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循環器センター外科部門(心臓血管外科)【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2023年4月1日現在)

科長 (教授) 川人 宏次
病棟医長 (学内教授) 相澤  啓
外来医長 (CCU講師) 楜澤 壮樹
(循環器センター外科本務)
医員 (講師) 阿久津博彦
(助教) 上杉 知資
(病院助教) 斎藤 翔吾、清水 圭佑、堀越 崚平
兼務 (教授) 岡  徳彦
(とちぎ子ども医療センター)
(准教授) 荒川  衛
(血管内治療部)

2.診療科の特徴

心臓血管外科学教室では原則として循環器センターで高校生以上、子ども医療センターで中学生以下の患者さんを対象として診療しています。循環器センターでは弁膜症、虚血性心疾患、急性大動脈解離、大動脈瘤、成人先天性心疾患、閉塞性動脈硬化症などを中心として診療し、とちぎ子ども医療センターでは新生児を含めた先天性心疾患を治療の対象としています。

とちぎ子ども医療センター分を含めた心臓血管外科分野の総手術件数は601件でした。

以後本欄では循環器センター(小児/成人先天性を除く)での実績のみを詳記します。循環器センターでの開心術・胸部大動脈手術及び体外循環非使用下冠動脈バイパス術は260件で、腹部大動脈瘤や末梢動脈の手術などを含めますと2020年1年間の総手術件数は495件でした。

循環器センターとして、内科医師との連携を強化し同一病棟で有機的・効率的に診療しています。また術前術後症例を中心として循環器内科医師・小児科医師や臨床工学士を含めて合同カンファランスを行っています。さらに循環器センターとしては、弁膜症症例での心エコーカンファランス、血管内治療症例を中心とする血管カンファランス、虚血性心疾患症例を中心とする心臓カテーテルカンファランスをそれぞれ担当する内科・外科医師間で定期的に開催して症例を検討しています。また低侵襲手術として胸部や腹部大動脈瘤治療でのステントグラフト治療も積極的に行っています。ステントグラフト等血管内治療は101 件(胸部17件、腹部74件、その他10件)でした。

2014年11月1日に循環器センター内に重症心不全治療部を立ち上げ、同部門は相澤啓が学内教授を部長とし、内科・精神科医師や看護師・薬剤師・臨床工学士・理学療法士・栄養士など多職種から成り、植え込み型及び体外式人工心臓など機械的補助循環を中心とした診療を行っています。循環器センターでは、2021年度から大腿動脈からの経皮的アクセスが可能なカテーテルVAD (ImpellaⓇ)を導入したため、開胸を要する補助人工心臓植込み手術は減少し、2021年度は体外型補助人工心臓は2例でした。

施設認定

  • 日本外科学会外科専門医制度修練施設
  • 日本胸部外科学会認定医認定制度指定施設
  • 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構認定基幹施設
  • 日本成人心臓血管手術データベース機構認定施設
  • 関連11学会構成ステントグラフト実施規準管理委員会認定ステントグラフト実施施設
  • 下肢静脈瘤に対する血管内レーザー治療実施施設
  • 植込型補助人工心臓実施施設

指導医・専門医・認定医

(令和4年4月1日現在の常勤医)
日本心臓血管外科修練指導医 川人 宏次
岡 徳彦
相澤 啓
荒川 衛
日本胸部外科学会指導医 川人 宏次
日本心臓血管外科専門医 川人 宏次
岡  徳彦
相澤  啓
友保 貴博
荒川  衛
楜沢 壮樹
阿久津博彦
日本外科学会指導医 川人 宏次
日本外科学会専門医 川人 宏次
岡  徳彦
相澤  啓
荒川  衛
楜澤 壮樹
阿久津博彦
上杉 知資
斎藤 翔吾
日本血管外科学会認定血管内治療医 荒川  衛
The Asian Society for Cardiovascular and Thoracic Surgery 川人 宏次
荒川 衛
植込型補助人工心臓実施医 川人 宏次
相澤  啓
胸部ステントグラフト実施医・指導医(TALENT Thoracic Stentgraft、Gore TAG Thoracic Endoprosthesis, Variant Captiva, Relay Plus) 荒川  衛
腹部ステントグラフト実施医・指導医(Zenith AAA Endovascular Graft, Gore Excluder Endoprosthesis, Powerlink Stentgraft System, TALENT Abdominal Stent Graft, Endurant Stentgraft System, AORFIX AAA Stentgraft System) 荒川  衛
下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術実施医 荒川  衛
楜沢 壮樹
阿久津博彦

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者数・再来患者数・紹介割合

新来患者数 263人
再来患者数 3,959人
紹介率 108.2%

2)入院患者数:総数647例

3)手術術式別件数

3)-1 成人先天性心疾患

(とちぎ子ども医療センターで報告)

3)-2 後天性心疾患

3)-2-a.弁膜症手術 162例

弁置換術 93例
弁形成術 21例
複合手術 18例
カテーテル的大動脈弁置換術 30例

3)-2-b.虚血性疾患 23例

単独冠動脈バイパス術 21例
心筋梗塞合併症手術 2例

3)-2-c.胸部大動脈疾患 49例

大動脈解離/真性瘤(開胸手術) 32例
ステントグラフト治療(胸部) 17例

3)-2-d. その他の心臓手術 9例

(補助心臓、心臓腫瘍等)

3)-3 末梢血管 184例

3)-3-a.

腹部大動脈瘤(開腹) 20例
血管内治療 74例

3)-3-b.末梢動脈手術 28例

3)-3-c.静脈瘤 17例

3)-3-d.その他 45例

4)主たる疾患別術後合併症

循環器センターで行った手術後合併症;数値は延べ件数を示します。子ども医療センター分は含みません。
脳梗塞 6例
術中大動脈解離 5例
虚血性腸炎 4例
肺炎 2例
PCPSを要する心不全 2例
完全房室ブロック 2例
心嚢水貯留・ドレナージ 1例
再開胸止血 1例
創感染 1例

5)化学療法症例・数

該当症例なし。

6)放射線療法症例・数

該当症例なし。

7)悪性腫瘍の疾患別および臨床進行期別ならびに治療法別治療成績

肺動脈血管肉腫 1例
肺切除+肺動脈内腫瘍切除を施行した。

8)死亡症例・死因・剖検数・剖検率

(1)治療成績

2020年度の主な術式別の手術成績(在院死亡率)
弁膜症手術(緊急症例を含む) 1/162(0.6%)
単独冠動脈バイパス術(緊急症例を含む) 0/21(0%)
急性大動脈解離 1/19(5.2%)
真性胸部大動脈瘤/慢性解離 0/30(0%)

(2)在院死亡症例

A.術後死亡症例の診断、術式および死因

  1. 82歳男性。急性心筋梗塞後左室破裂。急性心筋梗塞でPCI後に左室自由壁破裂を起こした。緊急手術で圧迫止血を行ったが、心筋梗塞による心不全で死亡した。
  2. 66歳男性。急性大動脈解離で緊急手術を施行したが、術後心不全を合併し、機械的補助循環を行ったが、心不全が改善せず、死亡した。
  3. 71歳男性。腹部大動脈瘤術後(EVAR後)、慢性腎不全で透析中。グラフト右脚の急性閉塞で来院したが、発症後、既に数日経過しており、右下肢虚血が高度であった。救命のため、大腿動脈-大腿動脈バイパスを行ったが、再灌流障害、及びその後に併発した肺炎のため死亡した。
  4. 58歳男性。拡張型心筋症で当院循環器内科でフォローされていたが、心不全で循環が破綻し、緊急でPCPS+impellaを導入され、当科紹介となった。救命のため、BiVADを導入したが、脳梗塞で死亡した。
  5. 50歳男性。大動脈弁置換術後の人工弁感染、弁輪部膿瘍で緊急入院した。2弁置換術(Manouguian手術)を行ったが、術後脳梗塞で死亡した。
  6. 82歳男性。腹部大動脈急性閉塞(Saddle embolism)で、他院より発症後1日経過した時点で当院へ搬送された。手術時期を逸した症例であるが、救命のため、腋窩動脈 ‐ 大腿動脈バイパス術を行った。術後、下肢虚血のため死亡した。
  7. 86歳男性。右下肢急性動脈閉塞、慢性腎不全で透析中。血栓内膜摘除術を行ったが、誤嚥性肺炎で死亡した。ほぼ老衰の状態であった。

B.非手術死亡症例及び死因

非手術死亡症例
47歳女性。腹部大動脈急性閉塞(saddle embolism)。来院時、発症から既に数日経過しており、手術時期を逸した症例であったが、若年であったため、緊急救命手術を予定した。しかしながら、麻酔導入時に循環破綻し、手術に至らず死亡した。

C.剖検数と剖検率

0例

D.死亡症例カンファランス・経過報告

 症例:A-1~7

(3)退院後6週間以内の予期せぬ再入院

83歳男性。僧帽弁置換術後。退院後2週間目に心不全で再入院。心不全管理を行った後、軽快退院した。

9)主な処置・検査

9-1)補助循環症例

急性大動脈解離術後の心不全症例、拡張型心筋症の循環破綻症例に体外型補助人工心臓を用いた両心補助(BiVAD)を行ったが、それぞれ心不全、脳梗塞で失った。

9-2)VAC療法(創部感染に対する持続吸引療法)

縦隔炎や創離開・VAD後のカテーテル刺入部の治癒促進および感染予防目的で、肥満・糖尿病・緊急手術・心不全例など創部感染リスクの高い症例に対し本療法を実施した。

9-3)心筋シンチ

腹部大動脈瘤の術前検査や虚血性心疾患の術前後検査として施行した。

10)カンファランス・回診

(1)診療科;手術例、術前検査入院例、死亡例、合併症発症例を対象にカンファレンスを行っている。

(2)他科(循環器内科・小児科・臨床工学部など)との合同カンファランス;
手術適応例などを中心として術前術後カンファランス・心エコー検査カンファランス・血管カンファランス・心臓カテーテル検査カンファランスを開催し、各部署とのコンセンサスを得た治療を目指している。

(3)他職種との合同(臨床工学部・麻酔科);全手術例を対象として周術期の注意点を共有している。

(4)その他;随時、他診療科・他施設からの問い合わせやセカンドオピニオンに対応している。

(5)教授回診・チャートラウンド・抄読会;週1回
教授回診はCovid-19感染症のため実施していない。チャートラウンドは毎週火曜夕方に行っている。

(6)主治医らによる夕回診;休日を除く毎日

(7)人工心臓装着症例のカンファランス;該当症例が入院中は週1回重症心不全治療部を中心として医師・看護師・理学療法士・臨床心理士・薬剤師・臨床工学士など多職種の参加により開催している。

(8)TAVIカンファランス;隔週で1例/日のTAVIを行っており、毎週金曜日17:00に関係多職種でカンファレンスを開催している。

4.院外活動(全国版を除く)

心臓血管外科学教室では、獨協医科大学心臓・血管外科と病診連携し、2つの施設のうち緊急手術が可能な施設へ患者を搬送する等患者さんに不利益にならぬように対応している。また2病院間や他施設との病診連携を強化する目的で近隣の医療機関や医師会などと共同で以下の院外活動を行った。本年度はCovid-19感染症の影響で例年より開催が少なかった。

  1. 心臓外科周術期体液管理研究会(Web セミナー) 2022.2.4. (Web)
  2. 栃木県循環器疾患協議会. 2022.4.25. (獨協大学)
  3. 北関東心不全研究会.2022.11.11. (宇都宮)

4.2023年の目標・事業計画等

1)内科・外科が同一病棟の循環器センターとして機能的に診療する。

2)診断から手術までの期間を短縮し、手術待機期間の短縮を目指す。

3)急性大動脈解離、大動脈瘤破裂などの循環器救急疾患に対し、迅速に治療できる体制を構築する。

4)植込み型補助人工心臓施設認定を更新したので、引き続き重症心不全に対する外科治療を進めてゆく。

5)カテーテルVAD(ImpellaⓇ)の実施認定施設となり、2021年度に1例目を実施しました。今後、臨床使用を進めてゆく。

6)当院では周術期輸血量が多い傾向にあったので、輸血量削減に努める。

7)Covid-19感染症の影響で、手術症例が若干減少した。来年度は感染状況をみながら、手術症例数の回復に努める方針である。

6.過去実績