移植外科[アニュアルレポート]

1.スタッフ(平成23年4月1日現在)

科長 (准教授) 水田 耕一
外来医長 (病院講師) 浦橋 泰然
医局長 (病院助教) 眞田 幸弘
病棟医長 (病院助教) 脇屋 太一
客員教授   河原﨑秀雄

2.診療科の特徴

当診療科の特徴は、

  1. 病院をあげた支援体制のもと、18才未満の小児に特化した移植施設
  2. 年間症例数(2010年は24例)は、本邦の小児生体肝移植の約20%
  3. 胆道閉鎖症が疾患の75%を占め、胆道閉鎖症に対する年間肝移植数(16例)は本邦最多
  4. OTC欠損症、新生児肝移植など稀な疾患に対する肝移植数が本邦最多
  5. 移植後1年生存率、5年生存率がともに96%と全国平均比べ約10%以上高く本邦最高

などになる。2010年に当科で行われた生体肝移植は24例であり、胆道閉鎖症16例、OTC欠損症4例、先天性門脈欠損症1例、劇症肝炎1例、原発性硬化性胆管炎1例、胆汁うっ滞性肝硬変1例である。
体重5kg以下の症例が3例あり、広島県から搬送された生後38日目の劇症肝炎の新生児症例に対し、緊急生体肝移植を施行し、無事救命することができました。
移植後の合併症に対しては、消化器内科(胆道合併症)や放射線科(血管合併症)の御協力のもと小腸内視鏡やIVRを中心とした、より侵襲の少ない方法での治療を行い、良好な成績が得られている。
当院で肝移植をされた患者さんは、2010年12月までに、17都道府県から186例であり、日本の小児肝移植の拠点施設として確立されている。
また、臓器移植法の改正による脳死移植施設の拡充に伴い、小児肝移植の実績より、2010年7月に、全国60の移植施設の中から小児専門の脳死肝移植施設に認定されました。

専門医、指導医

日本外科学会指導医 水田 耕一、河原﨑秀雄
日本外科学会専門医 浦橋 泰然、江上  聡、眞田 幸弘
日本小児外科学会理事・指導医 河原﨑 秀雄
日本小児外科学会評議員・専門医 水田 耕一
日本移植学会評議員 水田 耕一、河原﨑秀雄
日本肝移植研究会世話人 水田 耕一
日本病態栄養学会専門医 江上 聡

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1 新来患者数・再来患者数・紹介率

外来患者総数 2,000人
新来患者数 48人
再来患者数 1,952人
紹介率 68.8%

2 入院患者数(病名別)

入院患者総数 重複あり

病名患者数病名患者数
胆道閉鎖症 17 肝移植後肝機能障害 37
胆汁うっ滞性肝硬変 1 肝移植後胆管狭窄 10
原発性硬化性胆管炎 2 肝移植後胆管炎 3
OTC欠損症 7 肝移植後門脈狭窄 5
先天性門脈欠損症 1 肝移植後肝静脈狭窄 2
新生児ヘモクロマトーシス 1 肝移植後胃腸炎 7
劇症肝炎 2 肝移植後細菌感染症 4
COACH症候群 2 肝移植後CMV感染症 3
    肝移植後右横隔膜下膿瘍 1
肝移植後 66 肝移植後消化管出血 2
    肝移植後イレウス 2
    肝移植後腸管癒着症 1
    肝移植後好中球減少症 2
肝移植ドナー 2 肝移植後病的骨折 1
    合計 181

3-1 手術症例病名別件数

病名人数
胆道閉鎖症 19
OTC欠損症 5
先天性門脈欠損症 1
胆汁うっ滞性肝硬変 3
劇症肝炎 1
原発性硬化性胆管炎 1
肝移植後腹腔内出血 2
腹部コンパートメント症候群 2
肝移植後胆管狭窄 11
肝移植後胆管炎 3
肝移植後門脈狭窄 5
肝移植後肝静脈狭窄 2
肝移植後イレウス 2
腹壁瘢痕ヘルニア 1
脾機能亢進症 1
食道静脈瘤 2
合計 61

3-2 手術術式別件数・術後合併症件数

術式患者数
生体肝移植 24
  胆道閉鎖症 16
OTC欠損症 4
先天性門脈欠損症 1
胆汁うっ滞性肝硬変 1
劇症肝炎 1
原発性硬化性胆管炎 1
胆管合併症 14
  PTCD 3
小腸鏡 2
小腸鏡+胆管IVR 4
胆道鏡 1
胆道鏡+胆管IVR 4
血管合併症 7
  門脈IVR 5
肝動脈IVR 2
その他 16
  開腹イレウス解除術 2
試験開腹 2
開腹止血術 2
上部消化管内視鏡 2
腹壁瘢痕ヘルニア根治術 1
脾臓摘出術 1
CV挿入 5
VasCath挿入 1
合計 61

(手術・全麻処置 61件)

4 化学療法症例・数

該当なし

5 放射線療法症例・数

該当なし

6 その他の治療症例・数

ABO血液型不適合、またはクロスマッチ陽性
肝移植におけるリツキシマブ療法 2例

7 悪性腫瘍の疾患別および臨床進行期別ならびに治療法別治療成績

該当なし

8 死亡症例

なし

9 主な処置・検査

1)腹部超音波検査(含むカラードップラー)

肝移植術前術後の入院症例に対し定期的に行った。特に移植術後の症例は1日2~4回施行し、術後合併症の早期発見に努めた。入院患者(1日平均5人)に対しては、早期合併症の検索のため平均3人/日のペースで施行した。外来患者(1日平均8人)に対しては、遅発性合併症の検索のため平均5人/日のペースで施行した。

2)肝生検(2010年:計148件/年)

移植手術時の全身麻酔下、開腹下での肝生検(楔状切除)24件、血管・胆管合併症の処置など全身麻酔時の肝生検(針生検)に加え、肝移植前の肝機能評価や酵素活性評価、肝移植後の肝機能障害(急性拒絶反応)、肝移植後プロトコール肝生検(術後2、5、10年)、及び他科からの依頼症例に対し、全身麻酔下、静脈麻酔下、局部麻酔下において、肝生検(針生検)124件を施行した。

3)胆道造影(2010年:計33件/年)

こども医療センター放射線部において、肝移植後胆管狭窄によるPTCD挿入症例に対し、PTCDカテ交換、PTCDカテ抜去を含め、胆道造影を施行した。

4)消化管造影(2010年:計7件/年)

こども医療センター放射線部において、肝移植後通過障害症例(腸閉塞症例)に対し、イレウス管挿入を含め、消化管造影を施行した。

5)ドレーン処置(2010年:計8件/年)

肝移植前後の胸水貯留症例に対し、こども医療センター放射線部において、超音波ガイド下、透視下による腹腔穿刺3件を行った。その他、肝移植前後の胸腹水貯留症例に対し、病棟での超音波ガイド下による胸腔・腹腔穿刺処置4件肝移植後の腹腔ドレーン挿入症例に対し、こども医療センター放射線部において、腹腔ドレーン交換1件の透視下処置を施行した。

10 カンファランス症例

(1)病棟・外来症例カンファランス

平日の朝夕2回、全入院患者における病棟カンファ、ならびに外来患者で特に問題がある症例をピックアップし他科医師と合同の症例検討会を行った。

(2)術前カンファランス

肝移植2日前に、肝移植症例毎に麻酔科、ICU、消化器外科スタッフ、手術室・ICU看護師、臨床薬理、薬剤部、止血血栓研究部らと術前カンファランスを施行した。

(3)手術カンファランス

術前から合併症の多い症例、術前状態や疾患より困難な手術手技が予想される症例に対して、術中・術後のあらゆるバリエーションを想定した手術カンファランスを施行した。

(4)合併症・治療方針カンファランス

術後の合併症にて入退院を繰り返している症例や、複雑な合併症例例に対して、治療方針の決定のためのカンファランスを行った。

(5)CPC

該当なし

(6)大学院特別講義

6月3日 演題「変化する化学療法と外科治療の接点」
講師 弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座 袴田健一教授

4.事業計画・来年の目標等

(1)手術成績の更なる向上

短期的手術成績では、術後生存率100%を目指す同時に手術時間、入院期間の短縮に努める。長期成績では、遅発性合併症の早期診断、早期治療により、グラフト生存率、患者生存率ともに1年、5年、10年生存率を95%以上に保つ。

(2)新生児症例に対する肝移植

新生児期に肝移植が必要な劇症肝炎や、ヘモクロマトーシスのような代謝性疾患に対する生体肝移植は、技術的にも術前術後管理においても困難を要する。本年も、昨年の2例に続き、1例の新生児発症の劇症肝不全症例が広島県から紹介され、緊急肝移植で救命することができた。日本有数の小児肝移植数と成績を誇る当施設では、今後もそのニーズが高いと予想され、ハード面、ソフト面において、新生児肝移植症例に対応できるシステム造りを確立する。

(3)脳死肝移植の実施

2008年、国際移植学会で、海外渡航移植の制限・臓器売買の禁止・死体移植の推進を骨子としたイスタンブール宣言が制定された。それを受けて、日本でも臓器移植法が改正され、2010年7月から施行された。当施設も、小児肝移植の実績より、全国21の肝移植施設の一つに認定された。認定された責任を重く受け止め、脳死肝移植を実施成功させ、認定施設としての役割を果たす。

(4)非肝移植治療の研究

劇症肝不全における内科的治療を強化し、同時に適切な肝移植適応の指標を探求する。OTC欠損症に対するOTC活性やアミノ酸分析の推移より、OTC欠損症に対する移植適応や移植時期を検討する。

5.過去実績

2009年アニュアルレポート

2008年アニュアルレポート

  • 東日本大震災関連情報

自治医科大学附属病院

〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1

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