耳鼻咽喉科[アニュアルレポート]

1.スタッフ(平成29年4月1日現在)

科長 (教授) 西野 宏
副科長 (講師) 高野澤美奈子
外来医長 (講師) 佐々木 徹
病棟医長 (助教) 中村 謙一
医員 (教授) 伊藤 真人(子ども医療センター)
(准教授) 金澤 丈治
(地域医療学センター 地域医療支援部門)(派遣中)
牧野 伸子(公衆衛生学)
病院助教   上村佐恵子
川田 和己
今吉正一郎(医局長)
島田 茉莉
シニアレジデント   6名

2.診療科の特徴

悪性腫瘍領域

臨床腫瘍部、放射線治療部、形成外科、歯科口腔外科とCancer Boardをおこなっている。消化器外科、脳神経外科、胸部外科とは症例ごとに個別に検討をおこなっている。治療の目標は、癌の根治性と治療後の生活の質の両立である。上顎洞癌に対する集学治療は、国内外より高い評価を得ている。定位放射線治療、化学放射線治療、分子標的薬治療、頭蓋底手術など幅広い治療方法の選択が可能である。JCOGのメンバーとして、頭頸部癌治療の標準化作業と新規治療おこなっている。

耳領域

中耳炎外来、補聴器外来の2つの専門外来にて広く耳疾患の診療を行っている。中耳炎外来にて慢性中耳炎、真珠腫等に対する中耳手術の適応を検討の上、多数施行している。補聴器外来では、成人難聴患者に対する補聴器の適応を検討の上、補聴器のフィッティグを行っている。補聴器適合検査有資格施設である。また言語聴覚士の協力の小児難聴症例に対する補聴器装用訓練、言語訓練を行っている。また聾・高度難聴症例対しては人工内耳手術を成人・小児とも施行している。日本耳鼻咽喉科学会指定の新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関としてスクリーニング後の精密検査、診断、および難聴者の療育も行っている。「先天性難聴の遺伝子診断」の認可施設として、遺伝子診断結果も取り入れている。これにより高度な先天性難聴の診療が可能となっている。

鼻領域

内視鏡下副鼻腔手術による副鼻腔炎治療は術後の精力的な治療とあいまって高い治癒率を誇り、患者の満足度が高い。近年は難しい部位にある副鼻腔炎や腫瘍に対して、ナビゲーションシステムを併用し安全に治療が行えるようになってきた。難治性鼻出血で知られるオスラー病に対しては外科手術治療や保存的治療を行い、他医師からの紹介や、インターネット検索による診療希望の患者が全国から集まってくる。これには鼻腔粘膜皮膚置換術や外鼻孔閉鎖術により対応し、その後の生活の質の改善をみている。オスラー病に対する保存的治療の臨床研究も行っており、効果が期待できる。アレルギー性鼻炎に対しての基礎的、臨床的研究が進行している。外科的にはレーザー下鼻甲介焼灼法により頑固な鼻閉に対処しているが、これで対応できない難治例に対しては鼻中隔矯正術+粘膜下下鼻甲介骨切除術+粘膜下層のレーザー焼灼術+後鼻神経切断術もしくはそのいずれかを行っており、満足の行く結果が得られている。嗅覚障害については基礎研究でめざましい成果が得られており、臨床においても北関東のセンター的役割を担っている。また下垂体腫瘍についても脳神経外科と共同で年間20例ほど経鼻内視鏡下手術を行っている。髄液漏に対しても経鼻的手術での対応を行い、良好な経過を得ている。

口腔咽頭領域

睡眠時無呼吸症候群の重症度評価を専門外来にておこなっている。IgA腎症に対する扁桃摘出術+ステロイドパルス療法を腎臓内科と協力して施行している。

嚥下領域

今後の耳鼻咽喉科診療の重点項目と認識する。人材の育成および歯科口腔外科との診療連携をすすめている。嚥下リハビリ、嚥下改善手術、誤嚥防止手術を施行している。県内を中心とした関連職種への啓蒙や、摂食・嚥下医療福祉の地域連携を確立すべく活動をしている。

音声領域

音声障害は、コミュニケーション能力を著しく低下させ、社会復帰を困難なものにしている。このような嗄声にたいする喉頭機能外科は、近年、著しい進歩を遂げている。当科では、音声専門外来を設置し治療にあたっている。片側性反回神経麻痺の音声障害には、軽症例には脂肪注入術などの喉頭内手術を、重症例には喉頭枠組手術を行い良好な結果を得ている。また、声帯溝症や加齢性声帯萎縮症の音声障害には、声帯への筋膜移植などを行っている。現在、増殖因子の声帯への局所注入療法を開発中であり、臨床治験の段階ではあるが一定の成果を得ている。今後は、遺伝子治療の技術も応用し安定した治療法として確立したい。手術以外にも、保存的な音声治療も行っており職業歌手に対する音声指導なども対象としている。

頸部領域

甲状腺機能亢進症の外科手術に取り組んでいる。

小児耳鼻咽喉科領域

慢性中耳炎(穿孔性中耳炎、真珠腫性中耳炎)、先天性難聴(高度難聴、先天性中耳・内耳奇形)などの小児難聴、小児滲出性中耳炎、反復性中耳炎、睡眠時無呼吸症、顔面神経麻痺や上気道狭窄の評価・治療などを行っている。手術では、耳科領域では慢性穿孔性中耳炎、真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術や、人工内耳(手術困難例や重複障害にも)を積極的に行っている。安全・確実に耳の病変を治すとともに、聴力改善を目指した手術治療を行っている。また小児滲出性中耳炎に対しては、本邦の「小児滲出性中耳炎ガイドライン」作成委員長として、ガイドライン初版および改訂版の作成にあたり、エビデンスに基づいた適正治療に勤めている。

施設認定

日本耳鼻咽喉科学会認定医制度指定施設
日本気管食道科学会認定医制度指定施設
日本アレルギー学会認定医制度指定施設
日本頭頸部外科学会認定頭頸部がん専門医制度研修施設

専門医

日本耳鼻咽喉科学専門医 西野  宏 他9名
日本癌治療学会臨床試験登録医 西野  宏
日本アレルギー学会専門医 今吉正一郎
日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴担当医 西野  宏
日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医 西野  宏 他7名
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 西野  宏、金澤 丈治
日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医 西野  宏、金澤 丈治、川田 和己

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者数・再来患者数・紹介率

新来患者数 1,823人
再来患者数 19,941人
紹介率 101.9%

2)入院患者

2016年 入院患者数内訳(病名別)
入院件数:1,015

領域病名患者数
突発性難聴、急性感音難聴 34
先天性真珠腫、真珠腫性中耳炎 34
慢性中耳炎 23
滲出性中耳炎 42
耳硬化症、伝音難聴 15
先天性耳瘻孔 13
外耳道腫瘍 4
顔面神経麻痺 16
めまい症 13
その他 12
小計 206
鼻・副鼻腔 鼻出血 10
鼻中隔彎曲症 5
慢性副鼻腔炎 54
術後性上顎嚢胞、副鼻腔嚢胞 19
鼻副鼻腔腫瘍 11
鼻腔癌 6
上顎洞癌 10
篩骨洞癌 5
その他 10
小計 130
口腔・咽喉頭・頸部 睡眠時無呼吸症候群 42
アデノイド増殖症 4
急性咽喉頭炎・急性扁桃炎 21
扁桃周囲炎・膿瘍 47
反復性、慢性扁桃炎 53
扁桃病巣疾患 13
急性喉頭蓋炎 10
声帯ポリープ、結節 19
喉頭蓋嚢胞 4
反回神経麻痺 3
喉頭腫瘍 13
口腔咽頭腫瘍 6
舌腫瘍 1
顎下腺腫瘍 7
耳下腺腫瘍 31
甲状腺腫瘍 28
副甲状腺腫 14
正中頸嚢胞 3
頸部腫瘍 10
頸部膿瘍 15
頸部リンパ節腫脹 8
上咽頭癌 7
中咽頭癌 30
下咽頭癌 37
喉頭癌 51
甲状腺癌 66
耳下腺癌 7
舌癌 27
顎下腺癌 1
口腔癌 8
頸部リンパ節転移 15
原因不明癌 9
その他 57
小計 679

手術術式件数:1,060件

領域術式患者数
鼓室形成術 63
乳突削開術 28
鼓膜換気チューブ留置術 87
鼓膜形成術 4
人工内耳埋込術 3
アブミ骨手術 5
内耳窓開放術 2
外耳道腫瘍摘出術 2
顔面神経減荷術 1
耳瘻管摘出術 14
その他 6
小計 215
鼻副鼻腔 内視鏡下副鼻腔手術 110
鼻中隔矯正術 18
粘膜下下鼻甲介骨切除術 21
鼻副鼻腔腫瘍摘出術 7
鼻副鼻腔悪性腫瘍手術(切除) 6
鼻副鼻腔悪性腫瘍(切除・再建術) 3
その他 4
小計 169
咽喉頭、頸部 口蓋扁桃摘出術 218
アデノイド切除術 42
喉頭微細手術(ポリープ切除、腫瘍生検) 27
喉頭腫瘍摘出術(直達鏡下) 22
中咽頭腫瘍摘出術 2
気管切開術 42
頸嚢摘出術 10
頸部腫瘍摘出術 3
耳下腺腫瘍摘出術 29
顎下腺摘出術 10
口腔腫瘍摘出術 2
嚥下改善手術 16
副甲状腺腺腫摘出術 15
甲状腺悪性腫瘍手術(切除) 37
甲状腺悪性腫瘍手術(全摘) 22
甲状腺部分切除 36
扁桃悪性腫瘍手術 9
舌部分切除 11
舌悪性腫瘍手術(亜全摘、全摘) 5
喉頭悪性腫瘍手術 3
中咽頭悪性腫瘍切除、再建術 5
下咽頭悪性腫瘍切除、再建術 6
頸部郭清術 58
リンパ節摘出術 20
その他 26
小計 676

3)術後合併症

反回神経麻痺 2例
顔面神経麻痺 1例
乳び漏 4例
髄液鼻漏 1例

4)化学療法症例・数

臨床腫瘍部と連携し、がん化学療法を施行している。日本がん治療認定医機構がん治療認定医および日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医の資格をもつ耳鼻咽喉科医師のもとにがん化学療法がおこなわれている。入院がん化学療法は9名におこなわれ、内容はdocetaxel+cisplatin+5-FU, docetaxel+cisplatin+cetuximab,cisplatin+5-FUであった。

5)放射線療法症例・数

放射線治療は60名におこなわれた。41名が放射線治療、26名が抗がん薬同時併用の放射線治療、2名が分子標的薬同時併用の放射線治療であった。

6)悪性腫瘍の疾患別および臨床進行期別ならびに治療法別治療成績

カプランマイヤー法を用いた5年全生存割合(%)を表にしめす療法の選択は、病理型、病期、社会的背景、患者さんの希望などを総合的に判断し、個々の症例できめている。そのため、治療の標準化が難しい領域と考える。治療の目標は、癌の根治性を損なう事なく、形態と機能保存をおこなうことである。治療成績の向上とともに異時性重複癌をみとめる場合が過去と比べ多くなってきている。今後はこの異時性重複癌の治療が課題と考える。

病期IIIIIIIV
上顎洞癌 なし 100 77 58
声門癌 100 93 95 88
声門上癌 100 97 82 76
上咽頭癌 100 なし 67 82
中咽頭癌 100 77 75 67
下咽頭癌 100 67 73 63
口腔癌 88 91 88 56
甲状腺癌 100 100 95 100
唾液腺癌 100 94 100 72

7)死亡症例

死亡症例     15例

死因 原病死
剖検数・率 2例

8)外来手術

術式件数
鼓膜切開術 58
鼓膜チューブ留置術 18
外耳道生検 4
中耳生検 4
外耳生検 4
鼓膜形成術 3
鼓膜生検 2
外耳道真珠腫摘出術 1
外耳道腫瘤摘出術 1
耳茸摘出術 1
   
鼻腔生検 28
鼻茸切除術 13
鼻粘膜焼灼術 7
鼻骨骨折整復術 2
下鼻甲介生検 1
下鼻甲介粘膜焼灼術 2
鼻内上顎洞開窓術 1
副鼻腔生検 1
鼻腔乳頭腫摘出術 1
鼻内異物摘出術 1
鼻腫瘤切除術 1
鼻前庭嚢胞摘出術 1
副鼻腔自然開大術 1
鼻中隔軟骨骨折整復術 1
篩骨洞生検 4
頬粘膜生検 3
上顎洞開窓術 1
上顎洞生検 1
   
扁桃生検 17
扁桃周囲膿瘍切開術 6
扁桃切開排膿術 1
舌生検術 7
舌粘膜(血管腫)焼灼術 1
上咽頭生検 18
中咽頭生検 42
下咽頭生検 20
喉頭生検 32
喉頭異物除去術 8
喉頭生検 1
口唇腫瘍摘出術 1
口腔生検 1
口腔底生検 3
歯肉生検 1
下口唇嚢胞切除術 1
声帯生検 5
口蓋生検 3
頸部リンパ節摘出術 15
頸部リンパ節針生検 13
頸部リンパ節生検 12
頭頸部郭清リンパ節生検 10
頭頸部腫瘤生検 1
頸部皮下腫瘤切除術 1
頸部皮膚筋肉生検 1
顎下腺針生検 1
耳下腺針生検 2
気管孔閉鎖術 9
気管肉芽除去術 2
気管切開孔閉鎖術 3
皮膚皮下腫瘤摘出術 2
皮下組織摘出術 1
皮膚生検 1
唾石摘出術 3
異物摘出術 1
合計件数 411

9)カンファレンス症例

(1)診療科内

術前カンファレンス 682例

(2)他科との合同

放射線科カンファレンス 80例(定期)

(3)他職種との合同

病棟看護師とのカンファレンス:入院患者カンファレンスに準じる

4.2017年の目標・事業計画等

専門医プログラム:耳鼻咽喉科では専門医プログラムが来年度より実施される為、教育体制の充実が重要である。

スタッフの増員:診療体制と学生・研修医の教育の充実にはスタッフの充実が大切である。今後も引き続きスタッフの確保に重点をおきたい。

診療結果のフィードバック:治験、臨床試験はもとより、臨床結果を検証し、報告する義務があると考える。学会発表と論文報告による検証をおこない、常に最善の医療の提供に努力する。

5.過去実績

2015年アニュアルレポート

2014年アニュアルレポート

2013年アニュアルレポート

2012年アニュアルレポート

2011年アニュアルレポート

2010年アニュアルレポート

2009年アニュアルレポート

2008年アニュアルレポート

自治医科大学附属病院

〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1

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