無菌治療部【アニュアルレポート】
1.スタッフ(2018年4月1日現在)
部長 | (教授) | 神田 善伸(兼) |
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医員 | (教授) | 室井 一男(兼) |
森本 哲(兼) | ||
(准教授) | 大嶺 謙(兼) | |
(講師) | 翁 家国(兼) | |
病棟医長 | (助教) | 藤原慎一郎(兼) |
佐藤 一也(兼) | ||
畑野かおる(兼) | ||
蘆澤 正弘(兼) | ||
山本 千裕(兼) | ||
早瀬 朋美(兼) | ||
翁 由紀子(兼) | ||
川原 勇太(兼) | ||
森田 薫(兼) | ||
山崎 諒子(兼) | ||
皆方 大佑(兼) | ||
(病院助教) | 新島 瞳(兼) | |
(シニアレジデント) | 10名 |
2.無菌治療部の特徴
平成16年9月に本館4階南病棟に無菌治療室管理加算を満たすクラス100の病室4床とクラス10,000の病室4床を有する無菌治療部病棟が開棟した。平成22年4月14日付で骨髄移植推進財団に「無菌治療部」として承認された。急性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫等の難治性血液疾患を対象とした造血幹細胞移植を行っており、長期間の骨髄抑制や免疫不全状態のため易感染状態にある患者を入室適応としている。
認定施設
- 非血縁者間造血幹細胞移植認定施設
- 非血縁者間骨髄採取認定施設
- 非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設
認定医
- 造血細胞移植学会造血細胞移植認定医
神田 善伸 他4名 - 日本輸血学会認定医
室井 一男 他2名 - 細胞治療認定管理師
室井 一男 他1名
3.実績・クリニカルインディケーター
入院患者数(移植種類別)移植件数
血液科/小児科
年間総数(平成29年) | 68件/6件 |
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血縁骨髄移植 | 4件/0件 |
非血縁骨髄移植 | 16件/0件 |
血縁末梢血幹細胞移植 | 19件/0件 |
非血縁末梢血幹細胞移植 | 5件/0件 |
臍帯血移植 | 3件/2件 |
自家末梢血幹細胞移植 | 23件/4件 |
平成29年12月までの造血幹細胞移植総数は557件を数える。同種移植は425件となった。年間毎の移植数は30件前後で推移していたが、平成27年59件、平成28年68件、平成29年74件と年々移植件数の増加を認めている。造血幹細胞移植法の多様化に伴い新しい移植法の導入を試みている。HLA半合致血縁者間移植を平成29年7件実施した。
対象疾患内訳(平成28年)
血液科/小児科
急性骨髄性白血病 | 17件/0件 |
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急性リンパ性白血病 | 14件/1件 |
骨髄不全症候群 | 5件/0件 |
骨髄増殖性腫瘍 | 3件/0件 |
悪性リンパ腫 | 21件/0件 |
多発性骨髄腫/類縁疾患 | 8件/0件 |
固形腫瘍 | 0件/5件 |
原発性免疫不全症 | 0件/0件 |
治療成績
骨髄移植推進財団が解析(平成14年1月〜平成18年12月)した移植認定診療科ごとの非血縁者間骨髄移植成績で、当院は、初回非血縁者間骨髄移植後1年生存率が72.5%(リスクグループ5段階中4、予想生存率61.9%)であった。
平成26年から平成29年までに実施された成人初回同種造血幹細胞移植において、急性白血病(低リスク)2年生存率68.3%(図1)、2年無病生存率65.1%、1年非再発死亡8.9%、1年再発率19.5%、急性白血病(高リスク)2年生存率20.4%(図1)、2年無病生存率15.1%、1年非再発死亡14.5%、1年再発率55.3%、骨髄異形成症候群1年生存率56.2%、1年非再発死亡18.2%、1 年再発率23.5%、急性GVHD(gradeⅡ-Ⅳ )Day100発症率27.7%、急性GVHD(gradeⅢ-Ⅳ)Day100発症率9.3%、慢性GVHD1年発症率13.7%であった。HLA半合致移植においては、生着率90.9%、1年非再発死亡27.2%、急性GVHD(gradeⅡ-Ⅳ)Day100発症率28.6%、急性GVHD(gradeⅢ-Ⅳ)Day100発症率9.5%、1年再発率38.1%、1年再発率29.5%であった。成人初回自家末梢血幹細胞移植においては2年生存率77.8%、2年無病生存率67.7%であった

造血幹細胞移植カンファランス
(参加)医師、看護師、理学療法士、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士
(実績)1年間 44回
4.2018年の目標・事業計画等
年々、造血幹細胞移植件数が増加し造血幹細胞移植の需要が増している状態である。平成28年3月に4階西病棟4人床4室(16床)をクラス10,000の無菌病室に改修を行い無菌病室は計24床となった。近隣他施設から造血幹細胞移植目的の紹介も増えており、今後、造血幹細胞移植適応患者に対して速やかに移植を提供できる体制づくりを目指していく。
平成27年5件、平成28年7件、平成29年7件HLA半合致移植を実施した。本邦では充分に普及していないHLA半合致移植法の確立に取り組んでいく。現在、低用量アレムツズマブを用いたHLA半合致移植の臨床試験を実施している。
造血幹細胞移植では、多職種との連携が必要である。医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、歯科衛生士とカンファランスを通して情報を共有し質の高いチーム医療の実践を目指していく。
平成26年3月より同種移植後患者を対象とした移植後長期フォローアップ(LTFU)外来を開設した。また、平成27年11月より看護師による造血細胞移植コーディネーター(HCTC)の業務を開始した。患者、ドナー及び家族の支援、QOLの向上、リスクマネージメント、倫理面への配慮等に取り組んでいく。
造血幹細胞移植を受ける女性患者の妊孕性の温存するため、平成28年~29年に全身放射線照射における卵巣遮蔽を2件、未受精卵の凍結保存を1件行った。今後、放射線科、産婦人科、HCTCと連携をして、妊孕性温存治療が安全に施行できる体制を構築していく。 多くの臨床試験および治験に参加しており、それらを通じて造血幹細胞移植診療におけるエビデンスの確立に貢献していく。
当部が主導または参加している主な臨床研究、治験
- 低用量アレムツズマブ併用HLA不適合同種造血幹細胞移植の安全性と有効性の検討
- HLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植における従来型GVHD予防法と抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン併用GVHD予防法の無作為割付比較試験
- 未治療症候性多発性骨髄腫に対するボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾンによる導入療法、自家末梢血幹細胞移植療法およびレナリドミドによる地固め療法・維持療法に関する有効性と安全性の検討
- 多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植後のレナリドミドを用いた維持療法の安全性の検討
- 高齢者造血器腫瘍に対するフルダラビン・全身放射線照射を前処置とした同種移植療法
- 骨髄異形成症候群における移植決断からの治療戦略に関する前方視的検討
- 同種造血幹細胞移植後のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対するダサチニブを用いた維持療法の有効性の検討
- 血液疾患患者における全身化学療法および放射線照射後の抗ミュラー管ホルモンを用いた妊孕性温存の評価に対する前方視的研究
- FLT3-ITD遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病患者を対象とした同種造血幹細胞移植後の維持療法におけるASP2215の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験
- 同種幹細胞移植後の副腎皮質ステロイド抵抗性慢性移植片対宿主病患者を対象としたルキソリチニブとbestavailable therapyを比較する第III相ランダム化非盲検多施設共同試験(REACH3)