小児脳神経外科[アニュアルレポート]

1.スタッフ(平成29年4月1日現在)

科長(学内教授) 五味  玲
シニアレジデント 1名

2.診療科の特徴

先天奇形(二分脊椎、水頭症など)、脳腫瘍、脳血管障害(もやもや病など)、外傷など、小児脳神経外科疾患全てをまんべんなく扱っている。2016年1月に脳神経外科にてんかんが専門の川合謙介教授が就任され、小児のてんかん手術も本格的に始まった。診療は3人体制が望ましいが、五味以外は脳神経外科からのローテーションで対応しており、2名体制にならざるを得ない場合も多い。

①先天奇形(二分脊椎、水頭症など)

二分脊椎手術の今年の特徴は、再係留に対する手術が4件と多かった点である。手術時の年齢は8-11歳であった。そのうち3例は初回手術を他院で施行されている。当センターの二分脊椎外来でのfollow upを依頼され経過を見てきた例で、いよいよ再係留の症状が出現したため手術としたものである。

二分脊椎外来は2008年から開設しており、小児脳神経外科、小児泌尿器科、小児整形外科、小児外科、小児科などの他科が協力して診療を行っており、治療方針の決定も月に1回の二分脊椎カンファレンスで検討している。他施設からの紹介例も増えており、今後このような手術例も増えてくると考えられる。

脊髄髄膜瘤症例は1例であったが、今年も18トリソミーの症例であり、出生前から産婦人科、小児科と相談し治療計画し患者対応を行い、出生後も患児の状態に応じてNICU、形成外科と共同で治療し良好に経過した。

新生児・乳児の仙尾部皮膚異常の紹介はさらに増加しており、潜在性二分脊椎症例の発見の頻度はさらに高くなっている。ただし、脊髄脂肪腫でもfilar typeの手術適応は慎重に検討することにしており、手術症例は円錐部脂肪腫や脊髄脂肪髄膜瘤などのより重症な例が中心になってきている。当然手術難度が増している。

水頭症のシャント手術は16件であったが、新規先天性水頭症例は2名2件と少なく、それ以外はシャント不全による再建術であった。シャント留置後の長期経過観察例が増えているためと考える。

神経内視鏡手術は6件であった。いずれも軟性鏡手術である。水頭症に対する第三脳室底開窓術は2件のみで、3件は脳室内腫瘍の摘出であった。5ALAによる光線力学診断を内視鏡でも用いるシステムを確立できた。1件はDandy Walker奇形に対する手術で、脳室腹腔シャントの脳室管を軟性鏡下に中脳水道を介し後頭蓋窩嚢胞に誘導する方法に成功した。

Chiari奇形の再燃例に大後頭孔減圧術を施行したが、硬膜補強剤の影響か1か月後に髄液漏をきたし空洞も再燃した。これに対しては硬膜を補強し、頚髄の空洞に対し空洞−くも膜下シャントを行い著効した。

②脳脊髄腫瘍

手術、放射線、化学療法を含めた総合的な治療体制を確立して治療に当たっている。小児脳脊髄腫瘍全般を対象としている。

2015年の新規患者は8名であった。中脳腫瘍1名、髄芽腫が1名、上衣腫が2名、側脳室脈絡叢乳頭腫1名、ランゲルハンス細胞組織球症などの骨腫瘍3名であった。

テント下上衣腫は1歳の乳幼児例でありしかも巨大な腫瘍であったため、治療方針に苦慮した。複数回の手術と、小児科における綿密な化学療法を行いさらに放射線治療について検討するなどチームでの治療が有用であった。

化学療法症例は9例で上衣腫やランゲルハンス細胞組織球症は小児科血液腫瘍班と共同で治療した。髄芽腫では年少児にも末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法が可能であり、再発難治髄芽腫の3例に対しても、症例毎に十分検討し化学療法を選択した。

一方、神経膠腫や上衣腫に対する治療は小児脳神経外科単独で行っているものもある。低悪性度グリオーマに対するVBL単独療法や、上衣腫例に対する経口エトポシド療法については外来で施行した。外来での点滴治療は、患者のQOLを考慮すると有用であるが、外来診療医が1人なので対応に限界がある点は問題である。

脳腫瘍患児に対しては小児緩和ケアチームカンファレンスで治療の初期段階から検討し、他科や看護師・心理士・地域支援などの他職種と一体化して対応する体制が確立してきた。本年は髄芽腫の児と脳幹部グリオーマの児の2名が亡くなったが、2名とも当院と連携した在宅訪問診療医によりお看取りした。地域連携が有効に機能した結果であった。

③脳血管障害

もやもや病は2例の直接&間接血行再建術と2例の間接的血行再建術を行った。年長児には、直接間接を積極的に行う方針としている。脳動静脈奇形出血例は2名で、いずれも定位放射線治療(Xナイフ)を施行した。そのうち1例は、血管内治療も併用し流入動脈の動脈瘤の塞栓術をXナイフに先行して行った。新生児脳出血は止血に難渋し再手術となったが、幸い順調に回復した。

④頭部外傷

頭部外傷の手術例は6例と例年より多かった。急性硬膜外血腫3例、開放陥没骨折2例、慢性硬膜下血腫1例である。

虐待が疑われる例が何例かはあり、小児虐待対策委員会による迅速で客観的で適切な対応が可能となっている。

⑤機能的疾患(てんかん)

前述したように小児のてんかん手術が本格的に始まった。今年は4例の手術を行った。1例が全脳梁離断術で、2例が迷走神経刺激装置留置術、1例が迷走神経刺激装置交換術であった。自治医科大学附属病院が全国8施設が指定されたてんかん拠点病院の一つになったことから、今後も症例が増加することが考えられる。

認定施設

日本小児血液・がん専門医研修施設

専門医

日本脳神経外科学会専門医 五味  玲
日本神経内視鏡学会技術認定医 五味  玲
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 五味  玲

3.診療実績・クリニカルインディケーター

1)新来患者数・再来患者数・紹介率

新来患者数 77人
再来患者数 1,419人
紹介率 100.0%

2)入院患者数 (病名別)

病 名 患者数
頭部外傷 15
脳腫瘍 17
二分脊椎 12
水頭症 12
キアリ奇形 3
てんかん 6
もやもや病 7
その他 7
合計 79

3)手術症例病名別件数

病 名症例数
脳腫瘍 17
二分脊椎 14
キアリ奇形+脳奇形 7
てんかん 4
血管奇形 4
もやもや病 4
シャント手術 16
内視鏡手術 6
頭蓋形成術 8
その他 17
合計 97

4)化学療法症例病名別・数

病名 症例数
髄芽腫・胎児性腫瘍 3
上衣腫
低悪性度神経膠腫 2
合計 7

化学療法マニュアル

CARE:CBDCA+VP-16
CBDCA+VCR(外来で可能)
VBL単独(外来で可能)
TMZ単独(外来で可能)
Avastin単独(外来で可能)
経口VP-16療法(外来で可能)
その他の化学療法は小児科転科で施行している。

5)放射線療法症例・数

上衣腫1例

脳動静脈奇形に対する定位放射線治療2例

6)悪性腫瘍の疾患別治療成績

脳幹部神経膠腫 平均生存期間15ヶ月
髄芽腫 5年生存率 83%

7)死亡症例・死因・剖検数・剖検率

当科での死亡症例はないが、当院で治療していた 脳腫瘍2名(髄芽腫・橋神経膠腫)が在宅で死亡し た。

8)カンファランス症例

二分脊椎カンファレンス
第二月曜日(休日の時は第一)

2/8 症例提示・検討会
3/14 症例提示・検討会
4/11 症例提示・検討会
5/9 症例呈示・検討会
6/13 症例呈示・検討会
7/11 症例呈示・検討会
9/12 症例呈示・検討会
10/3 症例提示・検討会
11/14 症例提示・検討会
12/12 症例提示・検討会

その他は脳神経外科と同様に行っている。
小児緩和ケアチームカンファレンス(隔週火曜日)
虐待についてのカンファレンス:適宜開催

4.2017年の目標・事業計画等

  • スタッフの増員による診療の充実を目指す。
  • JCCG脳腫瘍グループとしての共同研究を行う。
  • 頭蓋骨縫合早期癒合症患者の脳機能面での評価法を検討する。

5.過去実績

2015年アニュアルレポート

2014年アニュアルレポート

2013年アニュアルレポート

2012年アニュアルレポート

2011年アニュアルレポート

2010年アニュアルレポート

2009年アニュアルレポート

2008年アニュアルレポート

自治医科大学附属病院

〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1

地図

お問合わせ電話番号

0285-44-2111(代)

ページトップへ