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同窓会会報から 倉田佳彦(滋賀県)

同窓会会報から 倉田佳彦(滋賀県)

リレーエッセイ(北から南から)〜私と地域の関わりについて〜

前高島市民病院朽木診療所所長 倉田 佳彦(滋賀32期)

 私は自治医科大学卒業後、大津赤十字病院で初期研修後、4年間信楽中央病院総合診療科で勤務し、平成27年4月に朽木診療所に赴任しました。現在は平成30年3月に義務年限を修了し、4月から消化器外科医として、自治医科大学に帰ってきています。このリレーエッセイでは3年間を過ごした朽木で経験した私と地域の関わりについて書こうと思います。今回このような機会いただいた編集者の皆様、あいとう診療所の横田哲朗先生に感謝申し上げます。
 滋賀県高島市朽木は滋賀県の北西部、京都府と福井県との県境にあり、面積は琵琶湖のおよそ4分の1程度と広く、その9割が森林の山間地域です。2017年5月1日時点の人口は1853人、人口密度は11.2人/km2、高齢化率は41%で、直近のデータを見てみると2018年4月30日現在の人口は1788人と、急激な過疎化が進んでいます。朽木診療所は出張診療所を除き、この地域唯一の医療機関で、医師1名、看護師2名、事務員2名の体制です。直近の病院まで車で30分、3次救急医療機関までは60分かかる地域です。
前勤務地の信楽中央病院は50床(現在40床)医師4名の病院では4年間総合診療科としてプライマリ・ケア領域の外来や入院、在宅医療を経験しており、朽木診療所への異動が決まったときには「なんとかなるんじゃないか」と漠然とした自信がありました。ところが、いざ赴任してみると、思っていた以上にできないことが多かったです。まず前任地との生活文化の違いや地域に住む方の考え方の違いに戸惑いました。また地域から朽木診療所に求められる医療と私が提供できる診療の開きを感じ、葛藤がありました。また一人診療所の管理者としての多様な業務は相談できる人も近くにおらず、市の職員に確認してもわからないことがありストレスでしたし、地域の医療機関で何ができて何ができないか、どこに紹介すべきかを把握するまで、ある程度時間が必要でした。
 最初の数ヶ月は苦労が多く、仕事においてもプライベートにおいてもなかなか地域にも馴染むことができませんでした。地域に溶け込むきっかけの一つは地域で活動する「若手おっさんの会」に誘われたことでした。
朽木市場区には中老会という地域の男性限定の集まりがあり、地域の自治会のような活動をしています。若手おっさんの会はその中でも20代から40代の集まりで主にお盆に開催される祭りの企画や運営を行っています。地域で美容室をされているTさん(「山奥のさんぱつや」というブログをされています。よかったら見てください。)から「若手おっさんの会というのをやっているからよかったら入ってみいひん?」と声をかけられました。一緒に祭りをやろうというお誘いでした。

 当時はまだ無理していたのでしょう、私は祭りの際に健康相談でもしましょうかと提案したところ、Tさんからは「そんなことはせんでもええよ(しなくていいよという意味)。それやったら僕は祭りで髪切らなあかんし。」とおっしゃていただきました。Tさんにとっては何気ない一言だったと思いますが、私にとっては救われる言葉でした。診療所の医師と認識されつつ、一人の地域の住民としてみられていることが自分にとって、朽木に居心地のよさを感じることができ、うれしかったです。
 またこの「若手おっさんの会」では朽木音頭復活班を立ち上げ、祭りの際に行う盆踊りを自分たちで復活させようと数年前から取り組んでいます。地域にすむ朽木音頭の先生(多くは高齢者)に教えてもらい、自分たちで歌や三味線、太鼓や鐘を練習しました。祭りの前になると地域の方に呼びかけて当日会場で踊れるように体育館で練習を行っています。お盆には各都市部から地元の方が多く帰省され、祭り当日には朽木内外から多くの方が集まります。この地元の地元による地元のための祭りはとても盛り上がります。診療所の中からでは見えない地域の力を経験することができました。
公私ともに地域との関わりが増えていく中で少しずつ自分の診療に対する姿勢も変わっていったと感じています。地域の「顔の見える関係作り」にも積極的に関わることができました。赴任当時は地域の医療を支えるためと思って朽木にやってきましたが、今では地域に支えられて医療ができていたんだと感じるようになりました。
またこのように地域の一員として仕事ができたのは家族のおかげが大きいです。妻は朽木特別養護老人ホーム「やまゆりの里」に看護師として勤務し、子供は朽木幼稚園に通っていました。やまゆりを利用されている方からは私はやまゆりの看護師の夫であったり、子供が同じ幼稚園に通っている方からはお友達のお父さんと認識されているようでした。いつも家族の支えに感謝しています。
最後になりますが、今年2月にスキー中に転倒し、左脛骨を骨折しました。改めて健康のありがたさ、大切さを痛感致しました。皆様どうぞご自愛ください。