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輸血・細胞移植部【アニュアルレポート】

1.スタッフ(2023年4月1日現在)

部長 (教授) 藤原慎一郎
医員 (講師) 山本 千裕(兼)
(助教) 永山 隆史
参与 岸野 光司
他 臨床検査技師 10名

2.輸血・細胞移植部の特徴

当部は、輸血業務と細胞移植業務の2つの業務を行っていることが大きな特徴である。輸血業務に関しては、日本輸血・細胞治療学会の認定医師2人と認定検査技師5人を擁し、専門性の高い輸血検査と適正な輸血療法の推進を行っている。輸血業務は24時間体制で行っており、時間外の輸血依頼に対して迅速かつ的確な対応をとっている。更に、2017年1月より院内のアルブミン製剤を薬剤部から当部に移管し、診療科からの依頼・準備・出庫まですべて一元管理を行っている。また、在庫管理や診療科別使用状況なども把握し、アルブミン製剤の適正使用の推進を図っている。

さらに輸血療法委員会において、血液製剤・アルブミン製剤の使用状況などを基に適正使用について討議されている。

2019年6月より移植後、2020年4月より移植前の抗HLA抗体検査を外注から当部で行い、迅速に結果報告が可能となった。また、臓器移植(肝臓・腎臓)におけるHLA抗原検査を行っている。2021年4月よりHLA抗原検査を専用機器を用いて自動解析し、更に高感度に判定ができる予定である。

自己血貯血と末梢血幹細胞採取は、輸血検査室に隣接した自己血ルームで行うため、輸血検査室との動線が短く機能的である。自己血採血に係る業務もオーダリングシステムを取り入れている。自己血採血室には看護師2人が勤務し、自己血採血に係る業務全般と末梢血幹細胞移植に携わっている。輸血検査室に隣接して臨床用細胞プロセシング室と実験室がある。実験室では臨床検査技師が造血幹細胞移植のための細胞処理を行なっている。液体窒素タンクで臍帯血移植に用いる臍帯血を保存し、-145℃の冷凍庫で末梢血幹細胞を保存管理している。

施設認定

日本輸血・細胞治療学会 輸血機能評価認定制度(I&A制度)認定施設
日本適合性認定協会 ISO15189 臨床検査室 認定施設

認定医

日本輸血・細胞治療学会 輸血認定医   藤原慎一郎、山本 千裕

認定検査技師

日本輸血・細胞治療学会 認定輸血検査技師   岸野 光司、他4名

認定管理師

日本輸血・細胞治療学会 細胞治療認定管理師   藤原慎一郎、岸野 光司、尾島佐恵子、武井 生成

3.業務内容と実績(2022年1月~12月)

輸血業務では、血液型判定(18,817件)、不規則抗体検査、交差適合試験(20,399単位)、血液製剤への放射線照射等の一般輸血検査、診療科別の使用血液製剤の把握、廃棄血の把握、在庫管理などを行った。輸血副作用の収集を行い必要な対策を講じた。組織適合性検査は腎移植と肝移植の患者とドナーのHLA抗原検査(計109件)、2020年4月より移植前HLA抗体検査(104件)を実施し、移植後は抗HLA抗体スクリーニング検査(429件)、同定検査(567件)、リンパ球クロスマッチを行った。

その他、AおよびB型糖転移酵素活性の測定、抗Aおよび抗B抗体価の測定を行った。病院全体での1年間の輸血用血液製剤とアルブミンの使用量は、赤血球濃厚液15,551単位、新鮮凍結血漿10,737単位(うち血漿交換で使用量3,001単位)、血小板濃厚液42,477単位、アルブミン9,767gであった。自己血貯血では、自己血貯血のガイドラインに従い、74人(144件、赤血球208単位)の自己血貯血を行った。輸血管理料Iに係る比を計算すると、新鮮凍結血漿/赤血球製剤は0.59、アルブミン/赤血球製剤は2.0であった。輸血副作用を収集したが、1年間に211件の輸血副作用が報告された。その60.7%が血小板濃厚液によるもので、大部分は蕁麻疹等の軽度のアレルギー反応であった。細胞移植業務では、手術室で同胞ドナーと骨髄バンクドナーから骨髄血を採取(10人)し、自己血採血室の血液成分採血装置を用いて末梢血幹細胞移植ドナーと患者自身から末梢血幹細胞を採取(59人、75回)した。移植用臍帯血(7件)を保管した。フローサイトメトリーを用いた造血器腫瘍の診断と残存腫瘍細胞の検出、造血前駆細胞の測定(CD34陽性細胞数)を行った(1,678件)。

4.研究業績

A)原著論文及びその他の論文

  1. 秋山 友子、岸野 光司、古川 泳玉、他:ニボルマブ与後に発症した自己免疫性溶血性貧血.日本輸血・細胞治療学会誌 第68巻 第4号:486-490,2022

B)学会発表

  1. 秋山 小雪,岸野 光司,黒瀬 幸汰,古川 泳玉,今野 雄斗,武井 生成,秋山 友子,進藤 聖子,尾島佐恵子,小林 美佳,大槻 郁子,山本 千裕,藤原慎一郎:当院の小児における輸血用血液製剤分割の運用.第153回日本輸血・細胞治療学会関東甲信越支部例会抄録集.P17,2022
  2. 尾島佐恵子,岸野 光司,大槻 郁子,武井 生成,黒瀬 幸汰,古川 泳玉,今野 雄斗,秋山 小雪,秋山 友子,進藤 聖子,小林 美佳,伊藤 祥子,山本 千裕,藤原慎一郎:発作性夜間ヘモグロビン尿症における非血縁者間骨髄移植の一例.第70回日本輸血・細胞治療学会誌.第67巻 第2号:352,2022
  3. 今野 雄斗,岸野 光司,黒瀬 幸汰,古川 泳玉,秋山 小雪,武井 生成,秋山 友子,進藤 聖子,尾島佐恵子,小林 美佳,大槻 郁子,山本 千裕,藤原慎一郎:心臓血管外科手術における血液製剤使用量削減への取り組みについて.第154回日本輸血・細胞治療学会関東甲信越支部例会抄録集.P14,2022
  4. 大槻 郁子:当院における血液製剤発注システムの運用.第154回日本輸血・細胞治療学会関東甲信越支部例会抄録集.P7,2022
  5. 黒瀬 幸汰,今野 雄斗,古川 泳玉,秋山 小雪,武井 生成,秋山 友子,進藤 聖子,尾島佐恵子,小林 美佳,大槻 郁子,岸野 光司:ABO血液型不適合肝移植後にpassenger lymphocytesyndromeを発症した1例.第58回関東甲信支部・首都圏支部医学検査学会抄録集.P115,2022

5.2023年の目標・事業計画等

血液科の患者を中心に実施されている造血幹細胞移植、遺伝子治療のCAR-Tなどが増加傾向を示しているため、細胞処理無菌操作を部内の無菌室である細胞プロセシングルーム内で実施する体制をとる。

2018年に臨床検査部と共に認定取得した国際規格ISO15189に関わる関連資料などを整備し、安全な輸血業務の向上に努めたい。

2023年内に血液型・不規則抗体検査を中心とした自動測定機器が1台更新整備されるため、運用と精度管理を強化する。

輸血管理料Ⅰに伴う輸血適正使用加算の取得できない状況が何年も継続している。2023年は取得できるように、引き続き各輸血用血液製剤(赤血球製剤、新鮮凍結血漿製剤、アルブミン製剤)の適正使用について輸血療法委員会や入院診療運営部の会議などで推進していきたい。

6.過去実績