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同窓会会報から 秋根大(茨城県)

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神島訪問記 〜ちゃんとしたお医者さんになるために必要なこと〜

自治医科大学附属病院 感染症科 秋根 大(茨城29期)

三重県津市で開催された第9回日本プライマリケア連合学会学術総会に合わせて、三重県神島を訪問した。神島診療所に勤務する小泉圭吾先生(三重26期卒業)にお会いすることが目的だ。
2008年4月から1年間、当時卒後5年目であった小泉先生は自治医科大学附属病院感染症科で後期研修をされた。その年、卒後2年目であった私も、初期研修の一環として感染症科で3か月間の短期研修を行った。今から10年も前のことであり、当院感染症科の黎明期でもあった。

感染症科にはその後も全国から卒業生が後期研修に集まってきており、今年度も義務年限内の岩手と大分の卒業生が当科で研修中である。その先駆けであり、今まさに地域の現場で活躍されている小泉先生にとって、感染症科の研修がどのような意味を持つのかを確認したかったのだ。

宴席でそのことを伺うと、「そら、秋根君」、ビールを飲む手を止めて小泉先生が言葉を紡ぐ。日焼けした顔に浮かぶ穏やかな笑みが印象的だ。「あの1年間は大変だったけれども、そのおかげでちゃんとしたお医者さんになれるような気がしたよ。」

当時も今も、感染症科は原則として主治医にならない。患者さんとの関わり方はいくつかあるが、主治医から連絡を受けて入院患者さんを見に行くことが最も多い。主治医から相談が来た時に、私たちがまず行うことは患者さんの病態の理解である。
主科のchart reviewを行い、過去の検査結果を見直し、術前・術後の患者さんであれば術式を理解するように努める。足りない情報は患者さんご本人、ご家族や主治医に伺い、時には前医にも問い合わせる。身体所見を自分でとり、直近の検査結果を解釈する。少なくない時間を患者さんの現状の把握に費やしたのちに、患者さんの病態を評価し、最後に診断や治療、時には予防のためのプランを提示する。その過程においては、むしろ感染症以外の病態や診断・治療法の知識、理解が大切だ。小泉先生の言葉はこのことを指しているのだろう。

小泉先生ならではのエピソードも伺った。後方病院で不明熱精査をしても原因がわからなかった患者さんがおられて、小泉先生が血液培養をやりなおしたところ、2セット中2セットからStapylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)が検出された。小泉先生がご自身で経食道心臓超音波検査をしたところ、どうも疣贅らしきものがみえる。そこで、感染性心内膜炎疑いとして後方病院に再び紹介したそうだ。
抗菌薬を適切に使用することへの意識が芽生えたことも、研修の成果として挙げておられた。それまでは「とりあえず○○(商品名)を出しておこう」と言ってしまいそうなところを、患者さんの病態に合わせて、抗菌薬を使うなら適切なものをきちんと使う、使わないなら使わないと判断されるようになったとのこと。

義務年限内のいわゆる後期研修に当科を選んできてくれる後輩たちは、抗菌薬や微生物、感染症が好きでそれを学ぶためにやってくる。その期待に応えることは当然として、さらに内科全般のこと、医学的判断や臨床推論についても身につけていただけるような研修を提供したいと改めて感じた。そのためにもまず自分自身がちゃんとした診療をし、それを続けるよう一層の努力をしたい。

(追記)
今回の神島訪問は当初一泊二日の予定であったが、帰宅予定日に台風から変わった温帯低気圧の影響で、鳥羽に戻る船が欠航となってしまい(!)もう一泊することとなった。予定外のことで、職場の同僚には大変な迷惑をかけてしまった。しかし、そのおかげで小泉先生とは多くのことを語り合うことができた。
自然と地域医療についても話題となった。「人口がどんどん減りよるんよ。」神島の人口は平成25年の国勢調査では348人で、昭和30年ころの約25%である。この状況で神島に医師が常駐し続けることがいつまでできるか。へき地の、特に公設診療所の現場で働いた経験があれば、誰しも感じる悩みではないかと思う。
「それでもな、若いときにへき地に行くことは医者の人生を豊かにしてくれるやろ。それに色々なポジションを若いうちに経験させてもらえて幅が広がる。それは自治医大卒業生の特権や。」へき地に一人の医師が長く務めることを住民や行政は期待するが、それによって種々のリスクも存在するのは事実である。ベテラン指導医と、義務年限内の若手医師がいろいろな形で協働し、へき地医療を支えられる仕組みを作れれば、と小泉先生は語る。
卒後12年目に全国のへき地医療機関を研修で回り多くの先生に会い、小泉先生は「へき地医療をここまで究められるのか」と衝撃を受けたという1。私自身も母校に戻って2年。臨床・教育・研究と全てにおいて力不足を痛感する毎日だ。実感は持ちにくいが、日々努力することで力をつけていると思いたい。そして、全国にはそれぞれの道を究めたいと願い、日夜努力している先輩方や仲間たちがいる。そのことを再認識し、ちょっぴり元気をもらえた神島訪問であった。

当科での研修にご興味をお持ちの方は、昨年リニューアルした当科のwebsiteをご覧ください。また、最
適な研修方法を一緒に考えますので、ぜひメールでご連絡ください。


  • 診察室での小泉先生。窓からは神島の港が見える。