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同窓会会報から 豊岡晃輔(岡山県)

同窓会会報から 豊岡晃輔(岡山県)

リレーエッセイ(北から南から)〜広がっていく繋がり〜

新見市国民健康保険湯川診療所 思誠会渡辺病院 豊岡晃輔(岡山32期)

 自治医科大学を卒業して9年が過ぎようとしています。この9年間は岡山県の地域医療に取り組んだり、専門分野である小児外科を勉強したりといろいろな経験を得て多くの人たちと出会うことができました。その中で、医師にとって一番大切なことは『人との繋がりを持つこと』だと思うようになりました。それは患者さん・病院スタッフ・同僚・上司・後輩と自分に関わってくれた全ての人との繋がりです。今回は、岡山で得ることのできた人との繋がりについてお話しさせてもらいます。

 私が住んでいる岡山県新見市は県北の山間部にある人口三万人の市です。葡萄と和牛が有名で、果物王国岡山の絶品ピオーネとA5ランクの千屋牛を(たまに)味わえる暮らしは恵まれた生活だと思います(笑)。

 最近は診療以外に、院内院外の勉強会や講演会、医師会での業務が増えてきました。勉強会ではコメディカルスタッフに、講演会では地域住民に話をします。一昨年まで我流でやっていましたが、昨年『医学教育』を学んでからは効率よく話ができるようになりました。人に教える、話す、指導することに技術が必要だと考えたことがなかったので『教える技術』を学んだことは新しいドアを開けたような感覚でした。医学教育にはFacilitation、双方向性、Debriefi ngといった技術や考え方があり、これらはすべて『相手の事を理解する』という考え方がベースになっています。相手の事を考え理解しながら接することで、自然に相手との繋がりや距離感が近く強固になっていきます。院内スタッフや地域住民との繋がりは医学教育のおかげでより強くなっていっていると感じます。

 また、医師会の仕事の一つに『新見市ドクターネットワーク』という活動があります。これは病院同士、医師同士が繋がりを持って地域医療を発展させていこうというもので、市内の医師だけでなく、新見市と関りがある医師にも情報発信をして繋がりを作っていこうとしています。他院の先生や市役所の方と会合を重ね、一つの組織や流れを作り上げることは大変なことです。しかし自分と違う立場の人と話をすることで、見識が広がったり自分を理解してもらうために努力をするなど成長の機会を得ているとも感じます。またこの活動の素晴らしいところは、中心となっているのが新見市の若手医師たちという点です。みんなが地元を愛し、地域医療を支えていくという志を持っています。血気盛んな若手の医師たちと出会えたことは大きな財産になりました。

 次は地域医療を支えていく岡山大学医学部地域枠学生との繋がりです。岡山県では4年前から自治医大の義務年限医師と自治医大生と岡山県の地域枠学生の交流を始めています。みなさんもご存知の通り、1997年にわずか2校11人で開始された医学部地域枠推薦は2013年には68校1425人に増えました。自治医大義務年限医師と地域枠卒業医師の勤務形態などは異なるかもしれませんが、ともに地域医療を支える重要な役割を担います。彼らが地域に出て働くときにモデルとなるのが我々自治医大卒業医師であり、お互いに支えあえる存在・関係でありたいと思いました。そういう思いから、交流の場として『桃樹会』という団体を設立しました(『桃』:岡山県花、『樹』:樹枝のように人が繋がっていく)。初めは自己紹介やお互いの大学の説明などをしていましたが、徐々に内容も発展してきており、今では地域医療について議論をしたり、ゲームを通してコミュニケーション能力を育んだりしています。地域で働く医師が直接話をしたり、学生の立場からの質問をしたりとお互いに刺激しあっています。毎年3月に開催しており、今年で第5回目になります。数年後には多くの後輩が医師となって医療の場で一緒に働くと思うと、楽しみであり非常に心強いです。

 地域医療をしている傍ら、専門分野として勉強してるのは小児外科です。幸いなことに岡山県には小児外科を持っている病院がいくつかあり、その中の一つであるNHO岡山医療センターで毎週小児外科研修を行っています。小児外科の先生方はアグレッシブかつユニークであり、自治医大の義務年限のことを理解して研修や進路に対して協力してくれます。さらに国際医療ボランティアといった特別な研修にも参加させてもらえ、非常に貴重な経験を積むことができています。一方で、小児外科は症例数が少ないため地域医療の中で取り組むことは困難です。高齢者を対象とする地域医療と小児外科は対側にあり、地域医療の経験は小児外科へ進んでからはあまり役立たないかもしれません。しかし、小児外科の先生は「地域医療ができる小児外科医は面白い!ぜひ頑張りなさい。」と言ってくださいました。周囲と同じようにまっすぐ最短距離で進むことが全てではなく、回り道でゆっくり進むこともよいのだと思えるようになりました。若いうちに地域医療をやることは専門医への遅れになるかもしれませんが、その中で得た技術や知識や繋がりは決して無駄にはならないはずです。私は心豊かな小児外科の先生たちと出会えて幸せだと思います。


  • 桃樹会(初期)風景

  • 小児外科チームで行った国際ボランティアin Myanmar

私は職場、地域、患者、地域枠、小児外科といろいろな立場の人と出会うことができました。その中で多くのことを学び、失敗し、成功し、反省し、成長してきています。これらの繋がりをこれからも広げていくことが自分の生きる道だと思います。岡山県15期の塩路康信先生が掛けてくれた好きな言葉があります。「何科になってもいい。どこで働いてもいい。ただ元気でいてください。そして10年後に一緒に飯を食おう。」私も繋がりを持つことができた全ての人たちと、また元気で一緒に飯を食いたいと思います。