医学部 School of Medicine

医学部

School of Medicine

インタビュー

(2023年度 取材)

小規模病院の家庭医として常に患者の最善を考えた選択を

村山愛

国保直営総合病院
君津中央病院大佐和分院

家庭医・内科医村山愛 千葉県

疾患の問題と病の問題を行き来し、解決へ導く

 現在は、君津中央病院の分院である大佐和分院で家庭医として勤務しています。大佐和分院は医師3~4年目に派遣された病院で、内科常勤医がみな自治医科大学卒業生です。基本は外来、入院の患者さんを診察していますが、訪問診療も月に一回程度行っています。

 家庭医・家庭医療という言葉は聞き慣れない方も多いかもしれません。家庭医は、地域住民の健康のために働く総合診療医です。特定の診療科目に限らず、疾患を抱える患者さんに対し、心理面・社会面も含めて、患者中心の医療を行います。

 例えばこんなケースがあります。高血圧で通院する患者さん。だけど一番困っているのは腰痛で介護が必要になっている。疾患名での治療だけでは患者さんは幸せになれません。疾患の問題と、患者さんの病の問題の間を行き来し、両方を解決していく。それが私の仕事です。

患者さんの人生と関わり合える家庭医療学との出会い

 在学中、日本プライマリ・ケア連合学会が主催する「学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」に参加したことで家庭医という存在に興味を持ちました。今まで漠然としか捉えられていなかった「地域の良いお医者さん」を言語化し、学術的に研究している点に衝撃を受けました。

 その後、セミナーで出会った家庭医の先輩と一緒に、亡くなられた患者さんのご自宅に訪問してお線香をあげさせていただいたことがありました。先輩が患者さんとの思い出をご家族と話されていた様子を見て、「私もこういった関係を患者さんやそのご家族と築きたい。患者さんの人生に関わらせていただけるのが素晴らしい」と思い、家庭医への道を決意しました。

母親として、医師として、学修者として
家庭医療後期研修プログラムをつくってもらった経験

 自治医科大学を卒業した5年目の頃、ちょうど君津中央病院総合診療科の常勤医師が全員辞められることになり、総合診療科病棟を閉めることになってしまいました。他の病院で家庭医療を学び専門医を取得することも考えたのですが、娘の出産もあり、出産後の働き方も考えて君津中央病院で家庭医療後期研修プログラムをつくってもらうようお願いしました。無理なお願いではありましたが、病院側も女性医師支援として時短勤務を利用しながらの復帰を歓迎してくださり、また、君津中央病院は自治医科大学卒業生の受け入れ先なので、研修プログラムの整備としてもつくる必要性があると判断してくださいました。

 まずは病院の中で指導医を引き受けてくださる先生を探すところから始まりました。3カ月ずつ小児科と救急科でブロック研修を受けさせてくださいと依頼したり、研修で学びたい内容を交渉したりと大変なことも多くありました。ですが、大学時代に参加したセミナーや学会で知り合った多くの家庭医の先生や同世代の家庭医療専攻医からアドバイスをいただくことで、不安を解消しながら研修を進めることができました。

 ブロック研修の後、小児科の指導医から、研修を通して「家庭医が重要なのがわかった。大事なプログラムだからこの病院に必要だ」と仰っていただけたのは嬉しかったです。

時には教わり、時には教える
学びを深めるコミュニティ参加

 現在、千葉県の中で自治医科大学の卒業生をサポートするコミュニティを運営しています。へき地勤務は学び方がわからなかったり、地域での孤立を感じやすかったりするものです。ピアサポートとしてへき地勤務中の若手医師 (主に卒後3・4年目) をオンラインでつなげたり、コミュニティを作ったりすることで、会話を促し、不安の解消ができればと思っております。

 また、他の家庭医の方とコミュニティをつくったり、千葉大学の地域医療教育学講座にも所属したりと、私自身も勉強できる機会を増やしています。多くの方と関わり合いながら、時には教わり、時には教えていく中で家庭医としてのスキルを高めていきたいです。

 これからも2人の子供やパートナーとの生活を大事にしつつも自己研鑽と社会貢献を続けていきたいです。そして、家庭医療学を学んだ視点から自治医科大学の卒業生が積み上げてきた功績を言語化し多くの方に伝えていきたいと考えています。

Back