医学部 School of Medicine

医学部

School of Medicine

抗加齢医学研究部

Antiaging Medicine

講座名

分子病態治療研究センター 抗加齢医学研究部

医学研究科

博士課程 人間生物学系 生体分子医学 抗加齢医学

講座・部門紹介

日本では人口の高齢化が急速に進行しており、社会の仕組みもそれに対応して進化していくことが求められています。人は加齢とともに衰え、死に至ることを避けることは出来ませんが、そのプロセスを苦痛の少ないものにすることは出来るかもしれません。私たちの研究室では、基礎および臨床医学研究を通じて、この可能性を追求しています。

私たちは20年ほど前、一つの遺伝子を発見しました。生命の糸を紡ぐギリシャ神話の女神に因んで「クロトー(Klotho)」と名付けたその遺伝子の発見は、その後の研究により、さまざまな代謝過程を制御する複数の新しい内分泌系の発見へと大きく発展しました。Klothoには相同遺伝子βKlothoが存在することが分かったので、最近はKlothoをαKlothoと呼ぶこともありますが、この2つのKlotho(αKlotho、βKlotho)が3つのホルモン(FGF19、FGF21、FGF23)の受容体として機能し、リン、カルシウム、糖、脂質、胆汁酸、ビタミンDなどの代謝を正常に維持するのに必須の内分泌系を構成していることが明らかとなりました。さらに最近、これらKlotho-FGF内分泌系の適応と破綻が、慢性腎臓病、糖尿病、癌、心肥大、動脈硬化など、加齢と共に急増する疾患で普遍的に見られる病態であるばかりでなく、老化そのものを加速したり減速したりすることも分かってきました。

私たちの研究室では、これら新知見の根底にある分子機構を解明するための基礎研究と、その成果を医療の現場に還元するための臨床研究を、国内外の共同研究者と協調しながら進めています。

スタッフ

教授 黒尾 誠
准教授 黒須 洋
准教授 岩津 好隆
助教 三浦 裕

研究紹介

私たちの研究室では、以下の仮説を証明することを目指しています。

仮説1:リンが老化を加速する。

リンはカルシウムと共に骨を構成するミネラルであり、必須の栄養素です。しかし、リンは食品添加物に大量に含まれているため、現代の食生活ではリンの取り過ぎが問題となっています。FGF23は余分なリンを体外へ排泄するために必要なホルモンです。リンを摂取すると、骨からFGF23が分泌され、腎にある受容体αKlothoに作用し、尿中へのリン排泄を促します。マウスでαKlotho-FGF23内分泌系がうまく機能しないと、体にリンが貯留するだけでなく、老化が異常に加速したような症状(早老症)を発症します。リンがどのようにして老化を加速するのか、その分子機構を解明し、食品添加物に依存する現代の食生活に警鐘を鳴らす科学的根拠を示すことを目指しています。

仮説2:慢性腎臓病はリンが原因の早老症である。

慢性腎臓病とは、腎障害が3ヶ月以上継続した状態を指します。高血圧や糖尿病の合併症または老化現象の一環として起こる場合が多く、本邦では成人8人に1人が患う「国民病」です。進行すれば透析か腎移植しか治療法がありません。高齢化社会の進行と共に透析患者数は増え続け、ついに30万人を超えました。慢性腎臓病の新しい治療法の開発は、現代の医学に課せられた最優先課題の一つです。慢性腎臓病では、腎でのαKlothoの発現が減少してリン排泄能力が低下するため、代償的にFGF23が上昇しますが、病態が進行してこの代償が破綻すると、リン貯留と早老症が出現します。αKlotho-FGF23内分泌系の機能を健全に保ち、リン貯留の弊害を抑え、慢性腎臓病の進行を食い止めるためにはどうしたら良いか、臨床応用が即可能な治療法の開発を目指しています。

仮説3:Klotho-FGF内分泌系は老化関連疾患の治療標的である。

FGF19は摂食時に小腸から分泌され、肝臓のβKlothoに作用し、蛋白合成の促進など、摂食時の代謝変化を誘導するインスリンと似た働きをするホルモンです。これとは対照的に、FGF21は空腹時に肝臓から分泌され、脂肪細胞のβKlothoに作用し、脂肪分解の促進など、空腹時の代謝変化を誘導するグルカゴンと似た働きをするホルモンです。これらの内分泌系は、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの新たな治療標的として注目されています。さらに最近、FGF21には寿命を延ばす効果があることがマウスの実験で分かりました。つまり、Klotho-FGF内分泌系は、さまざまな代謝過程を制御することで老化を加速したり抑制したりするため、アンチエイジングの格好の標的となる可能性も秘めています。私たちの研究室では、Klotho-FGF内分泌系に作用する新規薬剤の開発を目指しています。

関連組織

  • 大学院医学研究科 博士課程 人間生物学系生体分子医学抗加齢医学

連絡先

分子病態治療研究センター 抗加齢医学研究部
TEL: 0285-58-7449(ダイヤルイン)
FAX: 0285-44-7322
E-mail: anti-aging@jichi.ac.jp

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