医学部 School of Medicine

医学部

School of Medicine

インタビュー

(2020年度 取材)

臨床検査と総合内科 2つの専門性を医療と教育に活かす

山本さやか

自治医科大学附属病院 臨床検査部

病院助教山本さやか 宮城県

2002年、自治医科大学卒業。
仙台医療センター、栗原中央病院、佐沼病院、丸森病院など宮城県内の医療機関で内科医として勤務。2012年度から現職。自治医大では臨床と教育に加え、卒後ワークライフバランスに関して卒業生をサポートする。

検査機器が示した結果を読み解き病気の兆候を発見する

宮城県での義務年限を終えた2012年から母校の臨床検査医学教室に籍を置き、附属病院での臨床検査と、臨床検査分野の教育に従事しています。
本学の附属病院は検査にも力を注いでおり、血液や尿などの体液を人から採取して調べる検体検査部門と、人体に検査機器を当てて患部の状態を把握する心電図や超音波検査などの生理機能検査部門があります。私も生理機能検査の一つである超音波検査をはじめとした検査に対応します。特に超音波検査では臨床検査部の医師が直接検査を担当することも多く、その点では治療担当の医師より、私たちのほうが患者さんとの接触が密接といえるかもしれません。
検査機器は臨床検査技師が操作しますが、機械化が進んだ現代でも臨床検査技師の手作業による検査や目視によるカウントが必要とされています。臨床検査専門医である私は機器や技師により示された画像や数字を解釈し、診断につながる情報を各診療科に提供します。患者さんの中には、検査を受ければ病気か否かが瞬時にわかると思っている方も少なくありませんが、検査機器のみでは診断できません。白黒の判断を明確に付けられるケースは少なく、白と黒の間にあるグレーな部分から、正確に病気の兆候を発見するのも検査部門を担当する臨床検査医の役割です。また、臨床検査技師に対して、その検査が診断にどのような役割を果たすのかを示すのも臨床検査医の役割の一つです。現代の医療は検査への信頼によって成り立っている面もあり、学生への教育においてもその点を常に強調しています。

地域医療に子育てを加えた義務年限のあわただしい日々

私自身が臨床検査の重要性を理解し、臨床検査専門医の研修を開始したのは、本学附属病院の総合診療部で内科系の後期研修に取り組んだ年。義務年限の最終年に当たる卒後10年目のことでした。義務年限中に結婚し2人の子を産んだ私は、合わせて約1年の産休と育休を取っていました。夫は同じく自治医大を卒業した同郷の1期下。そのため同じ年に義務年限を終了することになります。
卒後3年目に結婚し4~5年目に上の子を産んだため、義務年限の後半は地域医療の忙しさに子育ての右往左往が加わり、気の休まる余裕がなかった日々が思い出されます。もちろん義務年限の中では、診察室で診た患者さんを、後日近所のスーパーでみかけ、そこでの元気な様子を知ることで体調を理解するなど、大きな病院では考えにくい、地域医療ならではの面白さもたくさん経験しました。幸い、勤務した医療機関の上司に理解があり、妊娠中も被爆を伴う処置や当直勤務以外は、産前休暇に入るまでそれまでと変わらず勤務しました。
大変だったのは1歳になった子を保育所に預け、義務年限を再開してからです。勤務中に保育所から呼び出されたことは何度もありますし、夫が当直した日の夜間、寝入りばなの子を抱えて病院に行き、空いているベッドに寝かせたまま急患に対応したこともありました。2人目の子を産んだ時は、夫の実家で暮らしていたためそのような非常事態は避けられましたが、それでも私の義務年限の後半は子育てとともに過ぎていったといえます。
あの慌ただしい日々から10年が過ぎました。子供たちの独り立ちまではもう少し時間が必要ですが、今は総合内科と臨床検査という2つの専門性を持ち、臨床医と大学教員、母と妻という4足のわらじを履いた毎日を楽しんでいます。

Back