。そのため高齢化が進む現代では、腎臓内科への社会的ニーズが今後も高まることは必然です。その半面、腎臓機能の低下が老化による年相応の衰えか、病気を原因としているかを的確に判断できるようになるには、臨床での経験を重ね、正しく識別する力を磨くことが求められます。慢性化した腎臓病に画期的に効く治療薬は現在のところ見つかっていないため、治療も大切ですが、それより予防がもっと大切であることを、学生には繰り返し伝えています。特に自治医科大学の学生は、卒業後に地域医療に従事するため、例えば市民講座のような地域社会に向けた啓発教育の機会を設け、情報発信していくことの大切さも伝えています。

腎臓は血管の塊ですから、腎臓だけを見ていては予防にならず、全身の血管の健康を管理することが大切です。高血圧や高血糖が腎臓病を招くため、血圧や血糖を最適に保つことが第一の予防になります。生活習慣病との関連も強く、日常生活の管理が必要なため医師以外の医療職との連携も重要です。地域の健康を支える総合医であれば、なおさらチームで医療を支える意識が求められます。腎臓病学に限らず、内科学は日進月歩の学問分野です。へき地に勤務しても海外の最新情報にもアンテナを張り、しっかりと世界の動向をキャッチアップするためにも、研究に向けた関心と意欲は持ち続けて欲しいと考えます。

村松慎一【地域医療学センター 東洋医学部門 特命教授】

村松慎一

1983年、自治医科大学卒業。群馬県で地域医療に従事した後、自治医科大学大学院で神経難病の研究を行う。再び群馬県でのへき地医療を経て米国で遺伝子治療を研究。帰国後、国内初、世界初の遺伝子治療を実施。2014年より現職。東京大学医科学研究所の特任教授を兼任。

【研究内容】
神経難病に対する遺伝子治療の開発
神経内科の外来では東洋医学も活用

(平成29年4月取材)

教育・研究、診療、企業経営の3役を担い
遺伝子治療の“当たり前”を目指す


パーキンソン病やアルツハイマー病など、脳神経の病気に対する遺伝子治療法を開発しています。脳神経の病気はいずれも治療が難しいのですが、2007年には国内で初めてパーキンソン病の遺伝子治療を行いました。また、2010年には神経伝達物質を合成するAADCという酵素が生まれつき働かなかった4歳児への遺伝子治療を台湾の大学から依頼され、世界で初めて実施。寝たきりで10歳まで生きられないと言われていた子どもが、歩けるようになりました。現在、国内では神経の病気に対して遺伝子治療を行える病院は希少ですが、本学附属病院では着実に治療症例数を増やしています。

私たちが開発した遺伝子治療は、AAVベクターという無害なウイルスを改変した“輸送係”に、治療に必要な遺伝子を患部まで運ばせる点を特徴とします。AAVベクターよる遺伝子治療は、一度の治療で長期間効果が持続します。サルの実験では、導入した遺伝子は15年間以上機能していて、この記録は今後さらに伸びていくでしょう。患者さんの苦痛を取り除くばかりか、高齢化により高騰する医療費を抑制するという点でも効果が期待できます。

AAVベクターには、血液から脳に入る機能も付加しているため、脳の病気に対して従来のように頭の骨に穴を開ける手術をせず、血管から注射するだけで治療が行える方法も開発しています。この治療法を広めるためにAAVベクターの量産を手がけるベンチャー企業を設立しました。現在、大学で教育と研究を行う教授、附属病院で診療する神経内科専門医、ベンチャー企業で臨床開発を行う取締役という3足のわらじを履いていることになります。

神経内科の診療では漢方薬も処方しています。遺伝子治療という先進医療と東洋医学の併用は、私にとっては自然なこと。目的は治療ですから、患者さんが良くなるのであれば手段は選びません。漢方に比べれば歴史の浅い遺伝子治療を、当たり前の技術とすることが現在の使命と考えています。

大森司【生化学講座病態生化学部門 教授】

大森司

1994年、自治医科大学卒業。山梨県南部町や身延町の病院、診療所に勤務した後、2004年に自治医科大学分子病態治療研究センター分子病態研究部助教となる。同講師、自治医科大学生化学講座病態生化学部門准教授を経て、2017年に教授に就任。

【研究内容】
血液学。血栓止血分野を専門とし、血友病の治療法開発に取り組む。血液科の外来診療も担当

(平成29年4月取材)

問題提起から解決、社会との関わり
地域医療で得た現在の研究姿勢


地域医療と血液学、特に私の専門とする血栓止血学には共通点があります。どちらも特定の臓器や組織にとどまらず全身に関わる、という点です。地域医療に求められる総合診療は、全身のさまざまな問題に対応します。同様に、血液は全身を巡りますから、出血や血栓は体のあらゆるところに生じる可能性があり、特定の臓器や組織を超えた判断力・考察力が必要です。

初期研修中に血液学に興味を持った私は、地域医療に従事するかたわら研究を進め、義務年限が明けたのを機に研究に本格的に取り組みました。山梨県南部で力を注いだ地域医療は、義務年限の大部分を同一の医療圏で勤務したことから、地域住民の成長や老いに深く関わるという有意義な経験となりました。地域医療への関心は卒業時を増すほどでしたが、研究を本格化できるのはこの時しかないと判断し、自治医科大学に戻る決意をしたのです。以来、遺伝的に血液凝固因子が欠損しているため止血できない血友病を治療する診断法や治療法の開発に取り組んでいます。

現在の血友病治療は、足りない凝固因子のたんぱく質を補充しますが、乳幼児期から生涯にわたり週に2、3回の注射を受けなければなりません。治療による患者さんの苦痛は想像を絶し、またこれにかかる医療費は膨大な額に達します。私たちが研究を進めている国産の遺伝子治療法が実用化されれば、患者さんの通院回数を減らせるばかりか、成人するまでに治療を受ける必要もなくすことができます。患者さんのQOLを向上させることはもちろん、高齢化が進む日本の医療費の拡大抑制にも有効な治療と考えます。

地域医療では、病気の治療だけでなく、背景にある家庭や社会の問題も含めて人の健康を支える責任を負います。そこで経験した、問題を抽出・提起し、複雑な要因を整理して解決に導くという流れは研究活動にも通じます。患者さんの苦しみをわがこととして考えつつ、社会との関わりも視野に収めた現在の研究姿勢は、地域医療に関わった経験に基づいているのです。