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腎臓センター内科部門(腎臓内科)【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2018年4月1日現在)

科長 (教授) 長田 太助
副科長 (学内教授) 齋藤  修
病棟医長 (病院助教) 菅生 太朗
外来医長 (学内講師) 増田 貴博
医員 (特命教授) 秋元  哲
(准教授) 前嶋 明人
(特命准教授) 武田 真一(派遣中)
(講師) 小林 高久(派遣中)
鈴木 倫子
椎崎 和弘(兼)
岩津 好隆(兼)
(助教) 大西  央(派遣中)
今井 利美(兼)
(病院助教) 谷澤 志帆(派遣中)
吉澤 寛道(派遣中)
竹井 尚子(派遣中)
三木 拓哉(派遣中)
シニアレジデント   17名(うち4名派遣中)

2.診療科の特徴

当科の診療は、外来、入院、透析を含む血液浄化の3部門より構成され、内科的腎・尿路疾患(急性・慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性・慢性腎不全、高血圧、水・電解質・酸塩基平衡異常、透析関連合併症など)や中毒性疾患等の診療を行っている。

外来診療は毎日2〜3診で、初診患者の多くは県内または近隣の県外医療機関からの紹介である。

入院ベッド数は、腎臓内科として25床で、糸球体腎炎やネフローゼ症候群に対し積極的に腎生検による組織診断を行ない、総括的に治療指針を検討している。その他、保存期慢性腎不全患者の教育入院や末期腎不全患者の透析導入のための入院、二次性副甲状腺機能亢進症などの長期透析合併症治療のための入院が大半を占めている。特に糖尿病性腎症患者の入院が近年急増しており、この数年は糖尿病性腎症による入院は50名程度で推移し、うち22名前後が透析導入となっている。

2013年4月より透析センターは外来透析と入院透析に分かれ現在に至っている。入院透析センターのベッド数は18床で、月・水・金は午前と午後の2クール、火・木・土は午前の1クールの血液透析を行っている。一方、外来透析センターのベッド数は20床で、月曜日から土曜日の午前1クールでの診療を継続している。一方、腹膜透析(PD)患者の外来診療はこれまで毎週火曜日に行っていたが患者数の増加に応え、週2回(火・木)に増やし対応している。当科の新規透析導入患者数は県内導入患者総数の約1/4を占め、透析導入施設として中核を担っている。また、重篤な合併症や手術のため、当科のみならず他科へ入院する長期透析患者数が年々増加し、これに比例して緊急透析や出張透析の件数も増加している。透析患者が増加している現状において、透析導入患者数は近年頭打ち傾向にある。これは、栃木県内や一部茨城県に及ぶ各地域の中核病院に多くの専門医を当科から常勤医として派遣しており、大学病院と関連病院で診療すべき症例を適正に配分していることより、地域中核病院との良好な病診連携体制が構築されていることを反映していると思われる。これらのシステムを継続的に遂行するには人員の拡充が不可欠であり、地域医療の担い手とし腎臓専門医や透析専門医を育成する教育機関としての役割を当科が継続して担う必要がある。

近年、本邦では、糖尿病性腎症や腎硬化症を原因とする透析導入患者数が急増しており、こうした疾患による末期腎不全への進行を阻止すべく予防医学に対する取り組みとして、多面的な活動を行っている。具体的には、1)医師会や行政とタイアップした住民検診からの腎疾患患者の同定と追跡システムの確立、2)糖尿病センターにおける糖尿病専門医と連携した日常診療、3)糖尿病性腎症や腎硬化症動物モデルを用いた病態解析と再生医学的手法を用いた治療法の開発の着手などである。また、近年老化調整蛋白として注目されているKlotho蛋白の機能解析等を本学、分子病態治療研究センターの黒尾誠教授らのグループと共同で研究している。更に、生活習慣病による慢性腎臓病(CKD)進行予防のため、生活習慣病による死亡率の高い本県において運動療法の重要性を県内に広く衆知するべく学外活動を行っている。

その他の貢献としては、2011年3月11日に生じた東日本大震災において地域透析医療機関の震災状況の把握とそれに応じた緊急応援医師の派遣に尽力したことである。加えて、他県からの被災者受け入れ要請に対し、栃木県災害時透析ネットワークと連携し、福島県をはじめ他県から患者の割り振りを遂行したことも挙げられよう。

認定施設

  • 日本腎臓学会研修施設
  • 日本透析医学会認定施設

認定医、専門医、指導医

日本内科学会認定内科医 長田 太助 他25名
日本内科学会総合内科専門医 長田 太助 他9名
日本内科学会総合内科指導医 長田 太助 他3名
日本腎臓学会認定腎臓専門医 長田 太助 他12名
日本腎臓学会認定指導医 長田 太助 他4名
日本透析医学会認定専門医 齋藤  修 他14名
日本透析医学会認定指導医 齋藤  修 他3名
American Society of Nephrology,Corresponding member 長田 太助 他1名
International Society of Nephrology,Active member 長田 太助 他1名

3.診療実績・クリニカルインディケーター

(1)新来患者数・再来患者数・紹介率

新来患者数 414人
再来患者数 19,343人
紹介率 92.8%

(2)入院患者数675人(病名別)

病名 患者数
慢性腎不全 181
急性腎不全 21
慢性糸球体腎炎 102
急速進行性糸球体腎炎 18
ネフローゼ症候群 55
心不全 19
悪性高血圧 9
尿路感染症 6
副甲状腺機能亢進症 6
シャントトラブル 114
電解質異常・脱水 19
PD合併症 22
感染症・発熱 37
糖尿病関連 64
膠原病関連 7
多発性襄胞腎関連 14
移植腎関連 3
腫瘍 3
計(重複あり)  700名

3)手術症例病名別件数

ブラッドアクセス関連(腎臓外科) 297
腹膜透析カテーテル関連(腎臓外科) 31
副甲状腺摘除+一部移植(腎臓外科) 7
腎摘出術(腎臓外科) 7
開放腎生検術(腎臓外科) 13
口蓋扁桃摘出術(耳鼻咽喉科) 14
369件

4)治療成績

(1)IgA腎症に対する扁摘パルス療法

当科ではIgA腎症に対し、2004年4月より扁摘パルス療法(扁桃腺摘出術+副腎皮質ステロイドパルス療法)を施行している。施行例数は各年10~20名前後で推移しており、2015年末までの施行総数は240例を超えている。施行時年齢は19~63歳と多彩であり、2009年12月にまとめた治療開始後2年までの成績では、治療前、1年後、2年後の血清クレアチニン値は、それぞれ0.89、0.82、0.84mg/dl、また尿蛋白量は、それぞれ0.82、0.27、0.36g/gCrで、両者とも1年後、2年後の値は治療前のそれと比較して有意に改善していた。また、尿潜血反応陰性症例の比率は、治療1年後で81.6%、2年後で84.3%であった。一方、尿蛋白陰性症例の比率は、治療1年後で67.3%、2年後で54.4%であり、両者がともに陰性化した寛解率は、治療1年後で53.9%、2年後で54.4%であった。扁摘パルス療法の殆どは初回発症症例に対し施行されているが、2010年には扁摘パルス療法後の病勢再燃に対して再治療を要した例が2例あり、うち1例には扁桃腺再摘出術を施行した。

(2)尿毒症に対する透析療法の導入

昨年1年間の新規透析導入患者数(腹膜透析を含む)は133人で、この数年概ね横ばいの状態である。一方、当院での導入が主となる新規腹膜透析についても、年間の導入患者数が10~20人前後で近年推移している。

5 )合併症例

なし

6)死亡症例・死因・剖検数・剖検率

脳出血 2
ALアミロイド 1
心不全 2
腎不全 2
敗血症 1
肺血栓塞栓症 1
9例

剖検数 1名 ; 剖検率 11%

7)主な検査・処置・治療件数

(1)腎生検

IgA腎症 37
膜性腎症 11
微小変化群 12
半月体形成性糸球体腎炎 4
巣状分節性糸球体硬化症 3
腎硬化症 7
糖尿病性腎症 2
ループス腎炎 4
間質性腎炎 5
アミロイドーシス 2
アルポート 1
膜性増殖性糸球体腎炎 3
その他 9
100例

(2)血液浄化療法(1月~12月の延べ数)

血液浄化療法総数 10,073
内訳
血液透析 9,460
特殊血液浄化 278
病棟出張透析 335
外来腹膜透析総数 489例

(3)新規透析導入患者数(1月~12月)

総導入数 133
内訳
血液透析 112
腹膜透析 21

(4)特殊血液浄化療法(1月~12月の延べ数)

単純血漿交換法 132
二重膜濾過血漿交換法 23
血漿吸着法 7
血液吸着法 65
LDL吸着法 11
腹水濃縮 27
265例

8)カンファランス症例

(1)診療科内

  • 腎生検カンファランス
    毎週火曜午後
    腎病理医との合同カンファランス
    週1~4例
  • リサーチカンファランス
    毎週火曜夕方
    臨床研究・基礎研究に関する討論会
  • 入院患者病棟カンファレンス
    毎週木曜16時

(2)他職種との合同

入院透析センターでは毎日14時30分より医師、看護師、臨床工学士を交え当日施行した入院および外来患者の透析療法を含む血液浄化法の問題点や患者の病態等につきミニカンファランスを行なっている。また、腎代替療法の選択についてのガイダンスを目的とした「とちまめ会」を当院透析部看護師と医師との合同で組織し、月1回のペースで定期的に学習の場を提供している。

医師、看護師、栄養士が参加して、外来腹膜透析症例については火曜日に、入院腹膜透析症例については金曜日に、それぞれ現状把握や問題点、今後の加療方針の検討を目的としたカンファランスを行っている。また、年3-4回程度外部講師を招聘し当院看護師、栄養士のみならず県内周辺医療機関の医師、看護師をも対象とした腹膜透析勉強会を開催し、円滑な地域連携や本県の透析医療の向上を目指している。

栄養部との合同事業として年数回、当院外来患者のみならず周辺医療機関の患者をも対象とした公開栄養講座を開催している。

4.2018年の目標・事業計画等

(1)慢性腎臓病に対する取り組み

本邦における血液透析患者数は31万人を超え、なお増加の一途をたどっており、包括的かつ有効なCKD対策の実効が新規透析導入患者の有意な減少に繋がる手段であることは確実に社会、業績、医療者に認識されるようになってきた。一方、狭心症や心筋梗塞など心臓血管疾患発症リスクを高める背景としても、CKDは近年広く周知されるようになってきた。2009年に発刊された「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009」も2013には「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」として、国際的なKDIGO(Kidney Disease Improving Global Guideline Outcomes)のCKDガイドラインを参考にしながら、日本人のためのガイドラインとして改訂され、資料の配布や講演会などを通じてより多くの医師への啓発が行われている。2015年には、腎障害進展抑制や透析導入回避、腎代替療法への円滑な移行や生命予後改善を目的とした、より具体的な診療の提案として「CKDステージG3b~5診療ガイドライン」も策定された。しかしながら、末期腎不全への進展を防ぎ透析患者数の増加を抑制するためには、更なる普及活動が必要な状態であることはいうまでもない。特にCKDによる多臓器合併症については各専門科との連携が重要であり、当科においても循環器、内分泌代謝科、神経内科と共同で県内外の医師に様々なCKD啓発講演を行ってきた。これらの講演会は一方的な知識の伝達にとどまらず専門医と家庭医の良好なコミュニケーションを築く場としても機能し当科外来の紹介率向上にも寄与してきたものと思われる。2016年度もさらにこのような連携の拡充を図る方針である。一方、CKDは糖尿病をはじめとする生活習慣病の合併率が極めて高く、これら疾患についての対策も必要とされている。2013年に改定された診療ガイドラインではこの点についての検討が未だ不十分であり、当科では運動療法の推進によるCKDと生活習慣病の改善を大きな目標として掲げ、近年創設された腎臓リハビリテーション学会の場を利用して積極的に情報を発信していく所存である。このような運動療法に特化した情報発信が栃木県より行われることは、生活習慣病による生命予後が不良とされている本県での運動療法普及の一助になるものと期待している。

(2)基礎研究への取り組み

当科ではCKDがどのような機序で心血管病を引き起こすのか、その機序の解明とそれらを抑制または予防する方法を、臨床医学並びに基礎医学の両面よりこれまでも多面的に検討してきた。近年では腎臓に特異的に発現するKlotho蛋白について本学分子病態治療研究センターの黒尾誠教授と共同研究を行い腎機能や骨代謝の面からの検討も行ってきた。特にこの分野ではカルシウムのnanoparticleによる動脈硬化への影響が着目されておりKlotho蛋白がこの機序に関連することが示唆されている。この点を踏まえ、この微小カルシウム血症が腎疾患患者の血管病変にどのような影響を与えているか今後の研究課題として取り組み、腎不全で生じる特異的な動脈硬化の機序解明を進めていく方針である。

(3)腹膜透析への取り組み

腹膜透析(PD)の重篤な合併症として被嚢性腹膜硬化症(EPS)が挙げられる。当科でもEPS患者を2000-2005年に経験した。有効な治療法がない本疾患は致死率が極めて高いため、これまで積極的に腹膜透析を導入してきた若年層への適応を制限し、患者への安全性を考慮してきた。その結果、2011年の腹膜透析導入率は栃木県が全国最下位となっている。しかし、その一方で当科ではEPSに関する研究論文を多数世界的に発信しており、この研究成果を基に実臨床でもEPS危険患者を早期に診断し安全に腹膜透析を離脱させるシステムを確立してきた。その結果、本院で管理を行っている腹膜透析患者のEPS発症率は2005年以降皆無となっている。一方、わが国の慢性透析患者の約97%は血液透析療法を受けていること、透析患者の死因の約4割は心筋梗塞などの心血管病であること、腹膜透析は血液透析に比べ心血管系への負担が少ないことなどを考慮すると、心疾患合併症例やブラッドアクセス作成困難な高齢の末期腎不全患者へのPD療法の積極的導入が望ましいと考えられる。

腹膜透析の安全性面での成果を踏まえ、2010年より当科でも積極的に腹膜透析導入を行う方針とし近年その成果が上がってきている。2017年度年以降も導入症例数の増加を目指し、更なる普及・推進を行う予定である。

(4)透析センター

当院での腎疾患加療は、2008年6月に病棟が本館2階東病棟に移設されたことを契機に、同じ病棟で腎臓内科医と腎臓外科医が緊密な連携のもとで診療可能となった。これにより医療圏内における透析診療中隔病院としての機能がより集約化され、ブラッドアクセストラブルや透析合併症症例への速やかな対応が可能になった。このような透析導入期や慢性期合併症に対する取り組みは一定の成果を上げてきた反面、安定維持期での健康増進を目指した透析医療についての取り組みは当院では行われていない状況であった。血液透析のみならず腹膜透析や腎移植も含めた多種腎代替療法を用い透析導入から離脱までの一貫した医療体制に寄与するために2013年度に、維持透析診療への基盤として外来透析センターが稼働した。この外来透析センターでは、これまで大学病院での検討が困難であった維持期血液透析患者に対する腎不全の様々な病態を検討する環境が整っており、今後透析患者の予後改善に向け更に尽力する所存である。また、入院、外来透析センターがそれぞれ独立して稼働したのを契機に2013年4月からは、組織自体もこれまでの透析部から透析センターに格上げされ当院での疾患別センター化考想の一翼を担っている。

(5)腎移植への取り組み

近年では免疫抑制療法の進歩に伴い生体腎移植のめざましい治療成績の向上が認められ、当院腎臓外科の移植後成績は日本でもトップクラスに達している。腎代替療法として移植の普及を行っていくことは腎臓内科にとっても重要な使命であり、当院でもここ数年、透析導入を介さずに腎移植を行うpreemptive renal transplantationの施行数が増加傾向にある。これは当院における腎臓外科医と腎臓内科医の連携が進んでいる査証でもあり今後もさらに栃木県における腎移植医療を進めていく所存である。

(6)コメディカルスタッフとの取り組み

透析医療は元より腎疾患医療は、看護師、栄養士、臨床工学士など多業種にわたったチームでの対応が不可欠である。このチーム医療を2016年度はさらに発展させていく方針である。透析部看護師による腎臓病教室は、CKD患者とその家族、最大20名を集め月1回、保存期または腎代替療法についてさまざまな情報を提供するもので、これまで参加者から高い評価を得て来た。今後も引き続きこの腎臓病教室をより充実した内容にしたいと考えている。また、新規PD患者数の増加に伴い、近隣の透析中堅病院や訪問看護ステーションとの連携システムが必要となってきた。この目的で他院のPD症例を対象とした診療、地域のPD症例サポートのための技術指導を近隣施設に対して行ない地域連携の効果を上げてきた。今後も対象施設数の充実を図りながら、引き続き堅固な地域連携を確立していく方針である。

5.過去実績