医学部
School of Medicine
(2019年3月 取材)
食品の安全確保を通じて国民の健康を守る
厚生労働省 医薬・生活衛生局 食品基準審査課 新開発食品保健対策室
バイオ食品専門官三橋康之 神奈川県
2000年、自治医科大学卒業。
神奈川県立厚木病院で初期研修を修了した後、神奈川県の保健福祉事務所、県立診療所、こども医療センター、総合療育相談センター、衛生研究所、子ども自立生活支援センターなどで勤務。2018年より現職。
地域医療を通して培った医師としての基本
厚生労働省における私の仕事は、医師の視点から科学的知見に基づき食品の安全性を確保し、国民の健康を守ることです。新開発食品保健対策室においては、いわゆる「健康食品」や新たな技術を利用して得られた食品などを対象とし、特に国民の生活に浸透している「健康食品」について、それらに関する健康被害情報を取り扱うとともに、健康被害を防止するため、食品衛生に関連する制度の策定や見直しに携わっています。
現職にも関係する保健所や地方衛生研究所には義務年限中や義務年限が明けた後に勤務していました。そのときの仕事が相手の立場を理解する上での下地となっていますし、臨床医として地域医療に従事した経験も今につながっています。保健所の家庭訪問や診療所の在宅診療の際に、多くの家庭に「健康食品」があった風景は今も鮮明に覚えています。患者さんの中には、処方薬が手つかずの状態で居間の隅に放置されているにもかかわらず、何種類もの「健康食品」を常用する方がいて、「これは効くから、先生もお飲みなさい」と勧められるといったエピソードもありました。訪問を重ねるにつれ、処方薬も飲んでくださるようになりましたが、ご本人の「健康食品」も含めた食の嗜好と他院から処方された薬の飲み合わせなどにも注意を払う必要があります。当時、現在の仕事に就くことは想像すらしていませんでしたが、その頃から食の嗜好や病態にあわせた食支援・服薬支援に関心を持っており、何より「健康食品」の日常生活への広がりを目の当たりにしたことは、今も忘れることはありません。
今は主治医として診療を行う機会はありませんが、10年間勤務した診療所のある地域から、毎年の恒例行事にお呼びがかかります。行政医として広い視野で健康を考える今の仕事でも、その原点は一人ひとりの患者さんなのです。