看護学研究科
Graduate School of Nursing
診療看護技術管理学
Clinical Practice and Nursing Management
領域の特色
領域紹介
本領域は、診療看護技術を必要とするそれぞれの場の特徴を踏まえ、看護職の役割拡大に伴う安全・安心な看護技術の開発・改善・医療提供システムづくりに寄与できる研究課題を探究します。
診療看護技術とは、特定行為を含む診療の補助として提供される看護の技術全般のことを指します。診療の補助に関する看護の追求をしたい方、また、医療提供体制の充実やその教育に興味がある方など、ぜひ受験をご検討ください。
学習内容
講義では、特定行為を含む看護技術である診療看護技術の安全性を高めるための開発・改善から提供システムづくりに必要な他職種・他部門との連携・調整および、在宅、介護施設、病院などでのチーム医療の在り方の理論と考え方を学習します。また、保健医療福祉制度や医療政策、組織特性などを踏まえ、継続教育を視野に入れた診療看護技術の教育体制のあり方とその実際を学びます。
演習では、安全かつ安心な診療看護技術の開発・改善、提供方法や、病院、介護施設、在宅などにおける他職種との連携を踏まえた看護管理活動について、実践・評価を行い、診療看護技術の医療提供システムづくりに関する改善・改革の課題を探求します。
特別演習では、看護技術が必要なそれぞれの場の特徴を踏まえ、看護職の役割拡大に伴う安全・安心な診療看護技術の開発・改善、チーム医療の推進につながる医療提供システムづくりに取り組むための研究課題の明確化とその研究課題を解決するための研究方法を検討します。
特別研究では、診療看護技術管理学の講義・演習・特別演習を通して明らかになった実践的課題のなかから、看護ケアや看護サービスを提供する診療看護技術の管理・改善に関連する研究課題を設定し、研究活動を展開し、ゼミや個別指導を受けながら修士論文を作成します。
なお、本学看護師特定行為研修と併せて学修することも可能です(図参照)。
修了生の研究テーマ
訪問看護における胃瘻増設患者の経口摂取開始に関する支援ニーズと看護実践 | 2018 |
特定行為研修修了看護師が役割獲得するまでのプロセス | 2020 |
へき地診療所看護師の在宅支援チーム作りに関する看護活動 | 2022 |
退院後の医療処置を要する患者とその家族の在宅移行期における特定行為研修修了看護師の看護実践 | 2022 |
クリティカル領域における特定行為に係る看護師の研修制度を修了した看護師による人工呼吸器の離脱に向けた実践 | 2022 |
訪問看護における特定行為研修修了看護師の特定行為実施に向けた働きかけ | 2023 |
担当教員
学修の実際

小川 晴香 さん
特定行為研修選択
2022年度修了
Q.進学した動機は何ですか?
A.看護実践をもっと探究したいという思いが強くなりました。
臨床で働いていた時は、大学院はハードルが高いと感じていましたが、大学教員として2年間勤務し、大学院で学ぶことを身近に感じるようになりました。また学生と関わる中で、知らないことや知っているつもりになっていたことがたくさんあることに気付きました。「知らないことがわかるようになったら、もう少し看護学を深く理解できたら」という思いが強くなり、日々の看護実践をさらに探求するために進学することにしました。
Q.大学院での学びはいかがですか?
A.大学院と看護師特定行為研修の学修に計画的に取り組んでいます。
私は大学院と看護師特定行為研修を予定年限で終了することを目指しています。看護師特定行為研修は、大学院の講義や研究と並行してe-learningと実習に取り組むため、計画的に時間を割り当てて取り組んでいます。また、特別研究では文献を読み進める中で研究目的に迷うことばかりですが、迷うたびに臨床経験で感じた疑問に立ち戻るようにしています。大変な日々ですが、もっと学びたいという気持ちを胸に、充実した日々を送っています。
Q.大学院で学ぶことの意味を教えてください。
A.思考を言語化する力、院生から新たな視点を学べることです。
1つは、自身が実践してきた看護の目的や意味を振り返り、論理的に思考したことを他者に伝えるための言語化する力を学修すること、そしてもう1つは、異なる経験を持つ院生との意見交換から新たな視点と考え方を学べることだと考えます。大学院へのハードルは実際はそんなに高いものではないと、今は思えます。大学院への進学をもっと身近なものと感じてもらえると嬉しいです。

池田 里美 さん
2023年度修了
Q.進学した動機は何ですか?
A.特定行為研修修了後の活動に難しさを感じたことです。
私は、循環器内科や訪問看護での臨床経験を通して、医師と同等のフィジカルアセスメントのスキルや臨床判断、必要時にタイムリーな医行為ができる看護師の必要性を感じるようになり、特定行為研修を受講しました。しかし、組織的な合意はもちろん、役割拡大に伴う周囲の医療従事者との連携や協働、訪問看護を利用される患者さんやご家族等の理解を得ていくプロセスなど、在宅領域で活動を開始することの難しさを痛感しました。他の特定行為研修修了者も活動開始に苦慮しているのではないかと考え、特定行為関連の研究に取り組みたいと思うようになりました。
以前から大学院の進学には興味があり、科目等履修制度を利用し、領域別や合同ゼミを体験しながら大学院進学の準備をすすめました。日々の看護実践をさらに探求し、看護の視点や価値観を組織活動に活かせるよう学会発表や論文投稿を視野に入れ、学びを深めていきたいという思いで、大学院の進学を決意しました。
Q.大学院での学びはいかがですか?
A.特定行為研修修了者の強みや実践を言語化できるようになったことです。
在学中、笹川保健財団のご支援を頂き、国際看護師協会(International Council of Nurses)主催の看護学会に参加し、看護実践を抽象度の高い言葉で片付けるのではなく、科学的根拠に基づいて言語化していくことの大切さを痛感しました 。そして、特定行為及び診療の補助に関する特別研究を行ったことで、特定行為研修修了者の必要性や強み、実践を言語化し、他者に伝えることができるようになりました。また発表の機会を得ることで、特定行為に関する周知活動と共に、特定行為や特定行為研修修了者への興味・関心を寄せていただく機会につながっていると考えています。
また、図書館や大学院生室は遅い時間まで利用が可能であり、事前に予約すれば臨時宿泊施設に泊まることができるため、集中できる学習環境が整っています。先生方は一人ひとりに寄り添い、手厚く御指導をいただけるため、やればやるだけ身に付いていると実感することができ、とても充実した日々を過ごすことができました。
Q.大学院で学ぶことの意味を教えてください。
A.相談しあえる『かけがえの仲間』とともに学び合えることです。
専門科目である演習や特別演習を通して、文献検討の仕方や研究課題の設定等の研究遂行に必要な知識、論理的思考力やプレゼンテーションスキルが身についたと実感しています。また、ディスカッションを通して、幅広い観点から検討する機会を経験したことで、多面的に物事を思考できるようになったと思います。
大学院の学びは行き詰まることも多いのですが、『かけがえのない仲間』と出会うこともできます。様々な意見交換を通して『かけがえのない仲間』とのともに学ぶ時間は、刺激的かつ有意義でした。大学院修了後も連絡を取り合い、質の高い看護実践について相談しあえる仲間と出会えただけでも大学院で学ぶ意義があると思います。素晴らしい先生方や仲間との『縁』をこれからも大切にしていきたいと思っています。
履修モデル
★全ての共通科目および専門科目の一部は科目等履修の対象科目となっており、入学前に履修して単位を修得しておくことができます。
診療看護研究会
特定行為を含む診療の補助に関する教育や看護実践の発展、交流及び研究活動の推進をはかることを目的とした研究会です。
本領域修了生や自治医科大学看護師特定行為研修の修了生が中心となって設置し、全国の看護師・医療職関係者が参加されています。
詳細は、本研究会のホームぺージをご参照ください。