医学部 School of Medicine

医学部

School of Medicine

インタビュー

(2021年度 取材)

義務年限を通して病院に来ないための医学の役割を知る

小佐見光樹

地域医療学センター 公共衛生学部門

助教小佐見光樹 

2009年、自治医科大学卒業。兵庫県の公立富岡病院で初期研修後、同病院総合診療科、公立浜坂病院内科、朝来医療センター内科などで地域医療に従事。その間に2年間、自治医科大学附属病院総合診療診療内科に勤務する。義務年限が修了した2018年より現職

経験して初めてわかる意義とやりがい

 兵庫県での義務年限を終えた2018年に、母校に戻りました。以来、地域医療学センターの公衆衛生学部門で教育と研究に取り組みつつ、私自身も学んでいます。

 学生と接する機会は、「社会医学」という科目詳の授業です。そこに分類された科目を当部門が担当し、私も講義や実習に携わります。

 公衆衛生は、治療する医学ではありません。患者さん個人ではなく、まさに社会と向き合う医学です。そのため、病気やけがで苦しむ患者さんを救える医師になりたいと学んでいる学生には、将来の医師像としてイメージしにくい面があります。私自身が在学中に強い関心を抱いた記憶がないこともあり、授業では公衆衛生の社会的な意義を伝えつつ、将来の選択肢のーつとして紹介しています。

 日本では医師の進路として、公衆衛生はメジャーとは言えません。私が義務年限後の進路として公衆衛生を選んだ際も、周囲から不思議に思う声を投げかけられたこともありました。しかし、現在公衆衛生の分野では自治医大出身の医師が数多く活躍しています。公衆衛生では地域や社会と向き合うことが重要です。在学中から地域医療について学び、義務年限中には地域と密着して活動する本学の卒業生だからこそ、公衆衛生の重要性をより実感しているのかもしれません。公衆衛生分野に多くの卒業生が活躍しているということにも、本学の医師を養成する教育の特色がうかがえるように思います。

予防と治療は健康を支える車の両輪

 私が公衆衛生に関心を抱いたのは、先述のように義務年限として地域医療に従事する中でのことでした。きっかけの一つは小規模な病院に勤務した時の、保健師や行政の担当者など医師や看護師以外の人との出会いです。地域での医師は診察室から社会に出ていき、多様な職種と関わりながら地域の医療や保健、福祉を支えます。医師としてその一端に加わり、医療と近接していながら理解が行き届いていなかった公衆衛生という分野に興味が向くようになりました。

 もちろん、患者さん一人ひとりの病気と向き合う医療にはやりがいを感じていました。訪問診療による介入を始めたことで自宅に戻れた患者さんに喜んでいただいたことなど、未熟ながらも医師としての役割を果たせたと思います。一方で、現代の医学では救えなかった患者さんの最期を看取ったり、寝込まずとも毎日多くの薬を飲まなければいけない患者さんに処方箋を渡したりするなかで、病気にならなければその苦しみを避けられたかもしれないと感じたこともありました。そうした経験を積み重ねていく過程で、予防医学への関心を強めていった私は、義務年限が明けた後に取り組むべき課題として、公衆衛生に関する専門性を高めることに的が絞られていきました。

 公衆衛生と臨床の医療は、車の両輪です。火の用心を徹底したからといって、消防士が不要になるわけではないように、予防と治療の両面があって初めて人の健康を支える医療・保健態勢が整います。私自身は当面、医師として公衆衛生を強みにできる力を身に付けることが目標です。診療科とは異なる専門性を獲得することで、将来の仕事と働く場の選択肢はさらに広がると考えています。

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