医学部 School of Medicine

医学部

School of Medicine

インタビュー

(2020年度 取材)

研究の原点は常に臨床上の疑問にある

坂根直樹

国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室

室長坂根直樹 京都府

1989年、自治医科大学卒業。
京都府内で地域医療に従事後、神戸大学大学院医学系研究科分子疫学分野助手を経て、2003年より現職。

臨床医と研究者の二足のわらじ

国立病院機構の京都医療センターにある糖尿病センターで1型糖尿病や脂質異常症の専門外来を担当するほか、当センターに併設された臨床研究センターの予防医学研究室で室長を務めています。医師として臨床医と研究者の二足のわらじを履く礎は、自治医大で築きました。学生時代は講義や実習以外に、行動科学や生物物理、疫学やカウンセリングなどの研究室のゼミに参加していました。糖尿病や肥満に関する研究を始めたのは義務年限の3年目、京都府北部の山間地にある病院に勤務していた時です。当時は水曜日の診療を終えると車を2、3時間ほど走らせて京都市内にある大学の研究室に向かい、翌日行う実験の準備をし、木曜日は動物実験や遺伝子解析などのため朝から晩まで研究室にこもり、その日のうちに再び車で勤務地に戻ることを毎週続けていました。国内外で研究結果を報告し、博士号を取得したのは、その時の研究成果によるものです。

患者をやる気にさせるアプローチ法の開発

糖尿病の診断は簡単でも、その治療がいかに難しいことは、地域医療に従事した時に実感しました。頭ではわかっていても生活習慣の修正を変えてくれない患者さんは多いものです。「将来、大変なことになるぞ!」と医学的に脅して、必死に説得しても患者さんはなかなか変わってくれません。そこで管理栄養士さんと一緒に「楽しくてためになる糖尿病教室」を始めたところ評判を呼び、書籍の出版、講演会やテレビへの出演などにつながりました。日本肥満学会賞や内分泌学会研究奨励賞などを受賞した研究も、患者さんが抱える「同じものを食べても、自分だけが太る」や「努力してもなかなか痩せられない」といった悩みへの、医師としての疑問を出発点とし、内臓脂肪を蓄積しやすく減量を困難にする遺伝子タイプを発見したものです。現在は、患者さん自らが生活習慣を変えようとする方法や、そのための性格タイプ別アプローチ法なども研究。さらに、その研究成果を手軽に活用できる生活習慣病予防アプリの開発にも取り組んでいます。これらの研究の原点は、常に臨床上の疑問にあります。そして、地域医療で培った患者さんとのコミュニケーション力が、その原点を支えています。

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