診療科のご案内

2024年 6月 現在

診療科紹介

診療体制

 形成外科は文献的には紀元前の造鼻術にまでさかのぼり、外科治療としては最も古い分野です。 近代形成外科は第一次大戦時のH.Gilliesによる戦傷者の顔面欠損の再建治療により大きく発展しました。 現在では、形成外科とは先天性及び後天性の体表の形態・色調の変化、またこれに伴う機能障害の正常化を行うものと定義され、具体的には体表外傷(特に顔面や手などの開放性損傷、組織欠損など)、皮膚・皮下の腫瘍、先天性の体表形態異常、美容医療があります。
 顔面外傷、切断手指、四肢壊疽、急性軟部組織感染症などの急患も随時受け入れております。


治療方針

 形成外科は頭から足先まで身体体表の様々な部位を扱い、またその対象疾患も外傷、腫瘍、瘢痕、先天異常など多岐にわたるのが特徴で、機能の整容のバランスを重視した治療を行います。 外傷や壊疽の治療では組織移植の技術を用いて極力温存に努めております。 各種再建など他科との共同手術では綿密な連携により治療計画を立てます。


得意分野

 形成外科全般に対応いたしますが、特に力を入れている分野を示します。(診療疾患の項を参照)
《新鮮外傷》
 顔面外傷:顔面外傷・骨折は整容的・機能的な両立をしながら、軟部組織損傷を伴う骨折、多発骨折などの重度顔面外傷にも対処します。陳旧性顔面骨折の変形修正手術も対応します。
 切断指などの重度手外傷: 切断指の顕微鏡下再接合術、手指のなど高度な外傷にも対応します。挫滅指や指尖部切断、多数指切断などの難しい状況においても可能な限りの接合を行います。高度な軟部組織損傷を伴う場合や、接合できなかった場合も、マイクロサージャリーによる皮弁移植、足趾移植などにより極力手指再建を行う体制を整えております。
 その他:重度の皮膚軟部損傷・皮膚欠損、熱傷、凍傷なども迅速に対応します。

《下肢救済治療》
 糖尿病や重症下肢虚血(CLI1)による足壊疽は近年増加傾向にあり、その温存は健康寿命の維持に重要です。当センターでは、血管外科による下肢動脈バイパス手術、循環器内科による血管内治療(Endovascular therapy: EVT)の血行再建担当医師と形成外科で下肢救済チームを形成し、定例カンファランスを行い総合的な下肢救済治療に努めています。バイパス手術と血管内治療のそれぞれの専門医のディスカッションにより最適な血行再建法を選択します。組織欠損の大きい場合は血管吻合を伴う遊離皮弁移植などの再建技術を駆使した救済治療を積極的に実施し、極力患肢温存を行います。さらなる難治例では外科治療とともにマゴット療法やLDLアフェレーシス、連携施設での高圧酸素療法(Hyper baric oxygen therapy: HBOT)などの補助療法を組み合わせた治療を実施し救済率向上に努めています。
 またリハビリテーション科、下肢装具技師などともに集学的治療を行い、退院後も近隣のリハビリテーション施設と連携し歩行機能回復に努めます。

《創傷治療全般》
 救急部、集中治療部と連携し、壊死性重症軟部組織感染症、熱傷の治療を行います。外傷後・手術創トラブルによる慢性創傷、褥瘡の外科治療も積極的に行います。褥瘡に関しては、多職種による褥瘡管理チームにより予防的視点を加えた総合的治療を行います。

《リンパ浮腫》
 リンパ浮腫療法士とともに複合的治療を行います。手術治療に関しては、近赤外(ICG)観察システム、造影超音波画像診断装置を用いた術前の拡張リンパ管の同定と高倍率手術用顕微鏡を用いてより精度の高いリンパ管静脈吻合(LVA)を行います。

《眼瞼下垂症》
 眼瞼下垂は高齢化とともに増加しております。眼瞼下垂症や眼瞼外・内反症などは審美的結果が要求されますが、美容外科的手技を取り入れて機能と整容を両立した手術を実施しております。

《体表腫瘍》
 体表腫瘍の摘出は基本的な手術ですが、縫合創に閉鎖療法を適応することで瘢痕を少なく早く治癒できることがわれわれの研究で明らかになっています。 適応可能な場合は縫合創においても閉鎖療法を実施し、可能な限りのきれいな仕上がりをめざしています。 皮膚腫瘍の外科治療においては、特に顔面などの特殊部位では確実な切除と整容的な再建の高度なバランスが必要となり、形成外科的手技が要求される治療となります。 またリンパ節の評価にはラジオアイソトープ(RI)法と近赤外線観察システムを用いたICG色素法の両者を用いたセンチネルリンパ節生検を導入し、より侵襲の少ない治療を行います。

《各種の組織欠損の再建手術》
 外傷や手術により失われた組織の再建手術を行います。乳房再建は再建用インプラントが保険適応になって以来、増加傾向にあります。 当科は乳房再建インプラント実施施設になっており、乳腺外科と連携し自家組織再建とインプラント再建を欠損の状況により適切に選択し、乳房再建治療を行います。 外傷で生じた手指、顔面組織などの欠損の再建手術、また各種悪性腫瘍切除後の再建も口腔外科、耳鼻咽喉科・頭頚部外科、整形外科、消化器外科等と連携し行います。 腹壁瘢痕ヘルニアは人工物を極力使わない自家組織での再建手術を行います。

《瘢痕・ケロイド》
 様々な形成外科手技を用いて外傷や腫瘍切除後の瘢痕・瘢痕拘縮の形成術を行います。 ケロイド治療は再発しやすいものですが、放射線治療部門と連携してケロイド切除に術後電子線照射を併用しケロイド再発の軽減を図ります。


スタッフ紹介 (2023年4月1日現在)

山本 直人

山本 直人
職名 教授
出身大学 筑波大学
資格等 博士(医学)、日本形成外科学会専門医・指導医(評議員)、同 皮膚腫瘍外科分野指導医、同 再建・マイクロサージャリー分野指導医、日本創傷外科学会専門医(評議員)、日本臨床皮膚外科学会専門医(理事)、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建用エクスパンダー・インプラント責任医師、日本美容外科学会(JSAPS)教育専門医、臨床研修指導医、臨床研修協議会プログラム責任者
得意分野 形成外科一般、創傷外科(難治性潰瘍、足壊疽の救済・再建)、再建外科、切断指再接合、マイクロサージャリー、眼瞼

桒原 征宏

桒原 征宏
職名 講師
出身大学 防衛医科大学校
資格等 博士(医学)、日本形成外科学会専門医・指導医、同 再建マイクロサージャリー分野指導医、同 皮膚腫瘍外科分野指導医、日本創傷外科学会専門医、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建用エクスパンダー・インプラント実施医師、臨床研修指導医
得意分野 形成外科一般、マイクロサージャリー、リンパ管外科

細山田 広人

細山田 広人
職名 病院助教
出身大学 防衛医科大学校
資格等 日本形成外科学会専門医、臨床研修指導医
得意分野 形成外科一般、外傷、腫瘍

平山 貴浩

平山 貴浩
職名 病院助教
出身大学 防衛医科大学校
資格等 日本形成外科学会専門医
新リンパ浮腫研修修了
日本リンパ浮腫治療学会認定リンパ浮腫療法士
日本静脈学会認定弾性ストッキングコンダクター
臨床研修指導医
得意分野 形成外科一般、外傷、難治性潰瘍、リンパ浮腫

渡邉 晶子

職名 臨床助教(シニア3)
出身大学 東海大学

石原 有佳子

職名 医師(シニア3相当)
出身大学 防衛医科大学校

亀井 譲

職名 臨床助教(シニア2)
出身大学 金沢大学

伊藤 恵祐

職名 臨床助教(シニア1)
出身大学 金沢大学

柳林 聡

職名 非常勤講師
出身大学 筑波大学
資格等 日本手外科学会専門医(代議員)、日本形成外科学会専門医・指導医、同 再建マイクロサージャリー分野指導医など
得意分野 手外科担当

一条 英里

職名 病院助教 (出向中 ウィクリニック大宮院)
出身大学 防衛医科大学校
資格等 日本形成外科学会専門医

得能 香奈

職名 病院助教(出向中 大宮中央総合病院)
出身大学 防衛医科大学校
資格等 日本形成外科学会専門医

川上 沙織

職名 臨床助教 (国内留学中 防衛医科大学校病院形成外科)
出身大学 山形大学
資格等 日本形成外科学会専門医

加藤 恵美

職名 看護師(NP教育課程修了者)

診療実績

2023年1~12月 形成外科学会疾患分類別の手術手技件数 (件)

(National Clinical Database: NCD登録診療実績データより)

疾患大分類 入院 外来 合計
外傷 174 100 274
先天異常 13 0 13
腫瘍 195 230 425
瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイド 45 26 71
難治性潰瘍 151 17 168
炎症・変性疾患 37 27 64
美容(手術) 2 0 2
その他 104 12 116
レーザー治療 0 0 0
合計 721 412 1133

施設認定

・日本形成外科学会 形成外科専門研修基幹施設
・日本オンコ・プラスティックサージャリー学会 乳房再建用エクスパンダー・インプラント実施施設


患者の皆様へ ご紹介の先生へ

 対象疾患は以下になります。顔面外傷、切断手指、四肢壊疽、急性軟部組織感染症などの緊急を要する疾患も随時受け入れておりますので、ご連絡ください。
【体表腫瘍】皮膚・皮下の良性・悪性腫瘍、母斑、母斑証、血管腫、血管奇形など
【外傷】顔面外傷・顔面骨折、手の外傷、切断指(顕微鏡下再接合術)、熱傷
【外傷後の再建】外傷性皮膚・組織欠損の再建、顔面変形の再建、手指欠損の再建
【眼瞼下垂】眼瞼下垂症、眼瞼外反・内反症
【難治性創傷・足壊疽】糖尿病性・重症下肢虚血による足壊疽の救済治療、褥瘡、慢性骨髄炎、各種の創傷トラブル
【瘢痕・ケロイド】瘢痕、瘢痕拘縮、ケロイド・肥厚性瘢痕、瘢痕性禿髪の再建
【腫瘍切除後の再建】頭頚部悪性腫瘍切除後再建、乳房再建、手指再建、外陰部再建など
【リンパ浮腫】リンパ管静脈吻合
【先天性形態異常】埋没耳などの耳介変形、口唇口蓋裂、多合指症、臍変形・臍ヘルニアなど
【その他】陳旧性顔面神経麻痺、陥入爪・爪変形、外性器の変形・包茎、陥没乳頭、乳房下垂症、腋臭症
 ※現在、レーザー治療、および美容目的の治療は行っておりません。

 外来日は適宜アップデートされます。外来担当表をご確認くださるようお願いいたします。(→外来担当表リンクへ

当科の研究テーマ・学術活動

当科で行っている研究テーマ
・重症足壊疽の血管柄付き遊離組織移植での救済治療
・高圧酸素、マゴット療法などの補助療法を組み合わせた難治性創傷の治療
・リンパ浮腫治療における超音波画像診断装置を用いた拡張リンパ管の同定
・銀ナノ粒子配合抗菌性外用剤の創傷治癒促進効果に関する研究
・縫合創への閉鎖療法適応による治癒促進効果に関する研究
・切断指再接合術後の最適なうっ血対策に関する研究

「常磐武蔵野形成外科研究会」について
 千葉県北西部、茨城県南部、埼玉県南部の常磐線、武蔵野線エリアの主要形成外科施設が連携し、地域医療への貢献と形成外科学の向上を目的として最新の形成外科に関する意見交換を行っています。

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