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自治医科大学将来ビジョン2060(概要)
~医療の谷間に灯をともす~

Ⅰ.ビジョン策定の背景と目的

 自治医科大学は、「医療に恵まれない地域の医療を確保し、地域住民の保健・福祉の増進を図るため、医の倫理に徹し、かつ高度な臨床的実力を有し、更に進んで地域の医療・福祉に貢献する気概ある医師を養成するとともに、併せて、医学の進歩を図りひろく人類の福祉にも貢献する」を建学の精神として、1972年に全国の都道府県の共同により創設された。以来、全国から募った学生を 「地域医療を志向する高い意識を持った医療人」 として育成し、これまで5,000人近い医師と4,000人余の看護師・保健師・助産師を輩出してきた。顧みれば自治医科大学は、わが国が未曽有の高度経済成長を経て安定成長へと移行する時期に開学し、幾たびもの社会環境の変化に適応しながら、その使命を果たしてきた。
自治医科大学は2022年に創立50周年を迎え、改めて次の50年に想いを馳せ、教育、研究、診療、社会貢献を推進することとした。そこで、人の健康と地球環境の一体化(プラネタリーヘルス)、人口問題、社会格差の拡大などの大きな変動を強く意識し、長期の目標として「変化し続ける未来の地球、社会や地域*を見据え、医療と科学技術の進歩**を担い、多様な場や人をつなぎ、広く地域の発展に貢献できる***医療人を養成する」を掲げることとした。これにより2060年****までの地域社会の変化を見据えて組織体制を強化し、自治医科大学の使命を継続して果たすものである。

*「変化し続ける未来の地球、社会や地域」とは、地球における気候変動、エネルギー問題、人口動態変化、食糧難、貧困や難民問題などとともに国際紛争や大規模災害および大規模感染症などによる地政学、政治・経済活動や社会保障制度を含む社会システムの変化が影響を及ぼすプラネタリーヘルスの実現を念頭に、先進国における少子高齢化、高齢化率の高止まり、生産年齢人口数の減少による社会保険負担の増加(働き方改革、女性活躍、高齢者活用、年金の若者負担率1.4人で1人)と効率的運用、外国人人口の増加、地域過疎、疾病構造の変化による地域医療構造の変化などを示す。
**「医療と科学技術の進歩」とは、知識基盤社会における基礎研究や臨床研究での気づきや発見などの知識を創造し、集積し、つなげる社会や手段としてのSociety 5.0、AI、データサイエンス、IoT、遠隔医療、医療工学、先端医療・研究、感染症対策、大規模災害対策など人に役立つ医療や技術(ヘルスケアサイエンス、予防医学を含む)の活用を示す。
***「多様な場や人をつなぎ、広く地域の発展に貢献できる」とは、医師としての自覚、ELSI、医療経済、タスクコミュニケーション、多職種連携、医療安全、地域包括ケア、地域医療構想、病院統廃合(再編)、医療行政、地域創生、社会還元、地域活性化(病院や医療を中心とした社会インフラを含む)などを示し、これまで本学卒業生が僻地医療の実践において醸成してきた、医療資源や財政の効率的活用、かかりつけ医の制度、地方におけるICT活用などの合理的精神が、将来さまざまに変化する日本の医療を牽引するフロンティアとなることを含む。
****「2060年」とは、わが国が高度経済成長期に入ってから100年後。1961年に国民皆保険と国民皆年金がスタートし、団塊の世代と団塊の世代ジュニアの後期高齢化という2度にわたる大きな人口動態の変化を経て、大学進学世代の縮小をはじめとして総人口が9000万人を下回り、本格的な肩車社会が到来する。その一方で、情報やプログラミングの必修科目を履修した高校生が50歳代・40歳代となり、進歩する科学技術を活用しながら社会をけん引する時代でもある。

Ⅱ.将来ビジョン

 自治医科大学において、Iに掲げる目的を達成するための柱として、大学および大学院、附属病院・附属さいたま医療センター、地域医療学センターの3つを位置づけ、それぞれの連携の下、未来に向けた持続可能な地域医療への貢献に向け、人材育成、地域医療、社会貢献を推進する。


Ⅲ.全体ビジョン

  • 創立より本学が積み重ねてきた知見とネットワークを活かし、将来変化する地域社会において直面する様々な課題を自らの力で解決することができる学生を確保し、育成する。【教育】
  • 学生・教職員・卒業生・レジデントが誇りを持ち、自律的に取り組む学修・職場環境を整備するとともに、地域で活躍する卒業生への支援体制を強化する。【卒業生支援】
  • 附属病院および附属さいたま医療センターにおける高度・先進的な医療を引き続き推進し、地域における持続可能な医療提供体制に貢献する人材育成と医療の質向上を図る。【地域医療の実践】
  • 地域医療構想の推進に資するため、全国レベルでの先進的な地域医療(医療・保健・福祉)研究・モデルの提言・推進・支援(医療圏モデル・遠隔医療・ヘルスケア等)を行う。【地域医療研究・地域貢献】
  • 基礎研究、トランスレーショナル研究、臨床研究などの継続により、新たな知を創出し、地域や社会の課題を解決し、地域医療や社会への還元を推進する。【先端研究・社会貢献】
  • 本学が目指す全体像を俯瞰共有し、大学・病院組織の部署連携・組織再編を推進することにより、プロジェクト型の組織運用を促進し、効率的経営を念頭に置きながら、今後の劇的な社会の変化に対応可能な組織運営を実現する。【組織連携・効果的運用】